少子化と進学率についての私見


女の子が教育を受ける年が1年増えれば、出生率が10%減るという報告があります。

byユニセフ
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/fo/fo_54.pdf

 この文章を読み、短絡的に「では女子の教育を制限すれば出生率は増えるのではないか」と考える人は多いと思います。そしておそらくはそれは正解で、しかし全く許されないことであります。

 まず私の考えを申し上げると、教育は男女の別け隔てなく受ける権利を有しており、またその権利は制限されることはあってはなりません。勉強をしたいと考える人が教育を受ける権利を保証することは極めて大切です。

 その意味で、2020年/2024年の奨学金制度の改定は多いに意義があることで、経済的に恵まれない人でも勉強できる機会が広がる大変素晴らしいものだと考えています。この政府の動きには大いに称賛を送るものです。

(余談ですが、私自身大学志望でしたが、経済的事情で高専への4年次編入を選択しました。今はその選択は私にとって最高で最適なものであったと考えていますが、一方でもし大学に行ったらどんな人生を歩んでいたのだろうと思うときもあります)

 一方で、男女ともに大学進学率は上がる一方であり、先述の報告と合わせて考えると今後も少子化は進行していくであろうことが予測されます。

https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Data/Popular2024/T11-03.htm をもとに作成

 ところで、このグラフを見たときに私の中である疑問が浮かびました。
「果たして、本当に60%近くの人が勉強をしたいのだろうか」



 例えば、以下の関西大学のアンケートの結果を参照すると、大学進学理由は「大卒の学歴が必要だと思ったから」が68.6%に対して、学問を身に着けたい等の理由は20-25%前後になっています。

https://www.kansai-u.ac.jp/gakusei/lifestyle/h22/pdf/002.pdf

 つまり、(少なくとも関西大学の調査対象者においては)単に勉強をしたい人よりも、学歴を身に着けることそのものが目的だという人のほうが多数派であると考えられます。

 この「勉強をしたいわけではなく、単に学歴を身に着けたい」という人たちについて、学歴を身に着けたい理由を解消してあげることができれば、勉強したい人は大学に進学でき、特に勉強をしたいわけではない人達はわざわざ大学に行かなくても済むのではないかと考えました。

 ではなんのために学歴を身に着けたいのかを考えます。社会的信頼のためや自身のステータスのためという人もいるでしょうが、私の偏見では
・高卒ではいい仕事につけないだろう
・高卒では昇進できないだろう
という思いから「高卒は負け組だ」と考え、大卒になろうとする人が多いのではないかと思っています。

 そのため本当に必要なのは、能力さえあれば高卒でもいい仕事につくことができる、高卒でも昇進することができる社会なのではないでしょうか。もしそのような社会が到来すれば、大学に行きたい人が存分に大学で学ぶことができる一方、現状よりも大学進学率が下がった状態になるのではないかと考えました。


 では具体的にどうすればよいでしょうか。正直この点について具体的によく整理できている案は持てていません。そのため、是非皆さまのご意見を頂戴したいところとなります。その前提のもと、アイディアレベルではありますが以下に備忘を記します。 

 まず就職について考えます。就職については、一般に大卒と高卒はそもそも就活の方法からして大きく違います。大卒の就職についてはよくご存知の方も多いと思うので詳細は省きますが、自己開拓による就職が多いです。一方高卒では学校斡旋が一般的です。各企業がオープンにしている求人(即ち自己開拓者向けの求人)は大卒以上を条件としていることも多く、いわゆる一流企業に高卒者が入ろうとするとハードルが高くなります。高卒だといい就職ができないイメージの多くはここから来ているのではないでしょうか。    しかし、学校斡旋を利用すると話は全く変わります。以下に私の母校である静岡県立科学技術高等学校と、清水にある静岡市立清水桜が丘高校の就職実績を乗せますが、世間一般で「いい就職先」と呼ばれるようなところが並んでいます。

 上記は一例ではありますが、実は実業高校は思ったよりも「いい就職先」にも入りやすいことがわかると思います。こういった実業高校の就職の良さを広報し、また実業高校自体の定員も増やす必要があるのではないかと考えています。

 次に昇進について考えます。昇進は日本企業においてはしばしば「学歴別年功的昇進管理原則」に則って行われています(白井,1992)。これを法律において禁じるというのは一つの手段だと思います。即ち、昇進基準に学歴を用いることを禁じて、その他の基準によって評価を行えと企業に対して義務付けるのです。「学歴別年功的昇進管理原則」は大卒の希少価値が十分に高い時代においては一定の合理性もあるように思えますが、現代ではその合理性に疑問を覚えます。歴史的経緯からそのような基準を採用し続けている企業も多いのではないでしょうか。もちろん昇進基準や評価手法等については社外秘の企業も多く、法律で規制を行っても実行力が十分に担保できるとは言い難い点はあります。しかし昨今のコンプライアンスの高まりを踏まえれば、それでも一定の効果が見込めるのではないかと考えます。


 どうか、その他アイディアがあればぜひ皆さん教えて頂けますと幸いです、


補記
 一方で資源がない国日本は、科学力・研究力・技術力で世界に対して競争力を維持していかなくてはいけません。そのため、修士や博士の数は増やして行きたいと考えています。
 大学4年生の6割以上が院進を希望しているというデータもあります。

しかし上記記事によると経済的理由や、そもそも院卒者の社会的地位の低さ(就職難易度含む)が問題で進学しないという人が多いといいます。これらについては別途手当を行い、ぜひより深く学びたいと考えている人が学べるような環境を作っていきたいと考えています。


補記2
 奨学金の拡充などについては賛成ですが、大学の無償化には反対です。しっかりと勉強をして成績を維持している人に対してお金が出るのは大いに賛成なのですが、無償化は必ずしもそうでない人たちまで進学する動機になりうると考えているからです。そうなると結局のところ、前述の通り少子化の進行に寄与することになってしまうことを危惧しています。




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