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ココロザシナカバ~壮絶な自分史~ 第22話/60話:「夫の隠し子」



【ここまでのあらすじ】※このお話は実話です。
岩手→練馬→川口→浦和→茨城・・・と住まいを転々としてきた阿部家。
父の酒とギャンブル好きが原因で、貧乏で夫婦けんかが絶えない。
家計のために小学生からバイトで稼ぐ長女まゆみ(私)が
高校を中退、家を出て、人生初の同棲相手の男を追い出した。
そしてヤクザに拉致され、駆け落ちした母を見つけ出した。
あれから3年。
自分も駆け落ちで結婚し、川崎で平穏に暮らしていたが父に連れ戻され、
埼玉に引っ越すことに・・・。





耐えられなくなった私たち夫婦は茨城に戻る決断をした。

以前お世話になっていた大家さんの、新たな物件をお借りすることができた。
夫は駆け落ちする前に勤めていた塗装屋に戻った。
私は昼は育児、夜は長男を夫に任せてコンパニオンで稼いだ。

稼いだお金で車を買いたかったのである。
コンパニオンと言ってもどこかに所属したのではなく、あちこちのお店に掛け合って直接契約だ。

友達だけは豊富にいたので、声をかければ20人はすぐに用意できた。
私には友達を派遣した手数料も入るので、収入が夫よりも多い月もあった。

そんなある日、家に1本の電話がかかってきた。


相手は何度か会ったことがある、夫の高校の1つ下の後輩で私からすると
1つ上の女だった。
会話は唐突に始まった。

「あたしヒロ。わかるよね。」

・・・・・・。
顔を思い出していると

「あんた、子ども生んだんだって?知ってた?あたしにも子どもがいるの、マンキさんの。しかもあんたの子よりデカイよ。」

そう言い放った、間髪いれず言い放った。


黙っていると「どうするよ?」と聞かれた。


普通聞くか?どうするよって、


本妻に。


そう聞かれた、気が強くて未練というものにご縁がない私は、

「欲しいならくれてやるけど、どうするよ?」

と聞いてやった。

まさかの返事だったようで、「え?」ってかなり動揺しているようだった。
マンキさんが帰ってきたら話して、ちゃんと面倒見てやるように伝えておくから安心しろ、と言って電話を切った。


一般の奥様方はどのような対応をするのか分からないが、そもそも私は、
困っている人が優先なのである。

ヒロというその女は、私とマンキさんが別れていた時期に遊んでいたらしく、妊娠の事実をうちの夫は知らないのだと言っていた。

うちと同じ男の子をうちより半年以上早く出産したらしいが、名前も聞かなかった。

どのようにしてうちを突き止めたのかはしらないが、困っているのは確かなようだった。
本妻の私とは別れて、自分の子どもの親になって欲しいという要求だった。

それを彼が飲むかどうかは知らないが、もう私は一緒に暮らせない。

私は大丈夫だから、きちんと責任を果たしてやってくれと、
夫に強く提案した。

その後、話し合いでは別れてもらえず、裁判の果てに夫と離婚した。
長男はまだ1歳にもなっていなかった。

息子から父を奪ってしまったようで心苦しかったのだが、私の母のように「お前がいたから離婚できなかった。」などと愚痴る親には決してなるまいと決めていた。
だから自分らしい人生を生きるために離婚を選んだ。


これは信じてもらえないかもしれないが、
夫のおばあちゃんが(夫の母の虐待で自殺した)、
夜な夜な私の目の前に現れて、この家と縁を切れと言ってくる。

とっくに亡くなっているので会ったことはないし、写真すら無いが、
夫に背格好や顔を説明したら「それ、うちのばあちゃんだ」と言ったので
間違いないだろう。


聞いたところによると、
おばあちゃんは長屋に閉じ込められて食事もほとんど与えられず、
農薬を飲んで自殺したと聞いた。
警察には誤飲して死亡ということで片づけたらしいが。。。



別れてから、椎間板ヘルニアと慢性的な気管支炎が、
嘘のようにケロっと良くなった。
おばあちゃん、ありがとう。


夫を恨んだことは、1秒もない。


それよりも数年でも共に生きてくれた感謝と、
長男を授けてくれたことへの感謝しかない。



つづく

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