ホップと科学。Part1 #BEER #HOP
どうも、Frisbeer guysです。
普段醸造で使ういろいろな知識とかをちょっと整理したくてoutput用にnoteでまとめたいと思います。未確定なことや間違っていることもあるかもしれないのでその時は優しく教えてください。
さっそくだが、かなりマニアックなoutputになるかも。
Today’s Theme【ホップを科学的に扱うために】
ホップに含まれるアロマ・フレーバー成分の大部分は、毬花の中にあるルプリン(黄色い粒々)というエッセンシャルオイル成分中に含まれている。品種によって各成分の含有割合や化合物が異なるので、様々な条件で使用することで芳香性が変化し、それがビールに現れる。
ホップ/エッセンシャルオイル中の主な化合物は3つに分けられ、炭化水素(炭素C,水素H)・+酸素含有化合物(C,H,酸素O)・+硫黄含有化合物(C,H,硫黄S)である。
ここから細分化され、
CH ⇒ テルペン類[モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)など]、そのほか脂肪族化合物
CHO ⇒ テルペンアルコール類[ヘミテルペンアルコール、モノテルペンアルコール、セスキテルペンアルコールなど]、そのほかアルデヒド,ケトン,エステル,エポキシドなど
CHS ⇒ チオール、スルフィド、チオエステル
と、大まかに分類できる。(もちろん他にもたくさんある)
さらに細分化すると、モノテルペン類にはミルセンやピネン、チオール類には3MH(3-mercaptohexanol)が、など多種多様な物質が存在する。またそれぞれ化合物ごとに人間の感覚に作用する香り・匂いは異なってくる。
ただし一つ重要なのは、それ単体で特定の香りはするのだが各々香りの閾値はバラバラで、複数の化合物が混ざりあうことで存外大きく香りが変化することがよくある。香りはとても奥深いのだ。
また各化合物は当然ながら化学的性質もそれぞれ異なるので、ビールへの抽出条件も多岐に及ぶ。この化学的性質の違いのせいで(とはいうがこのおかげで)様々なホッピング手法が開発され、ビールの多様性に一役買っているのではないかと思う。
下図は代表的なホップオイル成分を分類・抽出条件・香り表現でまとめたもの。
例えばテルペン類は全体的に沸騰付近の高温だとすぐに揮発して失われてしまうことが多いが、3MHなどのチオール類は高温でないと抽出されにくい。
従って、チオール類を抽出するためにまずはチオールリッチなホップをある程度高温で保持し、次に温度を下げてテルペン類を最大限抽出する、などというホップスケジュールが考えられる。
化合物によっては他の化合物と結合した状態で存在しているものもあり(例:配糖体/化合物がグルコースなどの糖と結合したもの)、その状態では化合物本来の特性は発揮されず、分離(遊離ともいう)することで初めて香りとして振る舞う。
ビールを作る開拓者たちが、投入タイミングや温度・時間・pH・濃度・その他ホップの形質など、何度も何度も何度も試行錯誤するのはこれらの性質を最大限に利用して多重的にビールに表現したいからである。
また前述したように、香り物質にはシナジー効果(相乗効果)を発揮する組み合わせが多く存在する、らしい。(おそらくまだまだ未知の領域なので)
(自分用にまとめたものなのですごく解りづらいかも)
例として、チオール類である3S4MPはエステル類の2MIBに作用することでアプリコット様の香り知覚をさらに増強する。またホップが古くなり酸化してしまうことで生成されやすい分岐差脂肪酸類はモノテルペンアルコールに作用して様々なアロマの知覚を増強する。
他にも酵母の生体内変換、近頃たまに聞くことがあるバイオトランスフォーメーション(Biotransformation)を利用するものもある。生体内変換とは酵母が活発に働いているときにホップを添加することで、化合物が酵母細胞内に取り込まれ、そしてその化合物が酵母の代謝プロセスを受けることで別の化合物に変換されることである(あってる?)。だいたいは酸化還元されたり結合が切断されたりするらしい。
例えば3MHAは生体内変換により3MHから生成され、ゲラニオールは生体内変換によりβシトロネロールへと変換される。
これ以外にも様々なシナジー効果があると思われるが、それらは我々作り手だったり科学者たちがこれから開拓すべき領域、なのだろう。
※これらの内容はおおよそ"Scott Janish"氏のBlog中にある論文
http://scottjanish.com/dry-hop-best-practices-using-science-as-a-guide-for-process-and-recipe-development/
よりまとめた知見である。
今回はここまで。次はホッピング手法についてまとめたいな。
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