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クマムシ・レボリューション

☆━━━━━━━━━━━━━━雪

 パリでは3日くらい前から、雪が降っています。

 去年は全然雪が積もらなかったので、パリの街が雪で覆われるのを見るのは、今回が初めてです。普段、パリの街はゴミが散らかっていたりするので、雪が降っていると街並がとてもきれいに見えます。

 ついこの前の成人式の日、東京でも大雪が降りましたが、僕が成人式をむかえた15年前も記録的な大雪でした。

 当時、浪人していたためにセンター試験を受けることになっていて、その前日が成人式だったのです。成人式には出席しなかったものの、飼い犬の散歩がてら、式場の近くまで様子を見に行きました。なんともほろ苦い思い出です。

 受験生にとって、センター試験といえば人生で勝つか負けるかの賭場のうような存在なわけですが、大学入学後の人生の方がはるかに長いので、あの時は変に力が入りすぎていたな、なんて思います。まぁ、皆そうだと思いますが。

 こうやって雪の降るフランスからメールマガジンを発行している姿なんて、成人式を迎えたばかりの自分には知る由もなかったことですし。そう考えると、目先のことに神経質になりすぎたり、遠い将来を不安に思うのは本当に損ですね。楽しければ、それでいいじゃないか、と。

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★クマムシ研究日誌

 私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。

【第41回】クマムシ・レボリューション

 市販されているクロレラ「生クロレラV12」をツメボソヤマクマムシに与えて数日。培地を観察すると、これまでに見たこともないくらいに、卵がたくさん産みつけられているではないか。このときは、卵のひとつひとつが、宝石に見えた。

 ついに、やった・・・。

 卵から孵化したツメボソヤマクマムシが、さらにクロレラを食べて成長し、また卵を産んだ。その卵から孵ったクマムシも、同じようにすくすく成長し、子どもを残した。

 こうして、安定して何世代もクマムシが生まれ、数もどんどん増えていった。

 ついに起こしたのだ。クマムシ革命を。

 オニクマムシを扱っていたときは、ワムシをいちいち回収して与えたり、培地を毎日交換していた。しかし、ツメボソヤマクマムシの飼育には、このようなことをする必要はない。餌はクロレラ液を与えれば良いだけだし、培地も3~4日に一度交換すれば十分だ。

 クマムシは増え続けた。クマムシが増えるのに比例して、僕のテンションも上がっていった。バブル経済で地価が上昇続けているときの、不動産業者のように。本当にうれしくて、実験室で踊り出してしまいたいほどだった。ジュリアナ東京のお立ち台に上がった、ボディコン女子のように。

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