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Photo by
donchan_13
失恋(散文)
由美子は、彰宏に電話していた。
「もしもし」
「私」
「ああ、由美子か。こんな夜遅く、どうした。ただごとじゃないな。」
由美子は溜息をついた後
「宏にふられちゃった。」
と言った。
しばらく、沈黙があった。
こういう時は、何て言ってもらいたいのだろう、彰宏なら何て言うだろう。
由美子は、彰宏の言葉を待った。
しばらくして、彰宏が口を開いた。
「それは、由美子が悪いんじゃないって。宏も悪いんじゃないって。そういう運命だったんだよ。」
「運命?」
「そう、運命。誰が悪いわけじゃない。そういう運命だったんだよ。運命を受け入れるしかないんだよ。」
由美子は、少し気持ちが軽くなったような気がした。
「分かった。ありがとう。」
「俺とヨリ戻したくなったか。」
「そういうわけじゃない。」
と、由美子は口では言ったが、半分は当たっていた。
「でも、どうでもよくなっちゃった。」
彰宏は、一呼吸おいて
「明日、久しぶりに会わないか。」
と言った。
「いいよ。」
由美子の気持ちは、彰宏に向いていた。