クマムシの爪の垢を煎じて
★クマムシ研究日誌
私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。
【第44回】クマムシの爪の垢を煎じて
飼育しているツメボソヤマクマムシが高い乾眠能力をもつことを証明できた。
次は、かれらが各種の極限的環境ストレスに耐えられるかを確認することにした。そこで、乾眠状態と活動状態に90度の高温、マイナス196度の低温、有機溶媒のアセトニトリル、4000グレイの放射線(ヘリウムイオン)をそれぞれ曝露し、生存できるかどうか検証した。当然のことながら、いずれも我々であれば即死するような超凶悪的ストレス条件だ。
このような非人道的ストレスを曝露した後、乾眠クマムシに水をかけてやった。しばらくすると、かれらは何事もなかったかのように動き始めた。予想通りとはいえ、驚異的なストレス耐性能力である。
実際にはぬるま湯のような安泰な環境にもかかわらず、現代の日本を「ストレス社会」だと形容するような人間は、クマムシの爪の垢でも煎じて飲むべきだ。とまでは思わなかったが、「鈍感になることでストレスに耐える」というクマムシの戦略は、我々も見習ってよい。
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