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門司港史を掘り起こす(FM KITAQインタビュー)2

FM KITAQ
小倉魚町インクスポットビル 3Fスタジオ
2022年5月21日(土曜)17:00~18:00

《出演》
地域コーディネーター:是松和幸
MC:野津亮祐
AC(アシスタント):大岩夏美(北九州市立大学生)
ゲスト:堀雅昭(歴史ノンフィクション作家・UBE出版代表)

《『関門の近代』の裏話》


MC
そしてですね、もう一つ…。
 
最初の方でご紹介させていただきました『関門の近代』の方は、2017(平成29)年2月に出版されて、2ヶ月後の4月に門司港と下関市が「関門〝ノスタルジック〟海峡」として日本遺産に登録された時期になります。
 
時期的にも、すごいジャストな感じがあるんですけど、あれはやっぱり堀さんの『関門の近代』が影響を与えてるように見えるんですが、これって実際のところ、いかがなんですかね。
 
堀 
タイミング的にですね、まあ非常に良かったと思います。
 
まあ、日本遺産になりましたもんで、郷土の学習用に使って戴いたり、いろんなところで話題に出してもらえたということで、本の動きは良かったわけです。
 
大岩さんは北九州市立大学の学生さんなんですけど、大学でも地域学習用として活用されたと思うんです。読まれたこと、ありますか?
 

門司港海峡プラザ前から港を眺める


AC
はい。読ませていただきました(笑)。
 
実際ですね、北九州市立大学の図書館にも入っておりまして、ちょっと読ませて戴いた感想なんですけど、まず、本の方がかなりボリューミーで、内容もかなり詰まっていたなという印象が大きくてですね。
 
やっぱり門司港っていうと、若い人たちの間では観光地というイメージが先行してしまうんですけど、歴史的な背景だったりとか、国際貿易港という背景だったりとか、そういうのをたくさん学ばせて戴きました。
 

ありがとうございます。実はこれには裏話がありまして。えー、何かと言いますとね…。
 
MC
なんかちょっと、裏話というと、なにか怪しい感じがしますね。
 

ええ。あまり深く喋るとあれなんですが、実は北九州の側が盛り上がったというのがあったんですよ。(本を)出した時ですね。
 
で、それはね、山口県の側は、萩往還といって、江戸時代の街道の方を日本遺産に推していたんですね。
 
ところが私、北九州を取材するときに、「本を書きますよ」といって、いろいろ協力してもらっていたんで、なんとなく北九州の人たちは、『関門の近代』が出るんだろうなと、わかっていたんじゃないかと思いますが、取材の時から非常に盛り上がっていたです。
 
もちろん本が出たときは、九州側でボンと花火が上がった感じでした。まあ、今は両方が盛り上がっていて、どうでもいいような話なんですけどね、今となっては。
 
そういうことがありましたと、いうことなんですね。
 
MC
なかなか、ここでしか聞けないような、裏話を戴いたところで、作品の方から話はそれてしまうんですけど、堀さんの生い立ち的なところについてクローズアップして、いろいろとお聞きしていきたいと思います。
 
で、堀さんなんですけど、会社名もUBE出版ということで活動されているということなので、山口県にお住まいということで、お伺いしているんですけど…。
 

あのー、(UBE出版は)今から作るんで、まだ活動しておりませんせんので。
 
MC
ああ、申し訳ないです(笑)。
 
えー、これから作られるUBE出版の…、まあ、山口県にお住まいなのに、どうして時々というか、結構、北九州の題材が多かったりするんですけど、そういった作品を熱心に書かれるのかっていうところが気になるので、ちょっとお聞かせいただきたいと思うのですけど。
 
《九州が好きな理由》

実は山口県の方の大学を出た後ですね、就職は九州にしたんですよ。
 
それでボク、理学部だったんですけど、製薬会社の研究所という非常に堅いというか、朝から晩まで動物実験をするような、そういう仕事をしておったんですよ。なので、九州に住み始めたのが、その就職からなんですけどね。
 
で、九州に住みましたらね、食べ物が美味しいしね。それからイモ焼酎ってのが…、それまであまり吞んだことがなかったんですが、これが初めはニオイが強いんですけど、うまいんですな。
 
そういうんでね、だんだん九州にはまってきて、それでちょうどボクが就職した時期というのが、吉野ケ里遺跡が発掘されたりして、九州が古代史ブームみたいになっちゃってね。
 
で、九州というのは歴史も古いし、面白いなあっていうことで、興味がドンドン膨らんじゃったんです。筑後川なんかを見に行ってもね、山口県の川って両側がね、護岸がコンクリートで固められている感じのが多いのですけど、筑後川なんて古代が残っているような、春になったら菜の花が一面に咲いたりしてきれいだなあってね。
 
それからボクは理系なんだけど、昔から本読むのが好きで、五木寛之さんの『青春の門』なんてのも大変ファンで読んでいたんだけども、あれ舞台がね、筑豊なんですよね。なので田川なんかも行ったりしてね。
 
もう30年以上も前なんだけど、あの時期ってまだ筑豊って炭鉱の感じがね、すごく残っていて、イイナーとか思って。
 
それでもともと本読んだり書くのが好きだったんで、意を決して、なんか歴史的なことやりたいなあと思って、理系なんだけど社会科の(教師の)免許をとり直して、一時期ね、中学校の教員なんかもやっていたんですよ。それで、まあ、そういう道に進んでしまったみたいなね。そういうことだったんです。
 
MC
就職で九州に来たら、思いがけず九州の魅力に魅せられて、見えない魅力に突き動かされながら、手探りのような状態で作家活動を始められたということですよね。
 

そうなんですよ。
九州ってのはね、何かそういう人の心をね、煮えたぎらせるようなものが、なんかあるんですよ。こりゃあ、もう、本当にそう思う。
 
何かやりたいとか、やってみようとか、チャレンジしようとかね、そういうものがこの土地の中にあって、それにドンドン、ドンドン突き動かされていったような感じがしますね。
 
ただボクは今言ったような理系の出身なんで、結局ね、歴史が好きなんだけど、書く手法は理系なんです。
 
ボクは大学の先生が千葉先生というんだけど、世界的にも有名だったサーカディアンリズム(生き物の体内時計)の権威の千葉善彦先生という方に習ったんですけど、とにかく実験を大事にしろと、データーでモノを言えと。自分の予想とか感想だけでやっちゃあイカンと、そういうのを教えてもらったんですね。
 
結局ね、ノンフィクションの歴史ものを書くときも、手法は同じなんですよ。取材も徹底的にやってですね、同じ資料でもいろんな角度から見て分析したり、比較したりと。
 
要するに実験の手法と同じようなことをボクはやっていたんだなと、最近なって思うんですけど。
 
ですから読まれた方は非常に歯ごたえがあるというか、ゴツイなというか、文学作品を読むような感じじゃ、ちょっと読めないだろうなと感じているんです。メイッパイ詰め込んでいるというか…。
 
AC
うーん、そうですね。
 
確かに『関門の近代』を読ませていただいたんですけど、そんな感じといいますか…、まるで論文を読んでいるかのような、本当に細かく書かれていて、何でしょう、やっぱり掲示板とか、街に出たらいろいろ紹介とか書かれているじゃないですか、建物とかに。そういうのだけじゃ決して読み取れない内容だとか分析とかが書かれていましたね。
 

ありがとうございます。で、九州との関係の続きになるんですけど、就職を九州でしたっていうだけじゃなくって、実は私のお祖父さんっていうのが、大分県の宮砥村っていうところの出身なんですよ。
 
今の竹田市の一部になるんですけど、そういうこともあって父方の方の墓になるんですが、大分県の宮砥村に江戸時代のやつが残っていたりするんでね。
 
それから竹田市の資料館に江戸時代のうちの関係の資料(古文書類)もあったりするんで、調べに行ったりもしていたんですよ。
 
で、山口県で教員をやっとったといいましたけど、そのころには福岡の出版社でも作品を書き始めていたんで、大分に行くこともあるし、福岡にもしょっちゅう行っていたということで、ずっと九州と縁が続いていたことは間違いないですね。
 
で、話しのついででアレなんですけど、実はボクは予備校も、北九州予備校なんですよ(笑)。
 
MC
北九州予備校ってことは、小倉も生活圏だったという風にお察しするんですけど、私も2年前に就職の最初の配属で、北九州の方に来たんですけど、行くときに周りの友達から「修羅の国やん」といわれて、結構、脅されながら来たんです(笑)。
 
ボクちょっと知識がなくって、どんなとこなんやろうとビビりながら来たんですけど、なんか修羅エピソードなんて全然なくて、むしろ雰囲気の良い街だし、自然も近くにあるし、すごい良い街だなとか、穏やかな街だなとか感じるんですけど、当時、堀さんが生活されていた時の小倉って、どういった感じだったんですかね。
 

私の場合はね、もう、40年以上も前の話になるんだけど、まあ通うんですけどね、朝早く予備校生が一斉に魚町を歩いていくという、まあ、これは良いんですよ。
 
帰りがね、夜遅くの講義とかあるんですよね。そうすると帰りは真っ暗になるし、赤ちょうちんも下がっているんですけど、ちょっとね、身構えて歩かなればいけないような、ちょっとスリリングな感じがあったんですよ。
 
でね、スリルのある街だなという。まあ、今思うと非常に懐かしいんですけど、ボクはヨカッタと思うんです。そういう経験もしたし、ね。
 
でね、予備校も面白いんですよ。先生もユニークな方がたくさんいらっしゃって。ひとりね、数学の先生でM先生というのが競艇が好きな人でね。勝っとるときは良いんですよ、機嫌よくって。ところが負けが込んでいるときって、小倉競馬とか競輪とかね、もう授業が怒声から始まるというね、そういう授業だったんでね。
 
面白いんですよ、もう人間性むき出しの今では考えられないようなエネルギッシュなのね。僕らの時代って、授業受けるのも人間の肉と肉がぶつかり合うような、そういう時代でしたんでね。今はパソコンで画面を見ながらみたいな感じですけど、そんなんじゃないですよね。〈生きてるな〉とそういう実感のする時代でしたね。
 
MC
そうなんですね。今では想像もできないようなお話ではあるんですが、スリルがあったりとか、予備校の先生のエピソードであったりとか、むしろそのエネルギッシュなところが魅力というか、人間味を感じるというか、堀さんが九州で魅せられたことは、すごいわかるところがあるなと、お話を伺って感じました。
 
それでは、ここでちょっと一曲挟もうと思います。今回、堀さんに選んでいただいた曲が井上陽水の「決められたリズム」なんですけど、これを選ばれた理由とかあったりしますか。
 

井上陽水さんはね、福岡県の田川の出身なんですよ。
 
ボク、なんか若いころから好きでね、井上陽水がね。そのなかでも特に好きな曲をかけて欲しいなということで、持ってきました。
 
MC
ありがとうございます。それでは思い出の込められた曲をお聞きください。井上陽水の「決められたリズム」。(つづく)
 
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