蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §11
前振り
いつも来て戴きありがとうございます。
この節ももう間も無く一区切りできますので、もう暫くお付き合いをして戴くようお願い致します。
それでこのシリーズの現在の進行具合ですが、現在は書籍版用の追加ストーリーの清書とこの章の次の次の話しの清書に入っております。
・・・まぁ、その章のボリュームが1年では終わりそうないレベルなので本当に2、3年で書き切れるのか今から不安になっております(笑)
一応前振りは以上になります。この話の前セクション(§10)はこちらになります。
あとこの節を一括にご覧になる場合はこちらまで。
よろしくお願い致します。
登場人物
宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。
春原 芽(すのはら めい):輝夜のモデルとして若干後輩であり友人。趣味はソロキャン、スピ巡り、遺跡巡り。彼女も黒田から影響され乗り鉄と言う趣味に目醒めた。公には隠しているが元々密教系の「能力者」でもあり、日々の鍛錬の一連という事で時折輝夜とフィジカルトレーニングをする事も有る。術式の能力をさることながら格闘センスは能力者としてトップクラスとの事(輝夜談)。後日、輝夜の「付き人兼世話役」の一人として過ごすことになる。
§11 思っていた以上に軽いです【咲夜語り】
《旧小山村に入った黒田ら一行は、旧村役場跡近くに隠れ住んでいた対象者と無事接触でき、其処から子供二人は黒田の車に乗る事ができたので、『能力者』である咲夜、春原芽は近づいて来た襲撃者を向かい撃っていた。》
黒田さんと春原さんがこの旧小山村役場裏の廃屋に隠れ住んでいた方を救助するために入ってから数分もしないうちに、二体の『人間』らしいものがとうとう私の眼の前に立ち止まりました。
一体は姉様より背は若干低い感じの男性らしいのですけど、人間とは明らかに違う感じのオーラをバキバキに出しておりました。
もう一体の女性はどうやら昨日私に散々嫌がらせをしてきたとされる『ゲス女』さんらしいです。
『ゲス女』さんは私の手前で立ち止まって、いきなりノーモーションで右手で正拳突きをして来ました。
もう一体は私の右側をスルーしてどうも私たちが乗ってきた車やトライクルの方に向かってしまいました。
「私の相手は自分だけで十分、と言う感じですか。とことん舐められていますわ。・・・正直言って本当にムカつきます。」
と言いつつ、彼女のノーモーションの正拳突きを難なく右側にかわしつつカウンター気味に彼女のボディに左脚でミドルキックを距離を取らせるつもりで入れようとしたら・・・難なく彼女のボディにクリーンヒットしてしまいました。
『ゲス女』さんは後方に3M程飛ばされて片膝をついていました。
「何だか異常にフィジカルが軽いです。・・・この人本当に『ゲス女』なのかしら。」
私はその時違和感を感じました。昨日はフィジカルではなくテレパス上ですが、サイコパス気味に煽ってきた人とは明らかにエネルギーレベルが違っていました。
テレパス上でも昨日はフィジカルでも相応な強さを持っていると感じておりましたのでいつも以上に気合を込めて対峙しましたけど・・・拍子抜けたぐらいに軽い感じです。
私に吹き飛ばされた後20秒ほど片膝をついていた『ゲス女』らしい彼女は多少よろめきながら立ち上がり、今度は再び近づいて左手を大振りしながら『念動力』を加えた左フックを私にぶつけて来ようとしていました。
しかし私はその左手をあっさり受け取ってしまい、その左腕を私の体に巻き込み彼女の脳天から道路にめり込ませるつもりで一本背負いの感じで路面に頭付近を叩きつけました。
すると『ゲス女』さんの頭からは赤い血ではなく緑色っぽい体液らしいものが噴き出し、彼女の左腕の鎖骨はどうやら叩き落とした時に粉砕骨折したみたいで左腕が機能していないみたいです。
と言うよりもう彼女自身がもう動けない感じでいました。
それでも私は念入りに【炎】の呪術を発動させようとしましたら、あっという間にバラバラに体全体が崩れ始めて10秒もしないうちに噴き出していた緑色した体液だけが路上に散らばったまま体が消えて無くなってしまいました。
「・・・何だか思っていた以上に弱かったです。多分これは彼女の【コピー】ですね。残念です。
本物だったら更に試したい事があったので行いたかったのですけど・・・またお会い出来るでしょう。」
私は呆気なく昨日『嫌がらせ』を受けた分のお返しと言う意味では本物では有りませんがやっつけてしまいました。
とは言え此処には何らかの目的が有ったから来たと思いますから本命はもう一体の方かなと思われます。その為の足止めとして用意されたのがこの呆気なくやられた『ゲス女』さんもどきかなと思います。
こちらが片付いたのでもう一方の刺客が向かった方に行こうとしましたら、私の右手方向の至近距離にいつの間にか今にでも『消えそうな』感じの女性が私にか細い声で話しかけて来ました。
「ええと、此方の方はもう・・・片付いたのですね。咲夜さん・・・ですよね、本当にお疲れ様でした。」
見知らぬ女性からいきなり私の名前を言われましたので戸惑いましたが、どうやらこの女性はお姉様がコンタクトをとった方であり先程まで隠れ家にシールドを張っていた方だと気がつきました。
私の事は先程までシェルターにいた黒田さんから聞いていたのかなと合点がつきました。
「正直全然疲れるような事が無く拍子抜けですがとりあえず片方は片付けました。
ただもう一体がどうも連れが乗ってきた車の方に向かったみたいですからこれから向かおうと思っていたところです。」
「ならば早く急がないといけませんね。」
私は女性に促され無くても今行くつもりでしたが、行こうとしていた方向を見たら急がなくてもいいかなと思い、私は一息ついて応えました。
「・・・いいえ、大丈夫みたいです。」
と言うのは、向こうに行ったもう一体の招かざる人間が右の方から路面にバウンドされながら叩きつけられたのを確認したからです。
無論黒田さんにそんな力は無いのは知っていますので、それをやったのは春原さんだと思います。まぁお姉様と手合わせをしているぐらいですから相当強いとは思っていましたけど。
それよりも私は今側にいる女性、多分中に居た子供達のお母さんだと思われますので、今のうちにその方から『消える前』に時間のある限りお話しを訊く事の方が大事かなと思い『消えるまで』彼女の側にいる事にしました。
「先程私は子供達を・・・此方に来られた黒田さんという方にお預けしました。・・・ですからもうシールドは必要はありませんから解除して此方に参戦しようと来ま・・・した。・・・けどもう終わって居たので半分安心しております。」
「そ、そうですね。まぁ私が本気出す前にあちらの体が持たず消えてしまいましたので呆気無かったです。
まだその人間の『体液』が道路に染み付いていますけど、その体液すらもう一部分は消えてしまっております。
私が戦ったのは昨日別の場所で『嫌がらせ』をされた人間のコピーかと思われます。
その割には弱すぎましたけど。恐らく本物も比較的近くにはいると推測されますが、向こうからの【妨害波】がこの辺一円張られて居ますから本物を感知出来ない状態です。」
とその女性に言った時、彼女からほっとした感じを受けて彼女の体がほぼ透ける感じになり言葉も更に途切れ途切れになっていました。
「なら・・・ば、は・・やくおう・・・えんに・・・い・・・ってくだ・・・さい。・・・私・・・はも・・・うここ・・・まで・・・です。」
「わかりました。貴方様をお見送りしてからでも大丈夫です。
あとお預りしたお子様に関しては宮内の家に誓って絶対にお守りし立派な子としてお育て致します。ご安心してください。」
「あ・・・りが・・・とうご・・・ざい・・・ます。」
彼女はこの一言を言って安心した感じで消えてしまいました。
私は今さっきまで女性がいた空間に向けて手を合せ、春原さんの所にすぐさま向かいました。
*
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蓬莱の妃 1章2節《水の章》
富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章《水の章》2節目。 姉妹が前日調査で出か…
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