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別れ(散文)

雄司は優子に電話した。
「今度、名古屋で会わないか。」
「うん。分かった。」
今、雄司は大阪に、優子は東京に住んでいる。
去年まで、雄司は東京に住んでいたのだが、大阪支店に転勤になったのだ。
今は、雄司と優子は遠距離恋愛だ。
最初のうちは、頻繁に連絡を取り合っていたのだが、それも、殆どなくなっていた。
(会うのは、これが最後になるかもしれないな。)と雄司は、ふと、思った。
お互いの中間地点という事で、雄司は名古屋を選んだのだ。

当日、日曜日の朝、名古屋駅で待ち合わせた。お互いに新幹線一本で来れるから、交通の便はいい。
会うと、雄司は、ちょっと気まずさを感じたが、優子は、元気にしてた、と笑顔で言った。
二人は、地下鉄に乗って、東山動物園に向かった。
広い園内を、東京にいたあの頃のように、手を繋いで歩いた。
終始、和やかに楽しい時間が流れた。
優子は、まるで変わりなく、東京でデートしていた時のように、雄司に話しかけていた。
昼過ぎには、栄に移動して、早い晩酌を乾杯した。
夕方過ぎには、帰りの新幹線には乗らないといけない。
だんだん、お互いに無口になっていった。
そして、黙って、二人で名古屋駅に向かった。
時間の許す限り、駅地下モールを見て回った。
そして、宝くじ売り場を見つけると、
雄司は「運試しに買っていこう。」と言って、宝くじを買った。
そして、雄司は、「当たったら、そのお金で、また会おう。」と言った。
優子は、黙ってうなずいた。
そうして、二人は、別々の新幹線に乗って帰った。

後日、買った宝くじは当たっていなかった。
雄司は優子にそのことを連絡しなかった。
そうして、もう、お互いに連絡を取り合う事はなかった。

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