親友(1分小説)
T中学校は、そのころ荒れていた。
上級生がカツアゲしているという噂が広まりつつあった。
昭俊は、その中学校の中学一年生だ。
ある日、同級生の大介と学校の帰りに本屋へ寄った。
大介とは小学校からの、所謂、幼馴染みだ。
昭俊は、立ち読みしていると、上級生二人がそばへ寄って来た。
そして、ニコニコしながら、そのうちの一人が手を出してきた。
カツアゲだ。
大介は、少し離れているところで、知らんふりして本を読んでいる。
昭俊は、電話代の十円しか持っていなかった。
財布から十円出して、上級生に渡すと、上級生はニヤッと笑って受け取った。
すると、もう一人の上級生が手を出してきた。
昭俊は、もうお金を持っていなかった。
しかし、ここでお金を渡さないと袋叩きにされるかもしれない。
昭俊は、恐怖に怯えながらも、もじもじしていた。
すると、背後から、大介が「やめなよ。」と割って入って来た。
上級生二人は顔色を変えたが、大介を本屋の裏へ連れて行って、ぼこぼこにした。
大介は、三週間のけがを負った。
上級生二人は補導され、カツアゲの常習犯だった事が分かった。
ホームルームの時間に、先生は、
「カツアゲされた人はその金額を書いて下さい。」と紙が配られた。
昭俊は、十円と書いて出した。
しかし、当然と言うか、そんな少額の金額は戻ってくる事はなかった。
それは、昭俊にとっても、学校側にとっても、どうでもいい話であった。
昭俊は、大介の事が気掛かりだった。
三週間後、大介は学校に出て来た。
大介は、カツアゲを退治してくれたヒーローとして、迎えられた。
大介は、人気者になった。
昭俊は大介に、
「あの時は、助けてくれてありがとう。」
と言った。
大介は、
「とても、見ていられなかったよ。お前が、お金がないの分かってたし。俺も正直言って、怖かったけどな。」
と言った。
あの時、昭俊と大介は真の友情で結ばれた親友となったのだった。
それから、大人になった今も、二人の交流は続いている。