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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §13(終了)



前振り、とお詫び


いつも来て戴きありがとうございます。
この2節にて《水の章》編は終了になります。

で、ここでお詫びを致します。
私はてっきりこのセクションをアップしたつもりでいましたが、今日noteさんから来た『好き』お知らせでアップしていなかった事がわかりました。
・・・面目ないっす。

それで次の章は1.5章という事で繋ぎの話しになりますが、これ以降の話しへの重要な話しになりますので(登場人物が更に多くなりますので)
引き続きご覧になれることを切に願っております。

今紹介した1.5章の一括したものはこちらになります。

それでこの話の前セクション(§12)はこちらからお入りください。

だいぶ長くなりましたが、もうしばらくのお付き合いを。
予定では来月ぐらいに次の章の分割をアップしますので、その時もよろしくお願いいたします。

追伸:去年に比べて今年の今日時点(3/26日)では桜の『さ』の字の気配がしてませんね。去年の今頃はもう満開を過ぎていたというのに・・・
本当に人間界も自然界も訳分からない状態になってしまいましたね。

では、またの機会を。
・・・で、本編もご覧くださいな。



登場人物


 アルガナ(本名 トゥーラット・アル・モルガナリアス Toratt Al Morganalias):亞人と人間のハーフ。現在高校生の非常勤軍属の子。元『仲介者』佃氏と知り合い。来春高校卒業して、軍属を続けながらも佃氏の会社に就職予定。

 佃 義仁(つくだ よしひと):元『仲介者』、現在はフリーランスの能力者稼業をしている。姉妹とは2年前の事件で(当時は国交省の仲介者)首謀者の一人として敵対をしていたが、その事件を機に退職し元仲介者として活動し始めて定期的に姉妹と一緒に仕事をする様になった。

 榊原 由希子(さかきばら ゆきこ):現職の仲介者で裏との繋がりで在籍をしており様々な事件にも大きく関わっていると思われる。部下に自分専用の運転手、取り巻き(彼女は『狗』と呼んでいる能力者)が4人いる。性格は非常に傲慢で粗雑で倫理観皆無だが、彼女が『あの方』と呼んでいる人に関しては絶対なる信仰を持っている。佃からは『ゲス女』と呼ばれている。

 城戸 正三(きど しょうぞう):現在旧小山村の廃トンネルおよび近隣の隠れ施設にて人造人間を開発及び製作をしている科学者グループの責任者。元帝都東京大生物学教授だが倫理的に問題あったために学会と学校から追放されてしまった。だが本人は復讐より完璧な人造人間を作り出す方に専らの関心と情熱を持っている。無論人間としての倫理観は皆無。との事だが嘗て大学教授だった頃は学生に対しておおらかで【学校一のコーヒーマイスター】として尊敬されていた。



§13 それぞれのプランを


《この日の早朝、旧小山村の神姫トンネル跡では前日の襲撃によって同村の本拠地に移動せざるを得ない状況になりそれらの作業をしていた。
そしてこの日の夕方、佃は事務所にて次の日に発表予定の資料を纏める作業をしていたのだが・・・》


 宮内家で二日連続での宴会が始まろうとしていた時間から遡る事午前8時過ぎから、旧小山村内にある神姫トンネル跡にて働いている研究所スタッフが慌ただしい動きをしていた。

 昨日宮内輝夜らに襲撃をされた事を踏まえ、今朝方からその場所から撤収を開始をし、この場所から20分ぐらいにある場所まで機材と拿捕した人間全てを移動させていた。

 その場所は現在も山梨県の一部の地域の水源となっている神姫湖の辺りにあり、以前から有ったのかは不明である古ぼけていた建物と明らかに最近増築したと思われる建物がその場所になっていた。
 研究所自体の本体は以前から此処の場所の研究所になっておりトンネルの研究所はあくまでも一時的の利用していただけだった。

 様々な機械などを少ない職員一同でトンネル跡から搬出し、それらを研究所に移動させるまで6時間ほどかかった。

 午後二時過ぎ最後に研究所に入ったのは、旧小山村に隠れていた家族から拿捕していた小学生一人と働いていた研究者4人、そして前日夜に押しかけて来た人間である『ゲス女』こと榊原由希子と由希子の狗が一人、そしてこの研究所の責任者である城戸正三がこの建物内に到着した。

 城戸はただ自分の移動しただけだったが到着して早々由希子に対して不満げに呟いていた。

 「せっかくここまで造り上げた物を虫けら一匹が襲ってきたぐらいで放棄するまでしなくてもよかろうに。」

 「で、その博士の仰っておりますその虫けらに400体も潰されて何にも出来ずにいるのはどなたでしょうか?
 ひょっとしたらその原因の責任者様となっているのは一体どなたでしょうか?」

 「・・・相変わらず口厳しいお方ですのぉ。
 まぁ、あそこはあの村に隠れ住んでいた輩の探索と実験というのがメインじゃったから、それらが終わっておるからもう用無しじゃったし儂もいつ放棄しても問題ないようにはしておったから問題無いわい。」

 由希子は一息吐こうと羽織っていた大きめのジャケットの左内ポケットに入っている電気タバコを取り出し、それに口をつけようとしたら城戸から、

 「ここは建物内は全て禁煙じゃい。扱っている物にどう作用するかわからんので辞めて欲しい。」

 と強い口調で言われて、不満げは有ったものの城戸の言っていた事には一理があったので内ポケットにしまい直した。

 「今トンネルには私のコピー体と私の狗一号が残っているわ。今朝方あの姉妹が飛ばしていた紙切れを見つけて、その時隠れている奴と話をつけるから今日来ると思うのよね。

 ま、隠れている奴はいつでも潰す事は出来るから、今回はあくまでもあの化け物姉妹を釣るための餌として利用出来るかなと。
 出来れば昨日ちょっかいしたおチビさんの方を潰せれば良いのだけどね。・・・まぁあれでもこの国でも有数の実力者だから私の狗とコピー品がどれだけやってくれるかを楽しみと言えば楽しみだけど。まぁそう甘くないかもね。

 でもね、あの狗一号は私と一緒に『あなたの実験』に耐えて生き残った同志でもあるから、狗とは言え感慨深いのよ。」

 「そうじゃの、あれとあんたは儂の成功品じゃからなぁ。・・・【強制イニシエーション】こそ儂が本当に求めていた究極の人類進化への鍵なのじゃ。
 実際あの実験に耐えられて『仲介者レベル』に達することが出来たのはほんの僅かの者しかおらん。

 お前さんの【狗】として生きていける者ならだいぶマシな方じゃ。殆どの被験者が人格崩壊をして仲介者や能力者として自立出来る様な者にはならなかったりしたからなぁ。
 それ以下の存在は実験の為のパーツ扱いにしかならんかったわい。」

 「そう考えると、この村に隠れていた輩が実験体どうしで結婚して子供まで産んでいたのはまさしく奇跡的ですわね。
 しかもその子供達の内で最も高い能力を持っている子供を拉致できたことは良い成果と見てもよろしくてよ。上にもそれをアピールできるネタにはなりそうですわね。」

 と由希子は今ベッドに縛り付けられている子供を部屋の外から眺めながら満足そうに言った。

 しかし城戸は目の前にベッドに横たわっている子供には然程感心を示さず、午前中城戸の耳に伝わった羽川での『実験』が成功した事について話をし始めた。

 「そういえば、羽川での実験が成功して虫けら共がたいそう死んだそうじゃが、恐らくそれにあの小娘のどちらかが向かっているのかも知れんじゃのぉ・・・まぁ証拠らしいものは一切残ってはおらんから探しても無駄じゃろ。」

 「そうですか。私の方にも無事成功したと言う連絡が有ったわ。

 まぁその連絡してきたのがあの態度だけがデカイ行橋という親父だったのは唯々不快だったけど。昨日もこの親父から、

 『由希子様、今さっき宮内というくそ生意気な田舎者の小娘が来たので塩対応してやりましたよ。』

 って連絡がね。・・・ほんと一番虫酸が走るわ。」

 「・・・まぁそれでもいざという時には昨日貴方から戴いた【あれ】を使えば少しは役に立つ実験体にはなるじゃろ。使えるものは徹底的に使おうじゃないかの。」

 「その時はそちらにお任せ致しますわ。爆弾代わりにも肉の壁にもどうぞ使ってやってくださいませ。
 出来れば早めにお願い出来ればと個人的には思ってはおりますのよ。何しろあのウザイ親父の応対自体もう嫌なのよね。

 それより私が昨日持ってきた人形の残骸、正確には元私の運転手だった狗の一人だけど、あれって使えるのかしら?」

 「まぁあれは脳みそ無くても動ける仕様じゃから使えると言えば使えるがな。」

 「せっかくだからそいつに昨日の【あれ】を使ってみたいのよ。少なくても何も能力のかけらもないウザイ親父に先に使うよりかは遥かに『使える』傭兵にはなると思うのですけど。

 先ほど『あの方』の事務に問い合わせをしてみたら、既に4ダースぐらいこちらの方に発送する予定だったとの事だから私の方でも実験してみたいのよね。
 私の短気からやってしまったとは言え、何かしら使って欲しいのですわ。元飼い主として。」

 由希子のその台詞に城戸はいつも以上に陰鬱な笑いを浮かべながら、

 「由希子様がこんなに愛情深い方とは知らなんでしたわ。きっとやられた狗たちもやられた事自体に感謝していると思われますのぉ・・・まぁそう言われると思うたので既に【あれ】を注射しており、急いで復旧作業させて戴いておりますわい。」

 「流石は城戸博士ですわ。私の愛情深さをよくご存知で。・・・早くそいつをあの化け物姉妹にぶつけていたぶって欲しいのよね。
 まぁあくまでもそいつはデータ取りだから1回使い捨てで問題ないけど、それを早くあの方《帝》にご報告しないといけませんから。」

 「それなら早急に稼働出来るよう善処致しますわい。早ければ今日にでも使えるようにするから暫くお待ちされたし。」

 「・・・分かったわ。楽しみに待っていますわ。私はそれまで別室で待つなり屋外で煙でも吸っておくわ。」

 と言って由希子は部屋を出て行った直後『切り離された感覚』を感じた。それは村中心部に行っている自分の【コピー品】がやられた事を意味していると判断した。

 「・・・あのチビ娘、普通に強いわね。こんなに呆気なく私の分身を消すこと出来る何んて、昨日はやはりカマトトぶっていただけだった訳なのね・・・なかなかやるじゃん。」

 由希子はコピーがやられたショックより敵が思っている以上に手強いという事に胸の高鳴りを感じていた。

 由希子が退出した実験室モニタールームでは城戸は退出した由希子に毒づきながら、

 「ふん、小娘が。儂の実験に生き残っただけの分際が何を分かっておるのかい。
 ・・・まぁお前さんも実験体の一つという事を自覚して戴かないと。ほんと儂もそうじゃが度し難いなぁ。」

 と先ほど由希子に見せた時とは違う感じの笑いを浮かべていた。

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3,725字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

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