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NPO法人姫路YMCAで、GPSを用いて活動を自動記録する実証実験を実施しました。

データを活用したソーシャルビジネスを共創する株式会社和平(本社所在地:福岡県福岡市、代表取締役CEO:阪田直樹、以下「和平」)は、ボランティアが携行するスマートフォンの位置情報と活動場所を照合することで、ボランティアの活動日数・時間を自動で記録できる「civicship(シビックシップ)」の展開に向けて、NPO法人姫路YMCA(所在地:兵庫県太子町、代表者:八杉 光春、以下「姫路YMCA」)がそのトライアルパートナーとなったことをご報告します。

また、姫路YMCAで実証実験を実施したことを併せてご報告します。



要旨

  • 姫路YMCAがcivicshipのトライアルパートナー第二号となりました。

  • 姫路YMCAで活動するボランティア7名に、civicshipモバイルアプリをインストール・ご利用いただき、4名のボランティアに1時間のオンラインインタビューを行いました。

  • 姫路YMCAで集約されていた過去の交通費精算の記録から、35名分の活動記録をWebアプリに登録しました。

  • モバイルアプリで、GPSを用いた位置情報の検知に不具合が生じ、活動時間の記録が正しく表示されませんでした。

  • モバイルアプリで、位置情報の共有を「常に許可」するハードルが高いことが分かりました。

  • 今回の検証で、「モバイルアプリでの活動の記録方法」と「団体のためになる体験のデザイン」が課題であることが明らかになりました。

  • 今後も実証実験を継続的に実施し、「活動記録方法の検証」と「ユーザー体験の検証」を進めてまいります。


トライアルパートナーについて

和平では、civicshipを通して、気軽に市民活動に関与できて長く活動し続けられる環境を提供するために、「トライアルパートナー」「コミュニティパートナー」の2つの区分で、本事業にご賛同いただけるパートナー企業・市民団体・自治体をかねてより募集しておりました。

このたび、姫路YMCAがcivicshipのトライアルパートナー第二号となり、実際にcivicshipモバイルアプリをご利用いただき、インタビューを通してフィードバックをいただくなど、civicshipの展開に向けた検証を行うこととなりました。

今回の実証実験

目的

ボランティアが活動を発信しないことに「共有の恥じらい」があると解釈しており、その解決策として「GPSと活動場所を照合して活動を計測すると良いのではないか」と仮説を立て、姫路YMCAでの実証実験を行いました。
活動を計測する手段としてGPSを用いるに至った経緯は、以下の通りです。

  • 「活動の発信に対して良い反応を得られないので、関心がある人だとわかるまで話さないのではないか」と仮説を立てました。

  • その解決策として、「操作を必要とせずに無意識下で発信する」ことで自分が話さなくとも勝手に話しているような体験を作れるのではないかと考察し、その手段としてGPSを選んでいます。

さらに、GPSを使って位置情報で記録することで、記録の抜け漏れや実態との乖離を防ぐことができます。記録を改ざんできないことも利点です。

実施概要

  • 2023年12月、姫路YMCAのボランティア7名に、civicshipモバイルアプリのインストール・ご利用

  • 2024年1月、モバイルアプリをご利用いただいた4名にオンラインインタビューの実施

  • 過去の活動記録のWebアプリへの登録


結果

今回、姫路YMCAで7名のボランティアの方にcivicshipアプリをダウンロードしていただき、アプリ利用者数の総計は38名になりました。
位置情報の取得については、38名中「常に許可」した人数は37名、うち継続して「常に許可」している人数は32名でした。

今回の実証実験で、以下の2点が明らかになりました。

  • 位置情報の取得を「常に許可」することに対して抵抗感があったこと

    • モバイルアプリ上でのアカウント登録時に、位置情報の利用についての説明(下図参照)を表示しておりますが、その内容が十分に理解されていないことがオンラインインタビューにより判明しました。

    • 位置情報の取得を「常に許可」して、活動を記録することが理解できないといったご意見もいただいております。

  • 活動時間を正しく記録できていなかった

    • 利用者が活動場所から出るときに位置情報の検知に不具合が生じており、正しく活動時間を記録できない事例が発生しました。


今後の課題

モバイルアプリでの活動の記録方法

今回の実証実験では、姫路YMCAの活動拠点「YMCA太子遊びと冒険の森【ASOBO】」を活動場所として登録し、活動場所の出入りを検知することで活動記録の実証実験を行いました。
活動を自動で記録するには、civicshipアプリに対して位置情報の使用を「常に許可」する必要があります。
※実際には、civicshipアプリは、活動場所の中心から一定距離内に出入りした瞬間のみ活動を記録し、それ以外のタイミングでは位置情報を記録していません。

モバイルアプリのインストール時に表示される、位置情報についての説明です。


しかし、「常に許可」という文言から「位置情報が常に監視されているのではないか」との疑念を抱いてしまうこと、および位置情報の使用を「常に許可」するハードルが高いことを再認識しました。
この課題の背景として、「個人情報にまつわるデータのは自分で管理したい」など、近年プライバシーの問題に敏感な社会も関係していると考えられます。


そこで、次の仮説を立てました。

  • 日常ではないデータにGPSを常に活用するのは不適切である

    • 日常のデータにGPSを活用している例・・・日常の移動のようすを計測し、その距離や歩数に応じて価値提供するアプリなど


この課題の解決策として、以下3点を検討しています。

  • 自分で記録を入力するのが良いのではないか(活動記録が実態と乖離する懸念はある)

  • 団体側で、スプレッドシートなどで活動記録を集約していれば、実態との乖離なく記録することが可能。(集約している団体は少ない可能性がある)

  • 活動前にQRコードを読み取ることで、位置情報を使わず実態との乖離なく記録することが可能。(参加時間の単位では乖離がある。例えば、10分の活動と8時間の活動が同列になってしまう。)


今回姫路YMCAでは、カレンダーに手書きで残された過去の活動記録や、Googleスプレッドシートに残された交通費の清算記録を抽出し、Webアプリにデータを投入しました。

姫路YMCAに残されていた手書きの活動記録です。日付の枠に、その日来た人の名前が記入されています。
姫路YMCAの交通費精算の記録です。誰が、いつ、どの活動に来たかが分かります。
Webアプリの画面です。姫路YMCAで活動するボランティアの活動記録が表示されています。


「団体のためになる」体験のデザイン

今回の実証実験では、モバイルアプリのインストール時に「自動で記録された活動記録を見返して、ニヤニヤできるアプリ」として訴求しました。
モバイルアプリでは、どこで、だれが、いつ活動したかを記録・共有しています。

しかし、モバイルアプリで団体内の他のメンバーの活動が見えることが、位置情報を「常に許可」することのハードルを上回るほど、魅力的で必要不可欠なことだと立証されず、位置情報の共有を「常に許可」するハードルが高いことが分かりました。


そこで、以下の仮説を立てました。

  • 「自分の活動を共有することで、団体のためになる」体験をデザインすることが、活動を記録してもらう動機になるのではないか

    • 「団体のためになる」体験の例:新規ボランティアの参画につながる、団体に寄付が集まる、etc.

「共有の恥じらい」について、既存の代替案は「関心があるとわかっている人に話すこと」であり、GPSを用いて自動で活動が計測・発信されることは必ずしも求められている体験ではなかったと捉えています。


この課題の解決策として、以下を検討しています。

  • 活動記録の目的を「ボランティアを集める」として団体外の人に向けて発信するWebアプリへの移行

  • 記録のシェアの対象を、「だれが、いつ、何をしたか」にする

    • 新規ボランティアが、活動に興味を持つきっかけになる

    • 活動の様子が伝わることで、団体に寄付が集まるきっかけになる

cicvicship Webアプリのイメージです。閲覧者は、だれが、いつ、何の活動に参加したかを見ることができます。興味を持ったら、「話を聞きたい」から団体に連絡を取ることができます。


ご協力いただいている皆様へ

civicshipを応援していただいている皆様におかれましては、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
今後のcivicshipについても継続的に発信して参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

現在、Noteにてボランティアやプロボノ、市民団体などのリサーチで得られたインサイトをお届けしていますので、併せてご覧ください。
「CIVIC INSIGHT」はこちら


トライアルパートナー募集

和平では、civicshipを通して、気軽に市民活動に関与できて長く活動し続けられる環境を提供するために、「トライアルパートナー」「コミュニティパートナー」の2つの区分で、本事業にご賛同いただけるNPO法人などの団体様を引き続き募集しております。

「団体のボランティアを集めたい」「地域のボランティアを活性化したい」など、市民活動を新たな事業機会に変えたいと考える団体様からのご応募をお待ちしております。
詳しくは、こちらのプレスリリースをご覧下さい。


civicshipの新たな取り組み・パートナー募集

和平では、civicshipの新たな取り組みとして、「共助の可視化」を通して「社会課題解決の試行錯誤を増やす」ことを目標に、社会貢献活動に取り組みたい中小企業の皆様が、市民団体が抱える課題の解決に取り組むプロジェクトを計画しております。
第1回目の実証実験は、4月までに公開する予定です。
そこで、本プロジェクトにご協力いただける中小企業様、市民団体様を募集しております。


本プロジェクトでは、

  • 市民団体の皆様が持つ課題を精査するコンサルティング

  • 課題に沿うスキル・専門知識を持つ中小企業様とのマッチング

  • 中小企業と市民団体が課題解決に向けて協働する場のコーディネート

  • 活動の様子を発信するプロモーション

以上を一貫して弊社で担う予定です。


「積極的に社会課題解決に取り組んでいる会社として認知されたいけれど、企画・実施・広報を一貫して行い続けられない」と考えている中小企業様、
「解決してほしい課題があるけれど、誰にどうやって相談すればよいか分からない」「課題が多すぎて、整理できていない」市民団体様からのご応募をお待ちしております。


NPO法人姫路YMCAについて

YMCA太子遊びと冒険の森 ASOBO を拠点に、経験豊富な指導員のもと大学生の野外活動リーダーとこどもたちが自然の中での遊びを通して、人との関わりを学び、新しい発見や体験にチャレンジできるプログラムを提供しています。
理事長:八杉 光春
設立:2012年
事業内容:青少年育成事業
Webサイト:https://himeji-ymca.org/


株式会社和平について

「複雑な市場の相互作用を紐解く」をミッションに掲げ、国際系NPOの理事を務めた阪田・中島が2020年に共同創業。civicship(シビックシップ)を開発しながら、「データを活用としたソーシャルビジネスの共創」をテーマに事業開発支援サービスを提供しています。
代表者:代表取締役CEO 阪田 直樹
設立:2020年
事業内容 :データを活用したソーシャルビジネスの共創
Webサイト:https://www.hopin.co.jp/