「サイヤ人死にかけ&復活実験」で人為的に作出されたスー パー放射線耐性生物

☆───────────100号目

 むしマガも今号で100号になりました。といっても、まだまだ通過点ですので、今後とも途切れることなく継続してメルマガを発行していきたいと思っています。

 最近はやや難しめの用語や説明も入っていますが、それらはなるべく注釈の方に回すようにしていきます。注釈の部分はプロの方用ですので、ここを読まなくても話は通じるようになっています。

 今回はちょっと字数が多めですが、どうかお付き合いくださいませ。

★むしコラム「【サイヤ人死にかけ&復活実験】で人為的に作出されたスーパー放射線耐性生物」

 先週のむしマガvol. 97でヒルガタワムシを紹介しましたが、地球上には他にも放射線に強い生物が存在します。その多くは細菌に見られます。とくに、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)という細菌は、これらの生物の中でもとくに高い放射線耐性をもち、また、その耐性のカラクリも比較的よく研究されています。

 面白いことに、無数に種類が知られている細菌の中にも、放射線に強いものもあれば、極端に弱いものまでさまざまです。しかも、放射線に強いものどうし、あるいは、放射線に弱いものどうしが系統上にかたまっているわけではないのです。言い換えれば、親戚の中に強いものも弱いものも混じっていてます。

 ヒルガタワムシの回では、乾燥耐性の獲得が放射線耐性の獲得に結びついたのではないか、という仮説を紹介しました。デイノコッカス・ラジオデュランスも高い乾燥耐性をもつことが知られています。ただ、すべての放射線耐性細菌が、乾燥に強いというわけでもありません。つまり、放射線耐性能力は、必ずしも乾燥耐性能力と関係ないカラクリに由来している場合があると考えられます。

 いずれにしても、これらの放射線耐性生物を調べることで、その能力を発揮するためのカラクリを知ることができると期待されます。実際に、デイノコッカス・ラジオデュランス、ヒルガタワムシ、そしてクマムシなどがこの分野で注目され、目下研究が進んでいます。

 一方で、まったく反対のやり方で放射線耐性のカラクリを探る研究も行われています。

 大腸菌は生物学で代表的なモデル生物です。増やすのは簡単だし、ゲノムにしろ代謝にしろ何にしろ、これほど人類の手で丸裸にされている生物はいません。ある生命現象のカラクリを探ろうとするとき、大腸菌は非常に都合の良い材料です。

 実はこの大腸菌、放射線にはかなり弱いことが知られています。放射線耐性のカラクリを探ろうとする時、大腸菌を材料にするのは一見、不都合のように思えます。しかし、これを逆手にとって利用してやると、大腸菌を放射線耐性メカニズムを知る上でとても有用な材料にすることができます。

 どういうことか。それは、人為的に大腸菌に放射線耐性を獲得させ、その過程で大腸菌の中にどんな変化が起きるかを観察すればよい、ということです。 ではまず、どのようにして放射線に弱い大腸菌に、放射線耐性をもたせればよいのでしょうか?これは「サイヤ人死にかけ&復活実験」という実験を行うことで実現できます。

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