見出し画像

妄想物語【すっぱいチェリーたち🍒】〜スピンオフ壽賀美の文化祭編3〜

つながり活動をされているうりもさんの妄想物語の第二弾
【すっぱいチェリーたち🍒】

たくさんの方が参加してます。

今回は学園もの。

それぞれすっぱい思い出ってあるんじゃないかな?

…すっぱいってなに?
そう思われた方はこちらをどうぞ。
これぞすっぱい話代表って感じです!

勘違いしたり、思い込んでしまったり、暴走しがちな青い春。

そんなすっぱさを妄想物語へ。

自分の中にある思い出と妄想を掛け合わせたらあの時感じたイタさもすっぱさも苦く消したい思い出から少しは甘酸っぱくいい思い出となったりするのかな?

すっぱいはすっぱいままなのかな?


私の前回までのお話はこちら

こちらのお話は妄想物語となり、登場人物は、それぞれの方をモチーフにしていますが、あくまでも妄想上の人物像ですので、勝手にキャラを作っています。
間違ってもそういうイメージで見ないようにしてくださいね。


【すっぱいチェリーたち🍒〜文化祭編3〜】
📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺

「と言うわけで、以上が配役、役割分担となります」

書記のおおのさわこが黒板の左端ギリギリまで書き終えると、級長の吉田吉夫が言った。

この日のホームルームは、文化祭で披露する劇の配役を決める日。

「基本1人1役。役って言ってもステージに立つだけが役じゃないからね。裏方だって立派なお役目があるの。なんだっていいの。大道具、小道具、音響、照明、どんちょうを開けるのだって立派な仕事。とにかくみんながこれに関わって、みんなで作りあげよう」

担任の由木先生が話すと教室内がざわついた。

「何やる?」
「何やろうかな?」
「あなたは、あれがいいんじゃない?」
「俺は裏方がいいかなぁ」


台本を書いた私には、すでに役割が与えられ、黒板には『演出』『監督』のところに『橋田壽賀美』と書かれていた。

何もすることのない私は教室のざわつきを感じながら外の景色を眺めていた。

校庭の花壇にはコスモスが咲き、空は高く、いわし雲があり、秋らしい季節になってきていた。

秋ってなんだか切なくなるんだよなぁ。
なんでだろう?
別に夏がウェイウェイしてて楽しかった〜ってわけでもないのに、夏が通り過ぎてくのはなんとなく切なくなる。

真夏はめちゃくちゃ暑くて、早く涼しくならないかなぁなんて思うくせに、いざ涼しくなると切なくなるんだから。
不思議だよなぁ。
あ!これがあれか。
乙女心ってやつか?
そうか。
私も乙女ってことだな。
木枯らしを感じると、気づかぬうちに心はあなたを求めてたってやつだ!
泣かないで恋心よ。
願いが叶うなら。
涙の河を越えて全てを忘れたい。
切ない片思いあなたは気づかない〜。

あぁ、キョンキョンになりてぇ。
キョンキョンの顔に生まれたかった〜。
そしたら私の人生バラ色じゃね?
なんてったってアイドルだもんなぁ。

私がキョンキョンになりたいと思っている間にクラスメイトはどんどん役が決まっていった。

「私、小人1」
「じゃあ私、小人2」
「音響やったことないけど、出来るかな?」
「俺もやったことないけど一緒にやろう」
「美術部だから大道具やるよ」
「私、衣装ならやれるかも」
「あ、一緒にやろう」
「私魔女にしようかなぁ」
「私、河合なお子」
「俺、オオカミ」
「俺もオオカミがいいな」

それぞれ手を挙げてやりたい役を言っていき、それを多さわこが黒板に書いていった。

「私、殺陣ならやれます」
大門寺ナナコが言った。

殺陣⁉️
私は驚き、黒板をまじまじと見た。
そこには私が書いた台本にはない『殺陣』の文字があった。
え?なに?
殺陣?
どういうこと?

普段無色透明で、度のキツイ黒縁メガネをかけ、黒髪でおさげ髪をして目立たたず、気配を消しがちな多さわこが勝手に書いたのか⁉️
書く時にもこちらに気づかれないよう気配を消して書いたのか⁉️
多さわこ…謎すぎる…。

しかもなになになに?
大門寺ナナコ名乗り出てるじゃん!
どういうこと⁉️
殺陣って、出来るもん?

よくわからないけど、私の中で多さわこの謎と、大門寺ナナコが極道の娘という疑惑がますます強まった。


「やりたい役が人と重なったらジャンケンで決めてね〜」
由木先生が言ってからじゃんけん大会も開かれた。

主役の『ハイジ』役だけ残してほぼ役が決まっていく。

それもそのはず。
ほとんどの役はほんの少しの出番で、セリフも一言、二言だけに対して、ハイジはほとんど出ずっぱり。
セリフの量も膨大にある。
だから誰もハイジの役はやりたがらないのだ。

「あー!また負けた!」
「嘘でしょ!オオカミこそやりたかったのに!」「また負けるなんて!」

河合なお子、小人1〜7。そしてオオカミ。
ことごとくジャンケンで負ける貝差彩子。

貝差彩子はジャンケンが弱かった。

「うわ〜!嘘でしょ〜!私ハイジ⁉️」

ハイジ役のところには、貝差彩子の名前が書かれた。


「よし。じゃあこれで決まったね。この後のことは、壽賀美が色々指示出すから」
と、由木先生が言ったので、私は立ち上がり、黒板の方へ歩き出した。

私が貝差彩子の横を通る時に貝差彩子が急に立ち上がった。

「待って!ハイジ役には、宇利くんがいいと思うの」
と言い出した。

「え?なになになに?」
宇利盛男は驚いた様子で言った。
私も貝差彩子の横で驚いた。

「私より、宇利くんの方がハイジに向いてるって思うんです」
少ししおらしげに言う貝差彩子。

「いやいやいや。ないないない。だって、ハイジって、女の子ですやん」

「女の子の役を女の子がやらなきゃないなんて決まり、ないと思うの」

「いやいやいや。あかんて」

「どうしてあかんの?あかんことないんちゃうの?」

「いや、そない言うても…」

「それってジェンダーレスじゃないんじゃないかな?」

「いやいやいや、怖い怖い。ちゃうって。そういうことやなくて…」

「宇利くんならわかってくれると思ってたのに…」
さらにしおらしく言う貝差彩子。

「いやぁ、わかるとかわからないとかやなくて…。なんで俺なん?」

「宇利くんなら完璧なハイジがやれると思うの」

「え…?」

「だから、私のハイジと宇利くんのオオカミを逆にして欲しいんよ」

「いやいや。ムリムリムリ。俺には出来ひんよ」

「出来るよ!私にはわかる。私は信じてる」

「彩子…」

「その方が面白くもなると思うだよね。ね!壽賀美!」

突然私に話を振ってきた貝差彩子。

私の手を握り、目をジッと見てきた。
貝差彩子の握力と眼力は強かった。

「え?あ、あーうん。そうだね」
と言うしかなかった。

しかも私のこの立ち位置。
気まずい。
前に行くはずが中途半端な位置で立ち止まり、貝差彩子と宇利盛男のやり取りが繰り広げられている。
私、めっちゃ邪魔じゃない?
そちらの席からよく見えないですよね。
私被ってますよね?
え?しゃがみます?
いや、しゃがんだら変ですよね…。
あぁ、視線が痛い…。
一刻も早く前に行くか後ろに引っ込むか、場所を移動したかった。
けど、動くタイミングを失った。

座布団配りの山田くんは座布団を配り終えたあと、誰かが大喜利してたら、後ろを通らない。
ちゃんとオチが終わってから移動している。
人が動いていたら話に集中できなくなり、オチが流れてしまうからだ。
だから、私もこのオチが終わるまで移動しては行けない気がした。
とはいえ、どこがオチなのか、いつまで続くのかもわからない。
ここに春風亭昇太もいない。
「そうだね」って言って今動けば良かった?
動くとしたら前?後ろ?
いや、席に戻るのも変だよな…。
けど、この状態で前に行ってもなんかキツくない?
私このやり取りをニヤニヤしないで聞ける?
聞けないよね。
この貝差彩子のサイコっぷり。
そしてそれに翻弄されてオロオロする宇利盛男。
面白すぎる。
絶対ニヤニヤしちゃうじゃん。
ニヤニヤしてる私をクラスメイトが見たら
「あいつ、なんかニヤニヤしてる。キモっ」って思われるし、それを我慢したらしてたで
「あいつ、ニヤニヤをめっちゃ我慢してる。きっしょ!」って思われるよね?
そんなんめちゃくちゃ恥ずかしいし。
私、乙女だし。
さっき乙女ってわかったばっかりだし。
しかも笑いを我慢したら、ますます笑いたくなるんだよねぇ。
お葬式とかも絶対ムリ。
笑いたくなる。
笑ったらダメって思えば思うほど笑えてくる…。

そんなことを考えているうちにまたまた動くタイミングを失った。

「いやいや。壽賀美さんまで…」

「あ、あぁ…。ははは…。まぁ…」
なんとも上手い返しが出来ない私。
クソつまらない私だ。

「それに、宇利くん前に言ってたよね」

「え…?なに…?」

「自分は、成績もスポーツもパッとしない。特にこれと言って得意なこともない。なんの取り柄もない平凡なゴリラだって」

「いや、誰がゴリラやねん!」

「飛べないゴリラは、ただのゴリラだって」

「いや、それ、豚やし。しかも誰がゴリラやねん!」

「こんな自分はもう嫌だ。こんなヘタレな自分を変えたいんだ!って」

「え?言うてたかな…?」

「宇利くん。取り柄が3年間無遅刻無欠席だけでいいの?そうじゃないでしょ。宇利くんには、もっとやれることがたくさんあんねんで!」

「え?俺に出来ること…?」

「そうやで。宇利くんは変われる。ううん。変わるんやない。宇利くんが、宇利くんになるんや。そのために、今、宇利くんは自分を解き放つ時なんよ!」

「解き放つ…」

「そう!解き放つの。自分を縛っているものはなんだと思う?」

「自分を縛っているもの…?」

「そう。それは、自分自身なんだよ。自分の中にある常識。それを打ち破った時に何が見えると思う?」

「え?なんやろ…?」

「自由。自由だよ」

「自由…」

「自由の女神」

「自由の女神?」

「ニューヨーク」

「ニューヨーク?」

「ニューヨークへ行きたいかぁ!」

「お、おー!」

「声が小さい!ニューヨークへ行きたいかぁ〜‼️」

「おーっ‼️」

「ハイジやりたいかぁー!」

「おー!」

「はい。決まり」

「え、あ、ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ〜」

「吉夫くん。ハイジとオオカミ役私と宇利くんのところ変えて。はい決まり」

「ちょ、ちょ、ちょ。待って待って。怖い怖い。ムリムリムリ。俺、バンドの練習もあるし」

「大丈夫。バンドも見に行くから」

「え?ホンマ?うわ、それは嬉しいわぁ。…あ、いやいや…そういうことやなくて…練習が…」

「宇利くん。もう、決まったことやで」

「いやいやいや。待って待って」

「男らしくないで」

「いや、それこそジェンダーレスやないやんか」

「宇利くん。大変な時を乗り越えた時に見える景色。それを見てみようよ」

「乗り越えた時に見える景色…」

「そう。『俺たちと一緒に新しい景色、見ようぜ!』って言って欲しい」

「なんか、それ、かっこええなぁ」

「そうだよ。もうあの頃の宇利くんじゃないんだよ。かっこいい宇利くんになるんだよ」

「かっこいい…オレ…」

「ハイジもバンドも頑張ってな。応援してるで」

「彩子!まかせろ!」
アーモンドチョコのCM『カリッと青春』の渡辺徹のようなポーズをとり、爽やかな笑顔で返す宇利盛男。

貝差彩子はその姿を笑顔で返しながら、宇利盛男に見えない角度でガッツポーズをしていたのを私は見逃さなかった。

こうしてハイジ役は宇利盛男、オオカミ役は貝差彩子と無事決まった。

が、文化祭当日、本番20分前になっても宇利盛男の姿が見えなかった。

〈続く…〉
📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺📺

この続きを書いてたのですが、あまりにも長くなってしまったのでまたまた分けました。
いつになったら文化祭にたどり着けるのか…。
私の中では次こそ文化祭を書きたいんだけど、たどり着けるかな?

出演者
宇利盛男…うりもさん
貝差彩子…彩夏さん
由木肉子先生…ゆきママさん
吉田吉夫…よしよしさん
多さわこ…おおさわさん
大門寺ナナコ…だいなさん
橋田壽賀美…ららみぃたん

最後までお読みいただきありがとうございます😊

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?