蓬莱の妃 1章1節 《水の章》 §7
前振り
いつも来て戴きありがとうございます。
今日はこの章のセクション7、8を上げさせて戴きます。
これで1章1節は最後になります。
あと、一括で拝読のご希望があれば既に電子書籍で出版しておりますのでこちらまでお願い致します。
それとこの章の最初はこちらになります。
登場人物
宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。
黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。一応能力者であるが未開発。
§7 お嬢様にとっていい運動になったみたいです【黒田語り】
《黒田と輝夜が神姫峠を大槻側から入ろうとした時、実験生物と思われる【ウォーキングデッド】と出会った。それを輝夜は難無く退治すると、旧小山村に向けて神姫峠に入った。》
「いやぁ、この峠が野生の熊や鹿、猪より【ウォーキングデッド】さんの生息地になって居たとは知りませんでしたわ。考古学的・地理学的に非常に興味有りますわね。
大悟おじ様にも教えて今度ここら辺を探索しないといけませんね。」
「・・・お嬢様、流石に【ウォーキングデッド】が自然に繁殖する生息地なんてありませんよ。変な冗談は辞めてください。
ついでに親父を巻き込まないでください。」
私と輝夜お嬢様は車でGPSには載っていない『神姫峠』と言うすっかり路盤が荒れ放題の嘗ての国道とされていた道をひたすら旧小山村方面に向かっておりました。
最初に3体の【ウォーキングデッド】に遭遇してこの峠に入ってから、彼女は1時間以上の間、細かく車で移動しながら、デッドさんが現れたら車から降りて退治する行為を繰り返していた。
峠に入ってからこれまで退治した数は恐らく3桁台と思われているものの、既に彼女が倒した【ウォーキングデッド】を数える事自体私も彼女も辞めてしまいました。
それらが連続的に出現(配置?)していればいちいち乗り降りしなくても良いと思っていながらも、こういう事自体侵入者に対しての嫌がらせだろうなと感じました。
実際化け物達が大体5体ぐらい一塊で出現しており、それらが微妙に距離を離れて配置されて居たので、面倒臭いながらも彼女は車を乗降りしながら移動するという事になってしまいました。
それに車に乗って移動していても決して快適な状態では無かったです。
恐らく嘗ては路盤にアスファルト敷設をして居たと思われますが、今はその面影として所々歪にアスファルトが凸凹している路面に現れて居るので、運転して左右に度々揺れていました。
まだ砂利道のオフロードの方が安定している感じです。
幸いこの車は彼女が発掘調査をする時に山道を移動する事もあるので、予め足回りをオフロード仕様にカスタマイズしてあるのでノーマル仕様に比べてマシな状態です。
このような状態がひたすら続いていたので彼女も多少飽きている感じも見受けました。先程7体遭遇した化け物を退治してから戻っていた時に、
「峠入る前から予想はして居ましたけど、思っていた以上にしつこく生息しておりますわ。ほんと一体何体用意しているのやら。」
と言いながら車内に移動して着席した。
彼女が自分のスカートのポケットに呪符の残量が少なくなって居たので、赤いポーチから呪符を補給しながらその呪符の残量を見ると、バッグ内にビニール袋に包んである札を袋から全て取り出し、それらに全てに【気】を入れながら言った。
「黒田さん、このままでは下手すれば呪符が足りなくなるかも知れませんわ。
そうなるとちょっとどころかだいぶ強引かつ倫理的に躊躇する方法を使う可能性もありますので、今のうちから覚悟して下さいな。
・・・そうでないと私たちが助からないかも知れませんわ。」
私は彼女が言う『倫理的に躊躇する』と言う事態にならざる得ない事は此処に来る前から何となく解ってはいましたが、私にとって『化け物』が単なる作り物だとしても人間のように二足歩行していた『生き物』と言う事なので躊躇してしまいます。
それと同時に、これを仕掛けた『向こう側』がそれだけこっちに来た人間を抹殺することに対して本気という事の表れでもあると感じました。
そんな風にまだ私が決断し切れていないのを察知していたので彼女は、
「まぁこの呪符のストックが無くなったらダイレクトにウォーキングデッドさん達を粉砕する事も出来ますが、同時に浄化(クリーニング)もしておかないといけません。そうなると甚だ効率悪くなり『力』を削られてこれこそ向こう側の思う壷ですわ。
このように向かってくるウォーキングデッドさんだけではなく、下手をすればそれを見越してやってくる能力者の対応も考えなくてはなりませんのよ。
だから私は向かってくるこの生き物達を殲滅して、咲夜ちゃんからの連絡があったら問答無用でさっさと撤収する。そして家で昨日呑めなかった分を含めて呑みたいのです。
今はそれだけが私にとって今の行いに対しての唯一のモチベーションを保てるネタなのです。」
20以上年下の小娘の方が私より遙かに冷静だった。
今の所まだ単に運転しているだけの私が必要以上に気にしても仕方がない。とにかく無駄な躊躇を行ったせいでウォーキングデッドさん達の餌になる事だけは回避しようと思う。
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蓬莱の妃 1章1節《水の章》
富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章目にあたる作品になります。
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