【ショートショート】パズル
絶対に解けないパズルを、ずっといじくり回している。
物心ついたときからそこにあったパズルは、解けないことでぼくを苦しめ、ぼくに息を止めさせる。
今日も今日とてパズルに手を伸ばすと、
「ナァ~ォ。」
猫の声。あれ、ぼくんちに猫なんていたっけ…
間接照明をすこし明るくして背後に目を向けると、夕焼けに照らされたように眩しい顔をして、シパシパと瞬きをしながら瞳孔を閉じる“何か”がいた。
「なにをしているの?」
……喋った。黒い毛皮に覆われ、四足歩行をし、短い尻尾を揺らしながらトテトテとこちらに歩いてくる。ぼくよりも遥かに小さなその体を機敏に動かしてぼくの膝に飛び乗るその姿はとても愛らしい。
「パズルを、解いてるんだ。」
ぼくは震える声で言った。膝に目を落とすと、目が合った。キュルンとした瞳から涙を流している。
「なぜ?」
今は9月なはずなのに、何故かえらく寒い。指先の感覚はなくなり、何も考えられなくなる。
黒い毛皮を持つそいつはサラサラと崩壊した。
次の瞬間、黒い砂がすこし水気を帯びて、ぼくの目や、耳や、口に、スルスルと流れ込んできた。何故だろう、苦しくない。
…あ。解けた。
478文字の超短編小説です。
#なんのはなしですか です。
お暇なときにでも考察していただけると
大変嬉しいです。
おやすみなさい。いい夢を。
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