ドクターカー出動の実際④看護師としての災害時の対応
こんにちは
Camp Gear Tokyo です。
はじめに
キャンプの情報と看護師の情報の両方を発信しているブログになります。
読んでいただいてありがとうございます。
私は救命救急センターで看護師をしています。
資格では救急救命士と日本DMATも取得しています。
救命救急センター内の業務としてドクターカーへの乗車を日常的にしています。
そんな業務に興味のある方や
これからドクターカーに乗ってみたいなって思ってらっしゃる人の
情報源の一つになれればいいなと思ってこの記事を書いています。
良かったら最後まで見ていただけると嬉しいです。
今回はドクターカー出動時の看護師としての災害対応についてを少し語りたいと思っています。
ドクターカーの業務などに関しては過去のブログのリンクを貼っておきますのでお時間のある方はぜひ見ていただけたら嬉しいです。
今回のブログの内容に関しての参考資料は
JPTECガイドブック
外傷初期看護ガイドライン改訂第4版 JNTEC [ 日本救急看護学会 ]
DMAT標準テキスト改訂第2版 [ 日本集団災害医学会 ]
です。気になられましたら購入してみてください。
災害に関して
災害の定義に関して
定義に関しては明確なものはありませんが
自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態を指す
とwikipediaにはあります。
傷病者数、傷病者の重症度、傷病者んぼ特殊性が対応能力超えた場合で、外部からの応援が必要な状況
とJPTECガイドブックには記載されています。
災害にも自然災害や人為災害などいろいろと種類があります。
しかし、今回はドクターカーで出動した内容を基に災害時の看護師の役割について
述べようと思いますので、局地災害をイメージしていただこうと思います。
局地災害とは
災害に関しては事態が起こった場所を基に分類すると
局地災害
広域災害
に分けることができます。
局地災害とは局地的に起こった災害の事を指します。
広域災害とは広範な地域にわたる災害です。しかし明解な線引きが難しいの現状です。
今回は局地災害についてお話しします。
局地災害ってどのようなものが含まれるでしょうか。
電車の脱線事故
サリン事件のような事件
多数傷病者が発生した事故
のようなものが含まれますが
局地災害は普段の案件よりも医療、人的ニーズが高まる状態といえるのではないでしょうか。
実際に出動したことがある局地災害
実際に出動したことのある局地災害は自働車による多数傷病者がいる案件です。
ちなみに今回の案件は
で話した内容とは別の案件です。
最初にドクターカーで出動した時の要請内容は
「車の事故にて多数の傷病者がいる。詳細に関しては不明」という内容でした。
出動中に詳細な報告がありました。
「自動車がアクセルとブレーキを誤って人の群れに突っ込んだようです」
という内容です。
災害現場の原則CSCAについて
災害現場では対応の原則として
あらゆる災害を想定した
C:Commmand & Control 指揮と連携
S:Safety 安全
C:Communication 情報伝達
A:assesmen 評価
という考え方があります。これの事をCSCA(シーエスシーエー)と呼んでいます。
災害現場では困ったときにはCSCAで現場を評価しましょう
と教えている勉強会も多いと思います。
C:Commmand & Control 指揮と連携
誰が指揮を担当するのか
連携はどのようになっているのか
が重要になります。
指揮を担当するのは誰かを明確にしておくことで一貫した対応が行えます。
災害とはもともと、応援が必要な状態や医療ニーズが供給を上回った状態など、いろいろな側面はありますので、混乱した状態になりやすいため
指揮と連携を確認することは非常に重要です。
連携に関しても
どの指揮下で活動をしているのかを意識して活動することが大事です。
ドクターカーで出動して、現場で活動する場合には
一緒に行った医師が指揮者となることが多いと思われます。
先着している、現場の指揮を行っている現場指揮救急隊とは横並びの関係になります。
なので現場指揮救急隊に指示に活動方針に関しての指示を出すことはできません。
あくまでも別の組織でありますので、現場の救急隊員と共同して活動を行う場合には
指揮を行っている救急隊にその旨を伝えて、協力していただくことになります。
ちょっとめんどくさそうですよね?
そうです。めんどくさいんですが、ここは重要なポイントになります。
広域災害においてもこのCSCAの概念は同様です。大きな災害になればなるほど
指揮命令系統はややこしくなりますが、確認しておかなければトラブルになりますし
みんなで力を合わせないと、害を乗り切ることができなくなります。
現場で活動している人の多くはこの概念を理解して活動していますので
暗黙の了解であることも多いです。
S:Safety安全
安全に関しては過去のブログでも何回か述べています。
災害現場や現場活動で最も大事なことといってもいいと思われるのが安全です。
安全なくして現場活動はありえません。
安全は
自身(Self)
現場(Scene)
生存者(Survivor)
で評価しましょう!
安全は、危険物の認識、風向き、位置を確認し、安全な防護処置が行えているのかを確認する。
移動可能な傷病者を安全な場所へ移動することが重要です。
しかし、現場というものを刻一刻と変化しますので、常に安全かどうかを考える必要があります。
DMATの活動などで災害現場にいる状況に慣れてくるようであれば一時間に一回など定期的に安全について確認してもいいと思います。
C:Communication情報伝達
情報伝達に関してどのような情報伝達方法を使用するのかは重要になります。
もちろん伝令などもよいと思われますし
災害現場ではトランシーバーを使用することが多いので
事前に通信を行ってチャンネルや感度のチェックを行っておきます。
A:assesmen評価
以上の状況を判断して評価することが大事になります。
どのような活動方針をとるのか確認を行います。
救急車やドクターカーの侵入経路や搬送経路も確認します。
大きな災害になると、どのような患者さんをどこに集めるのかも考え、評価します。
今回の案件に関してのまとめ
今回のドクターカー出動の案件に関してのまとめをCSCAに合わせてまとめます。
C:Commmand & Control 指揮と連携
S:Safety 安全
C:Communication 情報伝達
A:assesmen 評価
で評価を行って情報の整理をどのように行ったのかを振り返りします。
C:Commmand & Control 指揮と連携
今回はドクターカーで出動したので、一緒に行った医師がドクターカー班の指揮者となりました。
連携としては、上述もしましたが、現場指揮救急隊とは横並びの関係で連携します。
S:Safety 安全
現場はすでに警察による規制線などが整備されていました。
しかし、道路を封鎖しているわけではないので、安全に気を付けることを情報共有しました。
またプライバシーに関しては、昼間の出動で野次馬も多い状況であるため
傷病者の診察などに関しては十分なプライバシーの保護が必要であることを認識、共有しました。
傷病者5名でそれぞれはそれぞれの救急車へ搬送されていました。
事故車の近くにはだれもいません。
今のところ、現場の安全はコントロールされているようでした。
C:Communication 情報伝達
情報伝達方法は医師と私、ドクターカー運転手、ロジスティックスさん(この方の役割はまた今度述べます)はトランシーバーで行う方針を確認しました。
医師と救命救急センターとの連絡は携帯電話で行う事、それぞれの救急車にいる救急隊は上位の現場指揮救急隊との連絡をトランシーバーで行っているようでしたし、現場指揮救急隊の人もそれぞれの救急車へ状況を確認するために細かく移動されていました。
A:assesmen 評価
評価としては安全が管理されていること
傷病者は5名
プライバシーへの配慮の必要性があること
傷病者それぞれの重症度によっては医療ニーズを多く上回ることが考えされる
まずはトリアージが必要と判断しました。
次に確認するTTTとは
CSCAに関しては上述した通りですが次はそれに付随するTTTの考え方について説明します。
TTTとは
T:Triage トリアージ
T:Treatment 処置
T:Transport 搬送
の事です。この考え方が災害医療の基本的な考え方になりますこの事を通して
CSCATTT(しーせすしーえーてぃーてぃーてぃー)と呼んでいます。
まずCSCATTTを確立しましょう!っていうのはよくDMATの研修でもいいますよね。
DMATの研修ではCSCATTTを嫌になるくらいにすり込まれるような研修が組まれています。
ではTTTの流れを見ていきましょう。
T:Triage トリアージ
トリアージについて
トリアージってご存じですか?
コードブルーなどの医療ドラマでもよくトリアージを行っているシーンがあるため
患者さんを振り分けているものだと認識されている人も多いのではないしょうか?
多数いる傷病者を簡単にスクリーニングして重傷者を見つけ出して重症な方を処置しましょう!
というものです。
あまり重症でない人の処置や搬送をしていると、重症な人が亡くなってしまうのを避けるための考え方です。
トリアージにはいろいろな手法がありますが
一次トリアージ…現場、もしく現場に近いところで行われる
二次トリアージ…救護所や医療機関等で行われる
があります。今回はトリアージの方法に関しては割愛しますね!
トリアージの話をすると長くなりすぎてしまいます。
今回の案件のトリアージの内容
今回の傷病者の中には重傷者の方はいませんでした。
傷病者の中に、妊婦の方や外国人の方、小児も居ませんでした。
T:Treatment 処置
処置はそれほど変わったことではありません。
災害現場では医療を行える範囲や時間は限られています。
もちろん人的なこともありますし、医療資機材も無限にあるわけではありません。
なので、効果的にしなくてはいけない処置を行う必要があります。
例えば、気道の確保や、活動性出血のコントロールなどがその中に入るのではないでしょうか。
しかし、その必要な処置にもいたずらに時間をかけることはできません。
何にどれだけの時間をいつ使うのかは非常に重要です。
T:Transport 搬送
搬送に関しては
どの人をどこにどの順番でどの方法でいつ搬送するのかを決める必要性がでてきます。
結局のところ災害の定義にありますが
人命に影響があるのが災害なので、人命に影響がないように現場から離れることが重要なのです。
現場にいる限りは、どうしても医療側のニーズが応援を呼ぶ以外で増えることはないので
圧倒的に医療側の人員が多い病院に早く搬送することが傷病者の方の危機を早く脱出することになると思われます。
今回の事案ですが、重傷者が居なかったので、搬送先が決定した順番に搬送していただきました。
看護師としての災害対応
災害対応に関しては上記に述べました。
それ以外の看護師の役割に関して参考資料には下記のように書かれています。
トリアージ
観察・応急処置・体液管理・搬送パッケージング
看護ケア(清潔・排泄・保温)
精神的援助(可能なストレスケア)
プライバシーの保護
資機材・薬品の管理
家族への連絡の確認
医療廃棄物の処理
とされていますが。
私が大事だと感じているのは
調整能力と俯瞰的に状況を判断し実行する能力だと感じています。
現場活動は調整能力が非常に大事です。
医師にはできるだけ指揮の担当や現場での処置に注意を集中していただきたいので
搬送手段や関係各所との調整能力で補助する必要性が必要と思います。
災害現場は非日常な状況ですが、冷静になって安全を評価したり、傷病者の状況を判断するには
俯瞰的に状況を判断することが必要になります。
今回の事案ですが、点々と100mくらいの道の距離に5台の救急車が並んでいる状態でした。
どの救急車にどんな患者さんがいるのかはわからない状況でしたので
私は北から順番にトリアージしていきます。先生は南からトリアージしてください。
重傷者を発見した場合にはその旨の報告と、一件ごとにトリアージ結果を報告し合いましょう。
と話し合って決めました。
こういった俯瞰的に判断することで調整を行うことができるようになりますし、自分の感情には左右されずに判断することが大切だと思います。
もちろんそのためにたくさんのトレーニングや現場を経験しているからこそできることだと思います。
なのでドクターカーに乗車したい看護師さんがいらっしゃるなら
相当な努力が必要です。と伝えておきたいです。
しかし、自己研鑽をすることで希望はかなえられると思います。
ちなみに、私はまったく自分が優れた能力をもっているとは思っていませんし
このブログで書いていることがすべてではありませんので誤解されないようにお願いします。
まとめ
今回は災害現場での活動内容を
CSCATTTの原則に沿って情報の整理を行いました。
また災害現場における看護師の役割に関しても簡単に説明をいたしました。
良かったらほかのブログ記事も参考にしていただきたいと思います。
コメントなどをいただけると励みになりますので是非よろしくお願いします。