飴玉倶楽部(1分小説)
宏と武司は小学生の時、いつも一緒に帰る友達だった。
ある日、宏は武司に言った。
「飴玉倶楽部を作らないか。」
武司は、びっくりして
「なんだ、それ?」
と訊き返した。
「お互いに飴玉を持ってきて、学校の帰り道に融通しあうんだよ。」
と宏は言った。
武司も(なんとなく面白うそうだな。)と思った。
次の日から、宏と武司は内緒で飴玉を持って来た。
そして、学校の帰り道に飴玉を交換して食べた。
最初の一週間ぐらいは、そうやってお互いに飴玉を交換し合っていた。
しかし、だんだんと武司は飴玉を持って来るのを忘れる事が多くなった。
そんな時は、無償で、宏が武司に飴玉をあげていた。
武司は忘れてくる事が多かったが、宏の奉仕の精神で飴玉倶楽部は続いた。
(将来、飴玉を売る仕事をしようかな。)宏は呟いた。
それから、十数年が経って、宏は社会人になった時、市役所の公務員になった。
小学生の頃は、飴玉売りでもしようかと思っていたのに、ガチガチの職業だ。
しかし、仕事ぶりがちょっと変わっていた。
何年かたって、宏は課長になると、毎日、飴玉を持って職場へ行き、仕事の終わりには、労をねぎらって部下に飴玉をあげていた。
部下からは飴玉課長と呼ばれるようになったが、部下からは慕われるようになった。
こうして、宏は何処へ行くにも必ず飴玉を持って行った。
そうして、子供にも大人にも、いろんな人にあげては、いろんな人と友達になって、豊かな人間関係を築いていったのでした。