蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §2
登場人物
宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。
宮内 大悟(みやうち だいご):黒田光流の父親。現在は富士北麓にて古代富士王国の遺跡発掘業務に勤しんでいるが、既に病魔に冒されておりご自身の最後の仕事として何ができるかを模索している。元々は東北から移住してきた人間であり息子と宮内荒太以外には色々隠している事が多い人物。
§2 どうも集中ができない、です【輝夜語り】
《昨日旧小山村にて400体以上の【ウォーキングデッド】を退治していた宮内輝夜。今日は早起きして黒田の実父である宮内大悟と新赤湖にて古代遺跡に関する発掘調査をしていた。》
私が上を向いてふと空を眺めて見ると、昨日に引き続き今日も天気がいいなぁと思い、軽く深呼吸をしていくと私の身体に新鮮な空気とエネルギーが入って来るのを感じます。
それにしても、空気の温度が昨日よりだいぶ低いのでこの時期らしくなったのかなと。
私は到着してから既に2時間近くこの『新赤湖』と最近暫定的に名付けられた湖の畔に断片的に点在している古代の溶岩跡や地層を地道に調べています。
此処にこの湖が出来たのは本当に最近の事で、以前はここより富士山側に広がっている青木ヶ原樹海の一部だったという話でした。
それから更に1600年前近くはこの青木ヶ原樹海も全部では有りませんが大きな湖だったとの事で、今日はその時の『軌跡』を探る為に朝から探索をしております。
と言うのは、其処から発見した物の中には宮内家にとって伝承されている古文書に記載されている物への証拠に繋がる可能性もありますから。
私が考古学という学問に惹かれた理由とするならば、私の血脈や運命から導かれたというのも有りますが、産まれ今も住んでいるこの富士吉田という土地に内在しているエネルギー、そしてそれらの源なり根拠みたいなものを私のような特殊能力者じゃなくても実感できる手段が無いのかなと思いました。
そこで、この考古学という学問に導かれた時にこれらを究めようとする事によって不確実な事実であった事を見出す事ができるのではないかと思ったからです。
そのお陰で私はそれらに喜びを感じ、それらを通じて更なる叡智に触れるきっかけともなり、あたかもそれらが私の心を美しく満たされた時間を過ごせるかなと感じております。
と綺麗事としてはこのように言っていますけど、実際のきっかけは『とある存在』からの強烈なプッシュとその時に私が置かれていた状況によるものが重なった結果と言う成り行きにしか過ぎません。
でも私にとっては多分一番この作業をしている時間が好きかなと感じます。
作業自体はとても汚れて重いものを持ったりする事もあれば逆にとても繊細な作業をすることもあります。
そう言えば、私が考古学を学びにオランダで大学生していた時に一番最初に学部の教授から言われた言葉が、
「あなたのような日本人形さんが何を好んでこんな古臭く汗臭くかつ生臭い学問勉強したいのかい?
実に君は変わっているし面白いね。」
教授という立場からだと思われますが明らかに上から目線の意見でした。
私は当時一般では中学生と呼ばれる年齢でしたから明かに舐められていたと思いますが、この教授は私のような小娘でも手加減をせず真剣に色々教えてくれましたので、教授から教わった事が今でも非常に重要で役に立っており今の私にとって感謝しきれない人になっております。
それに、私にとって廻りに人が居らずこういう泥臭い場所であれば他人の【氣】の波長を気にしなくても良いので問題なく外出できますけど、昨日のように人混みに晒されたりする事は今でも全然駄目です。
それでもモデル仕事でのスタジオならなんとか慣れてきましたけど、正直未だ『何とかやっている』なのです。
それにしても今日はどうも発掘に集中し切れておりません。と言うのは目ぼしい発見も出来てないと言う事もありますが、どうも昨日の事からの精神的な疲れがまだ残っています。
あと、昨日車内で廃トンネルの手前にて大量の『ウォーキングデッド』さんに遭遇していた時、その場所から北側にあたる集落付近から【何かしら強い波動】を感じまして、私自身どうしてもそれらの物を確認したかったので、今朝方旧小山村方面に【式神】を飛ばしたら狙い通り隠れて生き残っている方とコンタクト出来ました。
なのでこの方々達を早く助け出さないと思ってしまったので、現在の私の頭の中が色々有り整理つけていません。
・・・決して昨日呑んだアルコールのせいでは有りませんわ。その成分はもうとっくに残っていませんので。
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蓬莱の妃 1章2節《水の章》
富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章《水の章》2節目。 姉妹が前日調査で出か…
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