前野ウルド浩太郎インタビュー第2回「バッタ博士流研究哲学」

☆───────────ひきつづき

 本日は昨日にひきつづきバッタ博士・前野氏のインタビューをお送りします。

 昨日の第1回インタビュー、さっそく反響がありました。前野氏の語尾に「ッス」がつきすぎだ、とのご意見もいただきました。たしかに、ちょっと読みづらいかもしれません。

 ただ、録音したインタビューの内容を忠実に書き起こした結果、そうなってしまったのです。なるべく本人の話し方を忠実にお伝えしております。ちょっと残念なのは、秋田弁なまりのアクセントが文字だと反映できないことですね。

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前野ウルド浩太郎インタビュー(第2回)

前野ウルド浩太郎 (学術振興会海外特別研究員:モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所)

☆プロフィール(2013年時点)☆

 2008年神戸大学大学院自然科学研究科にて博士号(農学)を取得。現在、学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。サバクトビバッタの生態を明らかにすべく、サハラ砂漠にて絶賛フィールドワーク中。

2011年 日本応用昆虫学会奨励賞受賞 / 井上科学振興財団奨励賞受賞
2012年 山下太郎学術研究奨励賞受賞

著書「孤独なバッタが群れるとき」東海大学出版会
http://goo.gl/q9fAs

ブログ: http://d.hatena.ne.jp/otokomaeno/
Twitter: http://twitter.com/otokomaeno175

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第2回【バッタ博士流研究哲学】

前→前野

堀→堀川

堀: 学生時代は、一日はどんな流れで過ごしていたんですか。

前: 朝は基本、9時までに出勤し、午前中は餌替え。最初の頃は、朝9時から夕方4時まで、昼休みを挟んで餌替えで、それが終わってから実験。バッタにホルモンの注射したりとか、いろいろ。で、帰りは午前1時、2時とか。たまに研究所に泊まったり。

堀: ハードワーカーですね。

前: もともとその、1年目は、誠二さんから「前野くん、好きな研究テーマ自分で考えてやっていいよ」って言われてたんスけど、自分、さっぱり思いつかなくて。で、開き直って、誠二さんに「自分、研究者になるための勉強がしたいので、何かいいテーマをお願いします」って言ったら、バッタの体を黒くするコラゾニンっていうホルモンがあって、それが体の色だけじゃなくて、体の形も制御しているかどうかがまだ分かっていなかったので、それをやったらどうかと言われて。で、ぜひやらせてください、と。

堀: ふむふむ。

前: ただ、この1年目の誠二さんがくれたテーマは自分の修士論文には使わずに、2年目から自分で考えたテーマをやらなくてはならない、という決まりを作ったので、1年目は修行。この修行の間に色々勉強して、自分でテーマを作ろうと。

堀: で、2年目の修士論文にしたテーマは何だったんですか?

前: サバクトビバッタの母親が、密度に応じて異なるサイズの子どもを生み出すことが、実験中に分かって。「その子どもたちが、その後どういう発育をしていくのかを見てみたい」と誠二さんに言ったら、「それは面白そうだからやってみたらいいよ」と言われたので、それを始めて。

堀: うん。

前: 誠二さんはその時、バッタとコオロギとゴキブリの3つを同時に実験してたんスよ。複数のプロジェクトを何個も同時にやっていると、論文をいっぱい出せるっていうのを見ていたので、自分もサバクトビバッタで色んな実験を同時にやって、新しい発見をして論文を出すトレーニングをしようっていう。なので、サイドプロジェクトを何個もやって、当たりそうなものがあったらいいなと期待しながらやっていったッス。

堀: で、そのバッタの発育を見ていくというのは、基本的に飼育実験なんですよね。

前: うん。

堀: バッタの飼育をする上で、一番大変なのはどこですか?

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