走り書き ~チオール~
USディスクゴルフもシーズンが終わり、ちょっと物足りない今日この頃。
以下、自分用なのであしからず。
チオール(Thiols)とは
ビールにおけるチオールとは、つまり「揮発性チオール」。
⇒グレープフルーツやパッションフルーツ、グァバなどを想起させる芳香性のある硫黄(SH)化合物の総称。
芳香性と揮発性が高い「遊離型」
(特に南半球のホップは遊離型チオールを多く含み、特徴的なトロピカルアロマに貢献している)(それ単体で芳香性があるのでその状態で香りをつけることができやすい)
と、
グルタチオンやシステインに結合した状態の「前駆体型」
(非芳香性で、それらをリリースするためにはβ-リアーゼ生体内変換活性を有する酵母(や酵素)が必要)(それ単体では含有量にかかわらず香りは感じることは難しい)
がある。
チオールの一つである3MH(3SHとも)は、大麦にも多く含まれている。しかしながら前駆体の形で閉じ込められているため、感覚閾値に達していないらしい。
ビール麦汁では、これらのチオール化合物の圧倒的多数が前駆体の形で存在し(約1000倍!)、芳香ポテンシャルがため込まれている状態。
β-リアーゼ(β-lyase)とは
芳香性のチオールのロックを外すキーとなる酵素。
本酵素は酵母にも存在しており、主にシステインと結合した前駆体型チオールのシステイン結合を切断する働きがある。
酵母の持つIRC7遺伝子は前駆体型からチオールを遊離するβ-リアーゼ酵素をコードしている。
一方で多くの醸造酵母株は、この酵素を無効化してしまう不活性化変異をIRC7遺伝子に持っている。また機能的なIRC7遺伝子を持っている菌株においても、麦汁に共通する高N(窒素)レベルの存在下ではこの遺伝子がオフになってしまうため、麦汁中では酵素を生成しないことがわかっている。
つまりIRC7プロモーターを、常に遺伝子を維持する型に変更できた場合、チオール前駆体のロックを解除するためのカギになる可能性がある。
(Omega Yeastでは、”West Coast1”のIRC7遺伝子と、活性の高いプロモーターを組み合わせることで”Cosmic Punch”を開発した)
麦芽のポテンシャルについて
麦芽は高レベルのグルタチオン結合型3MHを持っているらしく、マッシングがグルタチオン結合型3MHをシステイン結合型3MHに変換するのに寄与していることを示している。(おそらくγ-グルタミルトランスフェラーゼの作用による)
しかしながら、ほとんどの酵母菌株がβ-リアーゼ活性に関して不活性なIRC7遺伝子として持っているか、麦汁によるIRC7遺伝子のネガティブレギュレーションがあるため、遊離型にするための酵素が作られない。
ホップのポテンシャルについて
大量の前駆体型チオールを含むホップをマッシングに投入することで、これらの前駆体型をグルタチオン結合からシステイン結合に変換できる。これが生体内変換活性への準備につながる。
チオールを効率よくコントロールするために
1.遊離型チオールを多く含むホップを使用する。
2.結合型チオールを含むホップを使用する場合、結合を切断するための酵素(β-リアーゼ)を多く持つ酵母を選択する。
3.システイン結合型チオールを効率よく抽出するため、グルタチオン結合型チオールを多く含むホップをマッシュホップに使用する。
ただし、あくまで理論であるので試行錯誤して自分なりの正解を導いていきたい。
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