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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §5



前振り


いつも来て戴きありがとうございます。

毎度ながらもアドリブがきかない物書きさんなので大したセリフが思い浮かばないのが私の悩みの一つでも有ります。
更に、1週間前ぐらいに発症した風邪の影響がまだ残っている感もあり思考がボケボケさんになっております(笑)
一時期は食欲がほぼ0の状態でどないしょと思いましたが、現在はほぼ元通りになってきた感じです。それでも1日1食生活にしたゆえ食が細くなっている影響もあり、もうガチ喰いは出来そうに無いなぁと感じております。

あと、今回のセクションは25000字程度という長文になってしまいましたので、ご覧になれる方はその点のご覚悟をお願いいたします。

・・・あら、すっかり愚痴ってしまいましたので今回の前振りはそこまで。
で、前セクション(§4)は此処になります。ご覧になっていない方はこちらまでお願いします。これも1万字越えの物になっております。



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。一応能力者であるが未開発。

 宮内 大悟(みやうち だいご):黒田光流の父親。現在は富士北麓にて古代富士王国の遺跡発掘業務に勤しんでいるが、既に病魔に冒されておりご自身の最後の仕事として何ができるかを模索している。元々は東北から移住してきた人間であり息子と宮内荒太以外には色々隠している事が多い人物。

 矢作 夏美(やはぎ なつみ):輝夜のモデルとして先輩であり「お酒の師匠」の一人である。モデルとしては日本国内でトップクラスの人気者。輝夜のモデル仕事は大抵彼女からの依頼によるもの。趣味は旅行と地酒巡りで輝夜と(と言うより黒田と)出会う迄は専らバイクでの旅行しかしなかったが、黒田から電車での旅行の話を聴いて(洗脳され)すっかり電車での旅行にもズッポリハマっている最中。故に黒田の事を『ししょー』と呼んでいる。

 春原 芽(すのはら めい):輝夜のモデルとして若干後輩であり友人。趣味はソロキャン、スピ巡り、遺跡巡り。彼女も黒田から影響され乗り鉄と言う趣味に目醒めた。公には隠しているが元々密教系の「能力者」でもあり、日々の鍛錬の一連という事で時折輝夜とフィジカルトレーニングをする事も有る。術式の能力をさることながら格闘センスは能力者としてトップクラスとの事(輝夜談)。後日、輝夜の「付き人兼世話役」の一人として過ごすことになる。

 手嶋 晴(てじま はれ):手嶋屋HLD代表取締役社長であり江戸時代から続いている手嶋屋酒蔵の後継者。非公認の宮内輝夜のファンクラブ会長でありモデル業界でもタニマチ的存在で、輝夜が撮影で都内等に来る際には必ず差し入れをしてあくまでも「影から見守っている」ようなスタンスでいる。公では極めて「切れ者」として恐れられているが輝夜に関しては超甘々な態度しかとれない女性。現在未婚で容姿は若干ふくよかであるけど美人なので常に結婚相手を紹介される。しかし輝夜が居れば問題ないので結婚に関しては全く考えていない。



§5 兎に角あっさり纏りました【黒田語り】


《元々この日は朝から用事が多く入っており、更に突発的な『事件』が起きた為、姉妹に対して指名の調査が入ってきたりして黒田はそれぞれに対しての調整をどう取ろうかと悩んでいた。》


 ほんの5分前まで昨晩この家に呑んだくれて帰れなかった妻とその妻目当ての来客さん達でわちゃわちゃして居ましたが、現在この家に居るのは私と本家から帰ってきて先程まで自室にて書類と格闘して居た咲夜お嬢様だけになって居ます。

 夏美嬢の話では都内から来た御一行は、取り敢えず本宮明香神社近くにある人気のある吉田うどん屋に行っていると思われます。
 此処は夏美嬢のお気に入りの店でもあり、そこの店主さん(夫妻共々)が夏美嬢の公式ファンクラブの山梨県支部の元締めで、スピードウェイやこの北麓でのファンミーティングの総仕切りを自主的にしていると言う事で、夏美嬢が北麓に来た際には必ずと言っていいぐらいの割合で『挨拶代わり』にお邪魔するのが彼女にとって北麓でのルーティンらしいです。

 それらの喧騒が落ち着いた感じになってきた頃に、咲夜お嬢様が自室から出てきました。
 彼女が『昼食にはまだ早めの時間ですが敢えて早めのタイミングで昼食を摂りたい』との事でお手製の吉田うどん(湯盛り)を用意すると、彼女は小さめのお口にズルズルと流し込みながら、傍らには本家から戴いたサロン設立などの書類などの資料と郵便で届いた『ブラックシート』の原本、自室から持ってきた幾つかの魔術書を時折眺めていました。

 彼女はブラックシートに手を翳しながら、時折魔術書を開いて気になった部分をいつも使っているキャンパスノートに落書きをして、口の中にうどん成分が無くなったらペンを箸に持ち替えてうどんを啜っていると言う決して行儀が良くない事をしておりますが、本人は極めて真剣な表情だったので私も注意しようが無いです。

 時々私に対して質問もしてきますが、無論その時には口にはうどん成分を無くしてからしてきます。
 その点に関して一応小さい頃から姉妹には躾として当たり前のことですが『口に物入れている時には話をしない』と言っているのでそれをちゃんと守っています。
 もう片一方はよくそれを破りますけど。

 「黒田さん、そのシートのこの左上から右回りに描かれている記号っぽい物なのですけど、書かれている文字と言うのが古代文字っぽいのはわかりますが、これらの法則が判らず【仮想的な術式】の構築までできそうに無いです。・・・一体なんでしょうか?

 これが所謂『原始的符号』と言う類のものとも思うのですけど。

 ただ私はお姉様とは違って然程古代文字に詳しい訳では有りませんので大したことは言えませんが、これらの文字がうちの家に代々ある文書の文字とは違っています。お姉様は確か【阿祖文字】と言っていたかと。」

 「ええと、私が知っている限りの話になりますけど、今本家で保管しているのはその文字を大昔の中華の位置にあった興国から来た人間が漢字に置き換えたという話ですから、本当に書かれていた意味合いから全てではありませんが本来の意味からは変容しているのは想像できます。

 でもそれらはその方々の何かしらの悪意ではなく多分その方々でも『理解出来なかった』意味合いだったので表現が変わってしまったという見解かなと。この話は輝夜お嬢様から訊いたものです。

 それに付け加えると、この【阿祖文字】の場合は文字と言うより象形表現記号と言う感じですから古代の五十音字と言われている『対馬文字』や『出雲文字』の方がこの文字に近いと言えば近いのかも知れません。」

 一応私は小さい頃から親父に半ば強制的に叩き込まれてきた考古学やこういう言語学のお陰で、宮内家にある文書の解析を空いている時間でやっていますから話ができていますけど、聞いている咲夜お嬢様はちょっとちんぷんかんぷんな表情をしていました。

 彼女は魔術系であればこの国でも頂点に近い知識を持っておりますがこういう言語学は苦手っぽいとの事を言っていました。
 だから若干顰めっ面をしながらこんな愚痴に近い事を言ってきました。

 「昨日佃さんからこれを『スキャン』した時から余りにも引っかかる部分が多くて正直モヤモヤしております。

 まだ私の範疇であるアトランティス文字やグリモア文字、ルーン文字ならある程度の解析出来ると踏んでいましたけど・・・それに今改めて『スキャン』してみたら何か『裏』に隠されている物が見えました。
 とは言え、これが何を意味しているのか。ううん・・・何とも分かりません。」

 「まぁ私はこれを『スキャン』出来る訳では有りませんのでどうしようも無いのですが、輝夜お嬢様はまだこれ(原本)に触っていないので落ち着いたら調査しても良いのではと思って居ました。

 しかし今日のこんな事件を起こされると強ちこの『ブラックシート』を昨日渡されて、直ぐに原本が届くようになっていると言うのが私にとって解せないのです。
 とは言え何もしない方より少しでもわかる事が出てくる方が宜しいかと思います。
 それと内省の遠藤さんにはうちから一人向かわせる事は伝えておきましたので状況次第でこちらも動きたいと思います。

 ・・・あと咲夜お嬢様は早くそこのうどんを召し上がってくださいませ。いくら激堅の吉田うどんとは言えフニャフニャになります。」

 「あっ・・・私っていつも色々やりながら食べる事多いからよくうどんをふやけさしてしまいますから早く戴きます。」

 こう私が言うと彼女は昼食のうどんを食べる事に集中してTVモニターをたまに目をやるような感じでした。
 モニターからいつ収まるのか判らない爆発の映像を見ながら、互いに無言で有りましたが内心気をあぐねていました。

 私が部屋の時計が12時を回っているのを確認した時、外から車のエンジン音が流れ込んできて車が敷地内の菜園前に停車しました。車の中からは輝夜お嬢様と私の親父である大悟が泥だらけの格好で出てきた。

 車から降りた二人は流石にこの格好のままで家に入るのは私に怒られると思ったので、服や靴についていた乾燥気味の泥をパタパタと叩き落として、先に輝夜お嬢様が玄関から入ってきた。

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21,456字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章《水の章》2節目。 姉妹が前日調査で出か…

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