『僕のいた時間』
このドラマは、あの伝説の『ラスト♡シンデレラ』終了から半年後に放映されたもの。このドラマに取り組んだ理由として、春馬くんはこう語っている。
「こういう認知度の低い病気を、もっと世間に伝えていかなければ、といった正義感とか使命感はなかったですね。悔しいのに殴れない。優しくしたいのに抱きしめられない。そういう、動きたいのに動けないもどかしさとか、意識ははっきりしているのに、体がいうことをきかない歯痒さのようなものを、芝居で表現してみたかった。とにかく、何か難しい役に挑戦したかったというのが、正直な気持ちです」 ~三浦春馬が語っていた情熱「なぜ僕がALSの役をやりたいと思ったか」 インタビューも「生きた証」ライター 菊地 陽子
正直。正義感とか使命感で、もっと広めていかなければ、と思ったんです、模範解答としてそう答えることもできたけど、でも、春馬くんは、役者としての向上心からと正直に語っている。誠実な春馬くんらしい。
Youtubeで春馬くんの過去映像を追っていく中で、『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングに出ている映像を何本か観た。中でも、この『僕がいた時間』の番宣を兼ねて出演した春馬くんは、痛々しいほどに真剣にドラマへの想いを伝えていた。会場がシーンとするほどに。前述インタビューにあるように、とっかかりは「難しい役に挑戦したい」という気持ちだったんだろうが、真面目で優しい春馬くん、ALSについて勉強するうちに、生半可な気持ちでは演じられない、と考えたのだろう。実際の患者さんの気持ちに寄り添い、その方たちへの敬意を持って取り組んでいたことがこの『笑っていいとも!』の様子でもわかった。
他の記事に書いたが、古くからの親友がALSにかかってしまったこともあり、このドラマはかなりの思い入れを持って観た。親友と重なりかなり辛い場面もあり、時には嗚咽を漏らしながら観ることになった。
そういった私情は、今回は交えないことにし、純粋にドラマのレビューとして書いていこうと思う。
私は、『ラスト♡シンデレラ』を観た数日後からこのドラマを観始めた。まず、『ラスト♡シンデレラ』の広斗との外見の違いに驚いた。髪の色が変わったとか髪型が変わったとかそれだけではない。少し痩せて、表情から佇まいから、もうなにもかも変わっていて、わずか半年しか違わないのに、ほんとに同じ人!?とほんとにびっくりした。不思議と、広斗の時よりも小柄に見える。
そして、『君に届け』も既に鑑賞済だったので、相手役の多部未華子ちゃんとの関係性も前作とはだいぶ違っていて、そのあたりも興味深く観れた。
拓人が徐々に身体の自由を奪われていく様、絶望と恋人への愛情との葛藤、家族への想い・・・ほんとに見事に演じ切っている春馬くん。やはり、演技力は抜群だし、三浦春馬という個性を完全に消して、澤田拓人そのものが乗り移っている。
また、全体を通して、春馬くんの美しさが際立っているドラマだった。『ラスト♡シンデレラ』では、色気と可愛さをフルに使いこなしていたが、『僕のいた時間』では儚げで繊細な美しさがすごい。思いつめたアップのシーンが多かったので、白く美しい肌も、長いまつ毛に縁どられた瞳も、形の良い鼻梁も、きれいな形の赤い唇も・・・春馬くんの美しさをこれでもかっ!と見せつけてくる。でも、当の本人の春馬くんは、美しいなんてどうでもいいよ、と言ってるかのように、ぐしゃぐしゃになって泣いたり、感情を発露させて切れたり、それこそ全身全霊で拓人を生きている。
ALSを通してのヒューマンドラマではあるけれど、ラブストーリーとしてもすごく好きなドラマになった。
拓人とメグがだんだん惹かれ合っていく様子が、ほんとにキュンキュンする。最初に出かけた浜辺でも、夜の公園でも、拓人が「寒い?」って聞いてメグがうなずくと、「帰ろっか」って言われちゃうんだよね。三回目に「寒い?」って聞かれた時には、帰ろうって言われるのもうわかっているから、「ううん」って答えるメグ。ここで、拓人が自分のマフラーをメグに巻くんだっけ。この、好きなのになかなか相手に伝えられない気持ち、せつなくて懐かしくて、胸がきゅーんってなった。
心のスレ違いでギクシャクしていた二人が、バス停でメグの帰るバスを待つところ。バスが来たところに、拓人が熱い瞳で「帰っちゃうの?」と言う。バスに乗らないことを選んだメグに近づいて、メグの背丈が小さいからかがんでキスをする拓人。流れるRihwaの『春風』も効果抜群で、ハートをぎゅーっと掴まれて、胸が熱くなって、アラフィフなのに何回も戻して見ちゃった(笑)
続く、拓人の部屋のシーンも好き。バス停のキスのあと、メグお泊りしたのね。ベッドで二人眠っているところに、弟の陸人が不躾に入ってくる。「出てけよっ!!」って怒鳴って陸人を追い出したあと、布団にもぐってくすぐり合ってるのかな、「キャッ!キャッ!」てじゃれてるシーン。『ラスト♡シンデレラ』でも、さくらさんにくすぐられて「わーっ、やめてやめてっ!」て感じでじゃれてたけど、くすぐりと春馬くんがとても似合う♡おそらく、ほんとにくすぐったがりなんじゃないかな。
前半は、こんな感じで、拓人とメグのラブストーリーにときめきっぱなしだった。
後半は、グッとヒューマンドラマになっていくけど、それも見ごたえがあった。だんだん痩せていく春馬くん、ALSの病状もリアルに表現していて、ドキュメンタリーを見ているよう。愛する恋人も失い、両親からもちゃんと自分を見てもらえない。弟は、ひとの気持ちがわからないから、鋭く傷つくことを平気で言ってくるし。救いは親友のまもちゃんだったね。この、風間俊介くん扮するまもちゃん、ほんとにいい味出していた。拓人のことが大好きで、拓人に寄り添い、いつもそばにいて。自分の弱みも拓人への気持ちも、包み隠さず表すまもちゃん。わたしは、今まで観た風間俊介くんの中で一番良かったと思っている。
人工呼吸器をつけない決断をしようとしている拓人に向かって、まもちゃんが懇願するシーンは、一番つらかったな。
「死なないでくれよ!生きていてほしいんだよ!」
春馬くんがいなくなった後のワイドショーで、MCをしていた風間君が、このセリフのことを言っていたのを見た。その時は、まだこのドラマ観ていなかったけど、のちに「このセリフだったのか」と思った。このシーンは、嗚咽を我慢できなかった。
私は二人の子供を育てる母親でもあるから、原田美枝子さん演じる拓人のお母さんを見て、いろいろと学ぶところも多かった。医者の妻として、跡取りを育て上げなければいけないプレッシャーから、息子たちのほんとの姿を見失い理想を押しつけてしまう。最終的には、野村周平くん演じる陸人から、「僕の人生から出て行ってください!」と言われてしまう。ああ、そういうところ、少なからず私もあるのかも・・・。その人の人生はその人のもの。親であっても、コントロールしてはいけないもの。心に留めておく。
『僕のいた時間』を通して、私が受け取ったメッセージ。自分のそのものを受け入れること。そして、他人を受け入れること。そうすることで、いろんなことが変わっていく。前向きに。
ん?待てよ。これは、『キンキーブーツ』の6ステップにあったような・・・。
1.真実を追いかけること。
2.新しいことを学ぶこと。
3.自分を受け入れ、他人も受け入れること。
4.愛を輝かせること。
5.プライドを掲げること。
6.自分が変われば世界が変わる。
ていうか、これらすべてを既に『僕のいた時間』が教えてくれていない?
今気づいた!春馬くん、既にあなたは6ステップを見せてくれていたよ。
やはり、このドラマは大好きなドラマ。私に必要なドラマ。
FODの動画配信で観たんだけど、やはりDVD買おう。
いただいたサポートは三浦春馬くんの作品鑑賞や媒体購入に充てさせていただき、更なる春馬くんへの愛につなげたいと思います。