蓬莱の妃 2章2節 《火の章》 §4
登場人物
宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしており、本人が出かけるのはこの地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行う時か、自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルで都内に出かける時しか無い。
元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。
宮内 荒太(みやうち あらた):宮内姉妹の祖父。前富士明香神社の宮司。現在は地元の相談役みたいな事をしていながらも孫である姉妹の陰陽師としての『教官』をしている。元『仲介者』であり裏組織である【南朝派陰陽師】の一角としてこの国の代表の立場を担っている。
性格は周りに対してどうしても言い方で厳しい事を言いがちな人間と思われている。本人もそんな役回りをしていると自覚している。
榊原 由希子(さかきばら ゆきこ):現職の仲介者で裏との繋がりで在籍をしており様々な事件にも大きく関わっていると思われる。部下に自分専用の運転手、取り巻き(彼女は『狗』と呼んでいる能力者)が4人いる。
性格は非常に傲慢で粗雑で倫理観皆無だが、彼女が『あの方』と呼んでいる人に関しては絶対なる信仰を持っている。佃からは『ゲス女』と呼ばれている。
須長 永順(すなが えいじゅん):日本共和国内務省副次官であり仲介者資格を持つエージェント。同じ省内にいる遠藤(遠藤仁明:内務省調査員統括)と同期になるが思想が正反対の人間。あくまでも己の出世しか考えていないのでその為にあらゆる者を利用している。《帝》の内通者の一人。
久住 静佳(くずみ しずか):富士見明香神社の総巫女長をしており、富士吉田にて副メイド長をしている久住真由佳は静佳の姉である。能力者として姉と実力的に拮抗しているものの特段突き抜けている能力は持っていない事をコンプレックスにしている。しかし周囲の巫女からは絶対の信頼を持たれている。
その他UPRAでのエージェントでもあり、その際の階級自体は無いが『マスターランカー』という中隊長相当の権限が与えられ海外で幾つかの作戦での成果を得ている。性格は姉よりも快活で食べ歩きを趣味にしている。
姉とは違い普段は洋服しか着ておらず巫女服はあくまでも仕事着として着ているだけと公言しているが、食べ歩きや洋服代の為の資金調達の為している【裏バイト】では姉と一緒に和服姿を撮ったエイリアス電子ブロマイドやそのアバターキャラである『&meets(あんみーつ)』として活動しているがそれを神社にも周りにも言っていない。
万代 美世(まんだい みよ):富士見明香神社の巫女長の一人。20代で就任するぐらいの有能な能力者でもある。総巫女長の静佳の事を何より尊敬をしており大の男嫌い。性格は真面目で努力家の一言で融通が利かない。
§4 ウォー・オブ・ホスピタル ラウンド2【午後1時40分 輝夜語り】
《輝夜と荒太は大槻総合病院に入院していた患者やスタッフが『ウォーキングデッド』化した人間や宮内家にいた【裏切り者】たちを退治・制圧し終える事が出来た。
しかしながら、病院入り口前には神姫湖で実験をしていた《帝》側の人間や能力者が二人を倒すべく待機していた。》
先程まで建物内で『良からぬ存在』になっていた方の退治をし終えて1階に降り病院入り口に来ると、すっかり誰も居なくなったという静寂の中、総合受付の上に飾っているクラッシックな針時計からカチカチと音が響いていましたので私は時計の方向を見ると午後1時40分を指して居ました。
私とお爺様は現在総合受付前の入り口にいて、お爺様が受付カウンター天端に張り付けているお札の結界によって外の方は中には入っては来れませんので、私達はこれから外で今か今かとお待ちになっております方々のお相手をしに行こうとしておる所です。
不謹慎ながらも、私にとっては病院内での仕掛け自体が予行演習という事で多少なり良いウォーミングアップになりました。
これからの事を考えて私は早く退治を致したくお爺様より先に外に出ようとした時に、外にいる『ミニスカお姉様』からテレパスが有りまして、
『あら、もういいの? 大した準備をしていないみたいだけど。』
と言葉以上に意地悪な感じの言葉が流れて来ました。けれど、どうも邪悪な感じと言うより本人なりの目的で彼女なりの役割をしている感じも受けとりました。
「ウォーミングアップステージをちゃんと用意して戴き、かつ大人しく外でお待ちになっておりましたから、あまり時間稼ぎはしたくないかなと思いましたので早速出ようかと。」
『・・・そうね。あんたのちんちくりんの妹もあんたもクソッタレな能力者だらけの仲介者の中では、私から見ても《まとも》な人間かなとは思っているのよね。
・・・ま、私の役目に関しては理解なさらなくてもいいので早速始めましょうか。
でも一つ言っておくけど、私は今日此処では戦わないわ。何しろこの後大事なお役目が有りますので、私はこの辺で失礼致しますわ。』
「あら、残念ですわお姉様。2年前羽馬でお姉様の事潰す事が出来なかったので今回潰せるかなと楽しみにしておりましたのに。
ご自身の事情があるかと思いますので、私はご用意された【お人形】で戯れさせて戴きますわ。」
『・・・ふ、せいぜい足掻いてくださいなデカブツさん。ではこれで。』
とミニスカおばさまは彼女の隣に居た化け物さんと一緒に自分が乗ってきた車で西の方面に向かって行きました。
おばさまとの会話が終わったので外に出た途端、今度は外で待っている集団の中で中央で偉そうに佇んでいる役人さんらしい能力者から姿通りのお言葉が飛び出て来ました。
「小娘、ようやく出てくるみたいだな。お前は此処で始末するからここで私の事を名乗っておく。一応大人の礼儀としてだけだがな。
私は国土交通省中央捜査局局長の須長永順だ。あの化け物女とは違い私は甘くはない。小娘、お前の事は此処で消す。それだけだ。」
あら、この須長というおじさん、確か2年前のあの現場でも居ましたね。去ってしまったミニスカおばさまよりだいぶ格落ちの能力者っぽいなぁと。
でも、そのおじさまの後ろにいる2体の【化け物】さんは明らかにこのおじさんや周りにいる化け物より格上の能力を持ってそうで、そう簡単には倒せそうに無いかなと。
軽くスキャンすると片方は理由は解りませんが頭の半分近く潰されているようで既に自分の意思自体が無さそうな感じです。ですからいつでもバーサーカーモードでフルコンタクトで戦うという感じかなと。
で、もう一体は・・・昨日の時点で既に誘拐されていて結果妹ちゃんらが助けられなかった子みたいですね。スキャンする前から感じるけど多分この中でこの子が一番強いですわね。
何しろこの子無意識に私ですらまだ出来ていない※1オートモードで術式展開もでき、体術でもブーストをかけているみたく相当スピードも有りそうですね。ただコンタクトパワーが子供という事で劣っている感じかなと。
でも、それも術式でいくらでも強化出来る・・・ぃゃもう既にしているという感じね。これはまずいですわ。
それにしてもこの子を『スカウト』してきた人間は有能かなと。あそこに隠れていた子供二人と昨日目の前で会った時にそこそこの能力は感じてはいたけど、これ程の能力はあの二人からは感じませんでした。
・・・ふむ、これは真面目に対処しないと駄目なパターンです。本当ならこの子を無力化して富士吉田にいる兄妹に会わせてあげたい所だけど・・・調整した人が有能だったみたいで安定してしまいもう戻せない感じです。
多分オペレート自体はあのミニスカおばさまが既に施しているから、そこのおじさまを潰しても止まりはしないかなと。
ならばと思いお爺様にテレパスで、
『お爺様、先程の打ち合わせの通り私は奥にいる強いの二人と邪魔になりそうなウォーキングデッドさんを退治するので、お爺様は手前にいる背広のおじさんと周りの非戦闘員の対処をお願いします。』
『わかった。儂もこれから結界から出る。』
『あと、朝日さんには脱出の段取りを指示しておりますので、私が東棟の非常階段下にいるウォーキングデッドさんの対処したら脱出するよう指示のほどお願いします。』
『じゃが、てるや其方の方に行くような余裕はなかろ。』
『ええ、その付近には行きませんけど既に術は準備しておりますので、私がコンタクトを始め次第術が発動するようになっておりますから脱出するだけの対処は出来るかなと思います。』
『わぁた。一応既に酒井は朝日と合流しておるから二人居れば大丈夫じゃろ。てる、お前さんは奥の化け物を討てい。』
と言ってテレパスを切られたので、私はこの病院に入る前に仕掛けておいた術を起動させると幾分かのウォーキングデッドさんが一瞬にして消滅してしまいました。
それらの様子を見ていた背広のおじさんは慌てて、
「な、なんだ。何をしたんだ小娘。」
と言いながら非戦闘員の方(白衣を着ていたので多分研究員かなと)と同じように周りをキョロキョロしていました。
このおじさん確かに能力者だけど大したことないけど・・・何かが隠れている感じですわ。
まぁ其方の方はお爺様に任せて私は後ろの二人と遊んできますか。
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蓬莱の妃 2章2節《火の章》
富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の2節目の作品でこの…
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