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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §8



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 遠藤 仁明(えんどう にめい):日本国の内務省の調査員統括している内省エージェント。「仲介者」としての能力も省内でも指折りの亞人とのハーフさん。名付けの元々謂れは不明との事だが幼少期に元外務部次官の遠藤仁清(故人)の養子として遠藤家に引き取られ、元々の名前である「ニーメイアー(Niemare)」という音を遠藤氏が聴いて自分の名の「仁」を使い、『明』るい未来の礎になって欲しいという希望から付けられた。
 本人曰く、とかく自他共厳しい父だったが亞人はハーフさんの不遇を自ら先頭になって解消していったという利他精神の強い人間だったとの事。
 ただ、それらを行った事による逆恨みが有ったらしく、公式には父の死亡原因は「事故による」とされているが、仁明は既に暗殺されたという情報を掴んでいた。

 手嶋 晴(てじま はれ):手嶋屋HLD代表取締役社長であり江戸時代から続いている手嶋屋酒蔵の後継者。非公認の宮内輝夜のファンクラブ会長でありモデル業界でもタニマチ的存在で、輝夜が撮影で都内等に来る際には必ず差し入れをしてあくまでも「影から見守っている」ようなスタンスでいる。公では極めて「切れ者」として恐れられているが輝夜に関しては超甘々な態度しかとれない女性。現在未婚で容姿は若干ふくよかであるけど美人なので常に結婚相手を紹介される。しかし輝夜が居れば問題ないので結婚に関しては全く考えていない。



§8 現場で油断してしまいました【輝夜語り】


《輝夜と晴が埼玉の現場に到着したのが、思っていた以上にかかり夕方になってしまった。
輝夜は実際の状況を目の当たりにしてすすんで出向こうする氣を失せてしまったものの、この現場まで折角運んでもらった晴の好意を無駄にはさせられないと思い車から降りようとしていた。》


 午後4時前にようやく現場に到着し、西空を見て普段ならもうすぐ茜色の空になりそうだなぁと感傷的になっておりますが、今いる埼玉県の羽川インターで起こった原因不明の崩落事故現場を見るとそういう気持ちが掻き消される感じでおります。

 此処に来ることが出来たのは予期しなかった晴さんの【お出迎え】が有ったので昨日とは違って電車移動しなくて済んでいます。
 車で普通なら自宅から2時間かかるかかからないかぐらいで到着できる場所ですが、この事故の影響で周囲の高速道路や一般道のほか上空のエアロードが使用不可になってしまったらしくそれらの利用者が『下』に降りてきてしまった為、道路が大渋滞になってしまいその結果3時間以上かかって現場に到着しました。

 でも乗ってきた車が家の車とは違い流石高級車と言う感じの座り心地の良さで下道でコンビニに寄った後は到着するまですっかり寝てしまいました。
 その間の晴さんの表情に関しては私は感知しておりましたけど本人の名誉の為に不問にしておきます。(私の寝顔に涎を垂らすような面持ちで眺め続けて居たのは感づいていました。)

 私達が現場に到着した時には既に火災による炎や煙は概ね収まっており、現場近くには連絡橋自体が『無くなった』ので救助で高速道路内まで入る事が出来ない為インター入り口には何十台もランプを付けながら救急車が待機していました。

 車を開ける前から周辺から異様な匂いが充満しているのが伝わってきており、私のような人間は匂いより周りに充満している『呪詛』に吐き気を催す感覚にやられそうでした。
 それでも外には出ないといけませんので、私は意を決して私が座っていた席の窓を開けて検問をされている警察官さんに『宮内輝夜と申します。内省の・・・』と言うと既に話が通っているとの事でノーチェックで現場付近で臨時に設置して有る駐車場まで自動誘導して戴きました。
 私達が誘導された場所は現場から極めて近くの所になったので、晴さんには此処から遠くにある外の臨時の待合室らしい場所に出てもらうより車に待ってもらう方が良いと思いましたので車の中で待って戴けるようお願いしました。

 「一緒に向かえないのは大変辛いのですが邪魔はしてはいけませんね。輝夜さん、お気をつけていってらっしゃいませ。」

 と晴さんは気丈に言っていましたけど、言った時の表情が思いっきり切なかったので思わず私の方も切なくなってしまいました。

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