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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §12



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。一応能力者であるが未開発。

 矢作 夏美(やはぎ なつみ):輝夜のモデルとして先輩であり「お酒の師匠」の一人である。モデルとしては日本国内でトップクラスの人気者。輝夜のモデル仕事は大抵彼女からの依頼によるもの。趣味は旅行と地酒巡りで輝夜と(と言うより黒田と)出会う迄は専らバイクでの旅行しかしなかったが、黒田から電車での旅行の話を聴いて(洗脳され)すっかり電車での旅行にもズッポリハマっている最中。故に黒田の事を『ししょー』と呼んでいる。

 春原 芽(すのはら めい):輝夜のモデルとして若干後輩であり友人。趣味はソロキャン、スピ巡り、遺跡巡り。彼女も黒田から影響され乗り鉄と言う趣味に目醒めた。公には隠しているが元々密教系の「能力者」でもあり、日々の鍛錬の一連という事で時折輝夜とフィジカルトレーニングをする事も有る。術式の能力をさることながら格闘センスは能力者としてトップクラスとの事(輝夜談)。後日、輝夜の「付き人兼世話役」の一人として過ごすことになる。

 手嶋 晴(てじま はれ):手嶋屋HLD代表取締役社長であり江戸時代から続いている手嶋屋酒蔵の後継者。非公認の宮内輝夜のファンクラブ会長でありモデル業界でもタニマチ的存在で、輝夜が撮影で都内等に来る際には必ず差し入れをしてあくまでも「影から見守っている」ようなスタンスでいる。公では極めて「切れ者」として恐れられているが輝夜に関しては超甘々な態度しかとれない女性。現在未婚で容姿は若干ふくよかであるけど美人なので常に結婚相手を紹介される。しかし輝夜が居れば問題ないので結婚に関しては全く考えていない。



§12 取り敢えず今日も無事に【輝夜、その他語り】


《輝夜は埼玉でイーティと会ってブラックシートについての情報を仕入れ、咲夜は旧小山村にて隠れ住んでいた子供達の救助と『ゲス女』(コピーだが)を撃退する事ができようやく家に無事帰還する事が出来た。》


 私が晴さんの車で自宅に到着した頃には、空はすっかり藍色の空に幾つかの星が散らばっています。

 車内では未だ残っていたお菓子を食べ進めようと考えてはおりましたものの、私は思っていた以上にかなりの気疲れをしており、晴さんもまだ若干アルガナくんに掛けられた催眠術が残っていたみたいなので、高速に入ったぐらいから二人とも河口湖の出口手前まで寝てしまいました。

 「今日は本当に有難う御座いました。お忙しい中来て戴いただけでも有難いとの一言に尽きます。
 更に私事に関わらずお付き合いまでして戴き助かりました。」

 私は車から降りて晴さんに向けて深々と頭を下げてお礼を申し上げました。
 すると晴さんはすごく焦った表情とも照れている表情とも取れる感じで、

 「いえいえいえ、久しぶりに非常に濃密な1日を過ごすことができまさしくファン冥利に尽きますわ。ほほほほっ。
 おまけに帰りは輝夜さんがずっと眠っておりましたので私はそのお美しい横顔をご献眼できただけでも・・・」

 ええと、私晴さんがマジマジと私の顔を眺めていたの判っていました。別に襲っている訳では無かったので私の顔を眺めるぐらいなら減るものでは無いので。
 それに今日は危ない目にも遭わせてしまったのでその償いのつもりでわざと起きずにいました。と言う訳にはいかないのでここは何かしら出来る事を提供したいと思い伝えました。

 「・・・えっ、何か恥ずかしいです。・・・ええと、もしお時間があればこの後家に上がってのんびりしませんか?
 今日は何かと助けて戴いたのでお礼をしたいのですけど。」

 と言った所、晴さんはしょんぼりした顔をして、

 「輝夜さんのご提案、私大変嬉しう御座います。しかしながら明日朝一から経済連日本酒同好会の方々との会合が有りますので、これから戻って色々確認したい事も有りますから今日はこの辺で帰らさせて戴きますわ。」

 と言われたので私もしょんぼりした表情になってしまいました。

 「お忙しいとは知っておりますけどご無理を言ったみたいでした。ならば現場近くの駅まで送られるだけでもよかったのですよ。申し訳御座いません。」

 「いえいえいえいえ、私はただ※1車を動かす為だけに運転席に座っていただけで運転自体は全自動ですから問題有りませんわ。まぁ此処から帰るのも自動ですから私はただ乗っていくと言うだけなので然程疲れもしませんわ。
 ここで他の方にお会いすると名残り惜しくなりますから今日は此処で帰らせて戴きます。では。」

※1 車を動かす為だけに運転席に座っていた:法律(道路交通安全法及び自動運転規約)によって車種によって規定がある。晴さんの車種の場合は首都圏近郊は運転席に不在でも運用可だが圏外及び100キロ以上の運転の場合は運転席に着席している事が安全上義務とされている。一般的車種の場合は車の登録地より50キロ以内は不在運用可の物もあるがコンパクト車は範囲に関わらず運転席着席が義務とされている。

 と晴さんはそそくさと運転席に入り、車内から私に手を振って車がゆっくりと家から去っていきました。
 私はただそれを見送り、車が見えなくなるまで頭を下げておりました。

 一方車内の晴は、神田の自社にいる秘書に連絡をとり明日の会合の準備状況の確認等で秘書から確認をして居た。

 「・・・まぁ明日は安心ですわね。有難う。・・・それで、明日の議題に先程送ったメールにあった事項を追加して欲しいのよね。来られるメンバーは【解っている人達】ばかりですから彼らに至急お願いしたいという事になります。
 ・・・これ以上宮内の方々に余計な手数掛ける訳にはいけませんから此方でも調査をお願いしたいのですわ。ではよろしく。」

 とフォンを切って先程まで輝夜と出会っていた時とは全く違い真剣な表情で、

 「・・・どうも既に最悪な方向に進んでいますわね。」

 と溜息混じりの呟きをしていた。

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既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

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