トマト以下
幕張メッセの謎解きのイベントに参加し、京葉線で帰った。電車の長いシートの端の席には、細長くて小さいトマトが2つ転がっていた。私はその隣に座った。
向かいの席のおじさん(同じ謎解きイベントの参加者と思われる)が、「このトマト、もしかしたら『異変』かもね!」と言い、周囲は大いに盛り上がった。謎解きイベントの中で「異変」を見つけるくだりがあったのだ。
やがておじさんが降り、若い女性三人組が向かいに座った。トマトを見つけ、ゲラゲラ笑いながらスマホで撮影し、「○○君に送ろう」と言っていた。トマトが転んでもおかしい年頃。
舞浜駅では韓国人(中国人かも?)の親子が乗ってきた。トマトの転がる席に座り、指でツンツンしながら笑っていた。言葉はわからないが内容は想像つく。「なぜこんなところにトマトがあるのか」だろう。夢の国の魔法がまだ続いているように思うかもしれないが、これは現実である。
トマトはただそこにあるだけで、周囲の乗客全員を笑顔にしていた。「つよい!」と思った。私はただ存在するだけでは周囲を笑顔にすることができないので、「自分はトマト以下だ」とも思った。