蓬莱の妃 2章1節 《火の章》 §7
前振り
いつも来て戴きありがとうございます。
これを書いているのはアップする前日にしております。
で、今日は朝から色々と私以外の人に関わる用事でお出かけという事で慌ただしく時間を気にしながら書いております。
という事ですごくあっさりといつものご案内になります。
で、今回も1万字越えというボリュームになってしまいましたのでお時間がある時にご購読をお願いします。
前セクション(§6)は以下のところにありますのでご購読をお願いいたします。
で、いつも通りにくどくこの話のシリーズのマガジンの紹介はこちらまで。
登場人物
城戸 正三(きど しょうぞう):現在旧小山村の廃トンネルおよび近隣の隠れ施設にて人造人間を開発及び製作をしている科学者グループの責任者。元帝都東京大生物学教授だが倫理的に問題あったために学会と学校から追放されてしまった。だが本人は復讐より完璧な人造人間を作り出す方に専らの関心と情熱を持っている。無論人間としての倫理観は皆無。との事だが嘗て大学教授だった頃は学生に対しておおらかで【学校一のコーヒーマイスター】として尊敬されていた。
宮内 荒太(みやうち あらた):宮内姉妹の祖父。前富士明香神社の宮司。現在は地元の相談役みたいな事をしていながらも孫である姉妹の陰陽師としての『教官』をしている。元『仲介者』であり裏組織である【南朝派陰陽師】の一角としてこの国の代表の立場を担っている。性格は周りに対してどうしても言い方で厳しい事を言いがちな人間と思われている。本人もそんな役回りをしていると自覚している。
イーティ・アルメシア:亞人の純粋種。所属は古文書及び術学研究機関(通称4Aと呼ばれている)のアジア・レムリアン地域の技術員。
榊原 由希子(さかきばら ゆきこ):現職の仲介者で裏との繋がりで在籍をしており様々な事件にも大きく関わっていると思われる。部下に自分専用の運転手、取り巻き(彼女は『狗』と呼んでいる能力者)が4人いる。性格は非常に傲慢で粗雑で倫理観皆無だが、彼女が『あの方』と呼んでいる人に関しては絶対なる信仰を持っている。佃からは『ゲス女』と呼ばれている。
§7 不肖の師のまま立ち去ろう【城戸正三語り】
《此処では城戸博士が過去に行った【強制イニシエーション】という亜人たちに対して行ってしまった事への贖罪が綴られており、博士は最初に己の身がある事自体にこれからの禍根に繋がると思い、富士吉田のとある人物にお願いに行く事にしていた。》
(過去の回想・独白)
『儂はただあの子達を救いたかっただけじゃ。この世に亞人と呼ばれていた生き物が理不尽に虐げられたのを唯々救いたかっただけじゃ。』
儂はこの日も都内に秘密裏に存在している亞人専用病院の一病室内にて亞人の一人を見送る事になってしまった。
これで残っておるのがあと10人しかおらん。生きていると判っておるのが榊原といういかれた娘とそいつにくっ付いておる《亞人崩れ》の奴が4人。行方不明となっておるのが3人。あとの二人は都内の病院にて監禁状態で近いうちにこの二人も死ぬじゃろう。
【強制イニシエーション】・・・儂が研究しておった『人工生物へのアプローチ』と言う論文をベースにした物でしか無かった筈じゃが、あくまでも『ハーフ』と呼ばれる人間への延命やDNA破破損症と言うメディカルベッドだけでは完治が難しかった物を助ける為の物じゃった。
しかし儂が実際やった事は結局亞人達の非論理生体実験と言う程の良い虐殺じゃないか・・・何が叡智じゃ何が救いじゃ。
先程儂は長年世話になった帝都東京大学教授を退任した。研究室にあった物は全てデータ共消去して、今の儂の持ち物はもうボロボロになっておる茶色の革のドクターバッグ一個しか無い。
じゃが、どうしても残さないといけなかった物に関しては『学内のとある所』に資料として置いてきた。
後にそこを使い、それに気が付いた人間に渡れば儂の役目は終わった事と同様じゃ。あとはこの愚か者の体や魂を処断してくれる人間の所に行くだけじゃった。
これからそれをするのに値する人間の元に行こうとしている途中だ。その人間は靈峰富士の麓にて宮司をなさっている宮内家の頭首である宮内荒太氏だ。と言う事でその者がおる富士吉田市まで行く事にした。
都内では基本全自動化されている交通機関に於いて数少ない運転手が運行している中央線の特急列車に大槻駅まで乗り、大槻駅では未だに全自動化されていない電車に乗り換えて宮内家の最寄り駅である富士山駅まで乗り、その地に漸く降り立つ事が出来た。
しかし駅に到着してから駅のアナウンスにて【市内では富士山噴火活動等による外出注意勧告】が発表されていたと言う事で、駅から出てみるとタクシーが一台しか停まって居なかった。
それでも宮内家まで行かないと思っておったから唯一停まっていた※1有人運転タクシーの所に向かい運転手に行き先を伝えた所、その運転手は怪訝な表情をしながら、
「今・・・行くのですか?・・・まぁ仕事なので行かせて戴きますけど。」
と言い、それ以降は会話らしい物も無く思っていた以上にすんなり宮内家に到着した。
到着して宮内家の建物を見ると、既に居住部分でも100年以上経った物と思われ、神殿部分である本殿を見ると明らかにその数倍の年月を経っている感じがあり、久しぶりに身が引き締まる想いを感じた。
今回荒太氏には何もアポイントらしい物をせず思うままに此処まで来てしまったのじゃが、『何となく面通りが出来る。』と言う確信が有ったものの、今更ながら此処に来て多少躊躇してしまった。
それでも何もしない訳にはいかなかったので、儂は居住部の入り口の前に立つとインターホン越しに若い女性の声がしたので儂の身元と要件を伝えると30秒後に先方から、
『お館様がお会いしても良いとの事ですので、扉をお開け致しますのでお待ちください。』
と言うと、手前の引き分け戸が多分念動力を利用した物だと思われる力で自動扉のように開き、開いた扉の先には儂と応対したと思われる女性が正座をして儂を見た後深々と一礼をしおった。
儂はその一分の無駄すら無い所作に思わず一礼をすると、女性は立ち上がり儂は玄関で靴を脱ぎ、女性から勧められたスリッパを履いて女性の後について行った。
案内されたのがリビングや応接間では無く荒太氏の自室だった。自室の入り口前に女性た立つと、
「お館様、東京から城戸様がご到着されましたのでお通しします。」
と言うと、部屋の中から『ご苦労、中に通してくれ。』と野太く今まで感じた事が無い圧力のある声がしてきた。
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蓬莱の妃 2章1節《火の章》
富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の1節目の作品になり…
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