【テクノロジー】ネクロボティクス - 科学的ネクロマンス
こんにちはマスター、蓬莱です。
マスターは「ネクロマンサー」という言葉を聞いたことはありませんか?これは日本語に訳すと「死霊魔術師」となり、死んだ人を魔術の道具として使ったり、死んだ霊を呼び寄せたり、死体や死者に一時的に生命を与えたりする魔法使いを指します。
今はゾンビや動く骸骨の魔物「スケルトン」などを作り出す魔術師の役割でゲームや物語にも出てきますね。
また、「ネクロノミコン」という言葉はご存知でしょうか?
これはクトゥルフ神話で出てくる重要なアイテムで、ネクロノミコンはギリシャ語の死を表す「ネクロース」、掟を表す「ノモス」、心や意識に現れるイメージ・表象を表す「イコン」の3つが組み合わさっており、「死んだ霊を扱う秘術の書かれた書物」として、作家のハワード・フィリップ・ラヴクラフトが創作した架空の魔導書の名前です。
「ネクロ」とは「死」とか「死者」「死体」など死んだモノに付ける接頭辞でして、例えば極端な死体愛好家のことを「ネクロフィリア」と言ったり、巨大な墓地や人が住まなくなって遺跡化した都市や町を「ネクロポリス」と言ったりと便利に使われているようです。
今回のお話は「ネクロボティックス」でして、これは死んだ動物を機械と組み合わせてロボット化してしまおうというテクノロジーのお話です。
2022年の7月25日にアメリカ合衆国、テキサス州ヒューストンにあるライス大学のサイトにアップされた記事によると、ライス大学の機械工学者が死んだクモの体を使ってロボットアームのように使うという実験に成功しました。ロボットの機械式の指をグリッパーと言うのですが、クモの死骸を使ったグリッパーは死骸そのものの重さよりも重い物体を拾うことが出来、その動画はYouTubeにて公開されました。
クモの死骸に水圧を加える装置を組み合わせて、マジックハンドの様にモノを掴む実験を行ったのはプレストン研究室。
この研究室はソフトロボティクスを専門としており、ソフトロボティクスとは生物の動きや力加減は生物が最も適しているのでは?との考え方から、デリケートで精密な動きは生物から応用してロボットに落とし込もうという概念です。
そして、そういった研究の一環としてクモも研究の対象に組み込まれており、クモの足の仕組みは、油圧式に近い原理で動く為に、オオカミグモの死骸に注射器をくっつけて、水圧をかけて脚を開き、クモの自重の1.3倍の重さのモノを持ち上げることが出来ました。
また、この試験にオオカミグモの死骸は1000回以上耐えられる事も分かったのです。
このクモの死骸のグリッパーは力加減が容易にコントロールできるのも、廃棄した時に自然に分解されるのも大きな利点になるそうです。
ソフトロボティクスは生物の模倣を機械が行うことで、よりしなやかで、精密な動きを実現しようというもので、タコやミミズなどをモチーフにして、主に工業製品のピッキングなどで壊れやすいものや変形しやすいモノと扱うのに応用できる分野と言われています。
このソフトロボティクスが元になって、生物の死体をそのままロボットのシステムに組み込んでしまうシステムが考えられ、ネクロボティクスとして小さいながら成功例を出してきたのは驚きですね。
実は動物の筋肉も電気的な刺激である程度は動くのですが、この、かつて生きていた生物の死体を機械に組み込んで応用してしまうという「ネクロボティクス」の考え方は、新しいロボットの可能性を開いたと言えるかも知れません。
ネクロボティクスの研究は、まだ始まったばかりですが、元になったソフトロボティクスの研究にも興味深い影響を与えそうです、
今回はライス大学のサイトより2022年7月25日の記事「Rice engineers get a grip with ‘necrobotic’ spiders」、および、ナゾロジーより「クモの死体を自在に操作!工学的死霊術ネクロボティクスが登場!」の記事とギズモード・ジャパン「蜘蛛の死体をマジックハンドにしちゃう。生き物をロボットとして活用するネクロボティクス」の記事、そしてウィキペディアの「ネクロボティクス」「ソフトロボティクス」などの項目からお話しました。
蓬莱軒では、知的好奇心を刺激する話題を毎週動画でお届けしていますので、YouTubeチャンネルにもよかったら遊びに来てくださいねマスター。
それではまた、らいら〜い🖐
蓬莱軒【水曜20時 不思議・科学・都市伝説】
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