【通学】久々の 満員電車が 夢心地
「へぇ~、あなたって会社員だったの。てっきり自営業かと思ってた。」「へぇ~、何か自分の腕で商売をするほどパワフルに見えるかなあ?」「見えるわよ、とにかくマメだもん。今からでも何か創業しなさいよ。」「こんなに呑気で意欲の無い経営者じゃ、すぐに倒産しちゃうよ。こういう人間は、他人から命令されて仕事して25日に月給もらう生活のほうが似合ってるんだ。ほら、春奈と初めて出会った日、あの店に一緒に来ていたのが会社の先輩だよ。」「そういうのをきちんと覚えているところがマメなのよ。えっ?私だって覚えてるよ、あの日のことは。ねっ、私もマメでしょ。さあ、私の“おマメさん”はどこにあるのかな?探し当ててみなさい。」と言っては、私の手を強引に自らの陰部へと引っ張り寄せる彼女。その容姿は絵に描いたような良家の才女なのに、その言動はまるで脂ぎったドスケベ中年男が憑依しているかのようである。
「ねえねえ、会社員って、毎日どんなことするの?」「お茶汲みとコピーかな。」「それって、昭和のOLじゃん!」「似たようなもんだよ。まあ、お茶のかわりにお酒を酌んで、上司の心中も酌んでる感じかな。」「へぇ~、上司がいるの?あなたにあれこれ命令するの?私より偉い?」「常に女王陛下のご命令が絶対で御座います。」「アラぁ~、いい子でちゅねぇ~。ところで手が止まってない?私のおマメをしっかりとクリクリし続けなさい。」・・・彼女は「どこにあるどんな会社なのか?」とは決して訊ねない。私も彼女の職業を知らない。互いのプライベートには立ち入らないのが二人の暗黙のルールなのだ。
「お日様を浴びなくっても、意外と時間の感覚が鈍らないわね。もう少し昼と夜が逆転するのかと思ってた。」・・・二人は夏の直射日光を避けるべく、お盆休みを難波のラブホテルで過ごしていた。「ユニバ?暑いなあ。プール?遠いなあ。」といった具合で、デートらしいデートもせず、即物的な快楽のみを追求するのが二人の暗黙のルールなのだ。外の光が完全に遮断され、壁掛け時計のひとつも無い密室に、たんまり買い込んだデパ地下の総菜や缶チューハイを広げ、まずは宴会をスタートする。これがあんまりにもラブホテルっぽいピンク色の部屋だったりしたら落ち着かないのかもしれないけれど、ダークチョコレートを溶かしたような焦げ茶色の壁紙を、練乳を注いだような象牙色の間接照明が優しく照らしているものだから、長時間ここに居ても苦痛を感じない。ベットルームとは別で、玄関前に和室があるのも有難い設えだ。このような空間のおかげなのか、「そろそろ7時頃かも」と二人の口が揃ったところでテレビを点けてみたら、ちょうど7時のニュースが始まっていたというわけだ。
「そういえば、お部屋のカーテンを暖色系にするだけで、時間が短く感じられて、何となく食欲が湧くんだって。だから、中華料理屋さんのカウンターとか椅子が赤いのは、もちろんイメージカラーなんだろうけど、お客さんの回転数と注文数を上げる効果もあるらしいのよ。もしこの部屋がピンク色だったら、テレビを点けてもまだ6時半くらいだったかもね。」・・・彼女の膝枕に甘えたまま、私の目にするニュース映像は全てが横たわっていた。その中に季節外れの成人式の様子が流れる。地方の小さな町村では、就職や進学で都会へ出た若者が帰省する今の時期に、二十歳の祝典を開催するところが少なくないらしい。豪雪地帯では1月より運営しやすいといった利点もあるという。「東京の大学に通っているんですが、地元に貢献したいと思う一方で、実際にこちらでは勤め先も限られているんで、来年の就職活動の方向性を決めるのに今はすごく悩んでいます。」と健気な眼差しでインタビューに答えるのは、麻生地だろうか極力涼しい素材の振袖を選んだ女の子だ。春奈も外見だけで判断すれば、これに匹敵するほど上品な女性なのだが、「カワイイ子でちゅねぇ~。ムラムラちまちたか?」と赤ちゃん言葉を発しながら、今度は膝の上にある私の頭を掴み、股間に押し付けようとする。
振袖の女学生の背後では、紫色に染まった髪の毛をツンツン立たせ、今どきベテラン歌手でも躊躇するであろう派手な龍虎柄の羽織袴を身に纏った男の子が、カメラに向かって頻りにピースサインをしている。これは平成以降の現象なのか、二十歳くらいの日本人というのは、概ね女が賢く堅実で勤勉、概ね男が愚かで放埒で怠惰と決まっている。これは男女の人生における余裕の違いではなかろうか。男は成人すると誰かの扶養家族に入るといった生き方が世間から許されなくなるため、この半ば絶望的な原理原則を前に余裕が無くなる。他方、もともと人生の選択肢が多い女には、賢く堅実で勤勉になれるだけの心の余裕がある。私の躰を玩びつつ、そう分析したのは春奈だった。なるほど、事実、私より20も年下の彼女は頗る賢い。「とどのつまり、オンナはね、勉強でも、仕事でも、活躍すれば『凄いですね』って云われて、活躍しなくても『頑張ってますね』って云われるの。それほど生活に困ってなければ、最悪の場合、バイト程度の稼ぎ方で実家にずっと居ればいいんだし、結婚できなくても、オンナ同士で旅行やショッピングを楽しんでいればいいの。それに比べて、オトコは高学歴・高収入を得て初めて『一人前』って云われるわけでしょ。結婚できなくても、オンナ同士みたいな遊び方は出来ないわ。オトコ同士で旅行やショッピングを楽しもうとしたら気持ち悪がられるだけだし、バイト程度の稼ぎ方で実家にずっと居たら、周囲から家畜以下の扱いを受けるだけ。不自由なのよ、男の人生って。」・・・春奈の論評がいちいち的を射ている気がして、私は彼女の股間から漂う典雅な香りを味わうべく深呼吸しようとしていたことも忘れ、むしろ息を吞んでしまっていた。
「で、あなたはどんな二十歳だったの?」「愚かで放埒で怠惰な学生でした。」「でも、ちゃんと会社員になれたじゃない。」「はっ、はい!」彼女はそっと膝枕を解き、私を床に正座させ、自らはベッドの端に腰掛け、その透き通るように白く細い美脚で、無抵抗となった私の股間を静かに撫でまわす。「でも、会社まで歩いて通ってるんでしょう?怪しいわねぇ。ホントは自営業なんじゃない?」「いっ、いえ、サラリーマンです。」「へぇ~、会社と私のどっちに忠誠を誓うの?」「むっ、無論、女王陛下です!」「アラぁ~、いい子でちゅねぇ~。じゃあ、今夜は特別なご褒美よ。日頃は徒歩通勤のあなたに、満員電車ゲームを用意してあげるわ。」そう告げると、彼女は浴室まで私の手を引き、部屋備え付けの浴衣の帯を器用にシャワーカーテンのパイプに掛け、吊り革のようなものを拵える。浴槽が車内というわけだ。「いい?この吊り革を両手で握ったまま、何があっても離しちゃダメ。ルールはそれだけ。あなたは勤続20年、真面目一筋だけが取り柄の中年会社員。私は最近学校をサボりがちの退屈な女子高生。暇つぶしにオジサンを虐めちゃお!」「えっ?この電車って、春奈が痴漢、いや、痴女役なの?」「別にあなたが女子高生を痴漢するオジサンの役でもいいのよ。」「いえ、台本通りに進めて下さい。」「というわけで、ジャーン!コレ、私が高校生だった時に着ていた本物の制服。」「ハッ、ハフハフ、興奮最高潮であります。」「ほらあ、吊り革から手を離しちゃダメでしょ。まずは私の生着替えを見物しながらハアハアしなさい。」・・・紺のブレザーに、紺のストライプリボン、紺のチェックスカート、25歳の彼女がたったこれだけで18歳に戻るのだから、制服というのは魔法だ。「Yシャツだけは、あなたのを借りるわね。」「ぜっ、ぜひ、明日着て帰るための新品が鞄の中に入っているので、そちらをお使い下さいませ。」「アラ、あなたの汗が染み付いたシャツを着てみたかったのにぃ。まあ、オジサンが自分の匂いを嗅いでも仕方ないものね。当たり前だけど、シャツの下はノーブラよ。後でどっぷりと顔を埋めなさい。」・・・風呂場まではさすがにエアコンの涼風が届かない。新品のシャツに袖を通しても、結局、二人とも汗ダラダラの状態でプレイの幕が開ける。
「本日もエロ鉄道のご利用、誠にありがとうございます。皆様の安全のため、車掌より大切なお願いです。駆け込み乗車および片乳乗車は非常に危険ですので、お舐め、いや、おやめください。」・・・マイク代りにシャワーヘッドを片手に持ち、車掌さんのアナウンスが終わると、忙しい一人二役、いよいよ春奈はイタズラ好きの女子高生に扮し、背後から絶え間なく私を攻撃する。「ほらあ、オジサン。車掌さんに注意されたばかりでしょ。片乳がハミ出てるわよ。危ないから、私がお口で隠してあげる。」そこから先は、私の左乳首が溶け落ちてしまうのではないかと思われる程、彼女の執拗な舌遣いに耽溺するばかりだった。それはまるで画壇の大家が繊細な筆で私の左胸に咲き誇る命の華を刻み入れているかのようであった。
二人でバスルームを出ると、春奈はメンソールの煙草に火を点けながら、唐突に、他の男と飲みに行ったという話を始めた。「こないだ、私、人生で初めて合コンに行ったの。いや、そりゃね、若い頃に、ただ居酒屋とかカラオケとかに男女が集まってドンチャン騒ぎするような飲み会には何度か行ったことあるわよ。そういうのじゃなくって、何て言ったらいいのかなあ、ある程度手筈の整った『合コン』っぽい『合コン』。レストランとまでは謂わないけどダイニングバーみたいな店に、お花を飾ったテーブル席が予約されてて、男性はみんなスーツで、私、ポケットチーフなんか挿してる人、結婚式以外で初めて見たわ。自己紹介も真剣なの。『○○商事の水産部門で現在、海苔や牡蠣の養殖事業の支援に携わっています。』だの『○○銀行の不動産部門で現在、遊休地を地域貢献に活用する融資に携わっています。』だの、その度に女性陣が『スゴォーイ!』とか過剰反応しながら胡散臭い拍手を送るわけ。
えっ?私?正直、気が進まなかった。百戦錬磨の合コンクイーンを自称するA子って友達が面白くって仲良しだから、人数合わせで誘われたようなもんだったけど、しょうがなく付き合ってやったのよ。けど、行ったら驚いたわ。普段は小汚いホルモン焼きの店でオトコの話題と下ネタしか口にしないA子が、一張羅のパーティードレスで『出身は神戸です』とか言って目をキラキラさせてるの。あの悪姫の熱視線は、本当に目の前で男性陣がホルモン焼きにされちゃうくらいの火力だった。『オマエは新開地で飲み歩いてるクソ酔っ払い女だろ!』ってツッコミたくなったわ。まあ、確かに『玉の輿に乗るビックチャンス!』とか豪語してたから、単純な飲み会ではなさそうだなって想像してたけど、私だけパジャマに毛が生えたような恰好で、赤っ恥かいちゃった。えっ?うっ、うん、料理は美味しかった。あなたにも食べて欲しかったな。
A子たちはウットリしながら二次会に出てったけど、私は丁重にお断りして帰ったわ。一流の企業戦士として日々汗を流している彼らにはホントにホントに失礼な感想で申し訳ないんだけど、私には『サラリーマンって魅力に欠けた人たちだなあ』っていう印象だけが残っちゃった。だから、あなたもサラリーマンだって、さっき聞いた時は耳を疑ったのよ。私は、同じ汗でも、いま目の前に居るこの馬鹿な男が、潤んだ両目を私から一度も逸らさずに、握った両手を吊り革から一度も離さずに、ヒイヒイ腰を捻りながら流す汗のほうがずっと好き。あなたの汗の成分は、私への愛情が100%なんだもん。あなたの放つ熱には、身も心も焼け焦げちゃうわ。こんなに深く人から愛された経験が私の人生には無いから、いったん高校時代の純粋な気持ちに戻ってみようかなって、タンスの奥から制服を取り出したのよ。左の乳首ばっかり、しつこくコリコリ責め続けたのも、どうしてだか分かる?あなたの裸に、誰よりもカッコ良いポケットチーフを、この女王様の舌で丁寧に丁寧に描いて差し上げたかったのよ。私は女王様でありながら、あなたという唯一無二の素敵な奴隷にいつも夢中なの。私は女王様でありながら、あなたの寛大な愛情にいつも屈伏しているの。」・・・春奈はまだ何かを喋りたそうにしていたが、途中から汗どころか涙さえも止まらなくなった私は、そのまま犬のようにご主人様へ飛び付き、大切なその唇を塞いだ。
「明日、チェックアウトしたら、ホルモン焼きに行こう。紙エプロンの胸にマジックでポケットチーフ描いて、上タンもコリコリも全部ご馳走するワン!」・・・つづく