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お祝い(散文)

「お誕生日おめでとう。」
ドアを開けるなり、パーン、というクラッカーの音に、奈津子はびっくりした。
優子は、もう一度、「お誕生日おめでとう。」と言った。
奈津子は、突然の事に、言葉が出なかった。
そう言えば、今日は30歳の誕生日だった、という事を奈津子は思い出した。
奈津子は、4歳年下の妹の優子と二人でマンションに住んでいる。
今日も、いつもと同じように会社から帰ってきたところだった。
奈津子は、とりあえず着替えをすませて、ダイニングルームへ行くと、ケーキが置いてあった。
「お姉ちゃんはお誕生日を祝ってくれる彼氏がいないんだから、私が代わりにお祝いしてあげる。」
優子は、嬉しそうに言った。
そして、優子は奈津子にCDをプレゼントした。
YOASOBIのCDだった。
「お姉ちゃんも、夜遊びして、彼氏見つけてね。彼氏をプレゼントしてあげたいところだけど、そればっかりは好みというものがあるからね。」
優子は続けて言った。
「実は、私、大樹と結婚する事にしたんだ。だから、これは私のお祝いでもあるの。」
「結婚前の前祝ね。おめでとう。」
ケーキを食べた後、二人は、飲み明かした。
奈津子は、もうしばらくしたら、一人で生活になるのか、私も男を見つけて、連れ込んじゃおうかな、と思った。

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