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こんな素晴らしい才能があったのか〜東京ステーションギャラリー「宮脇綾子の芸術」

「東京駅周辺美術館共通券」について紹介しました。それに含まれているのが、東京駅丸の内北口にある、東京ステーションギャラリー。現在開催されている展覧会は、「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」です。

宮脇綾子、無知な私は全く知りませんでしたが、共通券に背中を押されて観てきました。素晴らしかった!

宮脇綾子は、戦後40歳にして、本格的な創作活動をスタートします。彼女の手法は、古裂など、使い古された布を使ってのアップリケです。アップリケというと、子供の頃に布の袋に、母が貼り付けたものを想像するのですが、まったく違った次元のアート作品です。

本展の第1章は「観察と写実」。ここで、宮脇綾子のモノを見る目に驚きます。西洋画には静物画というジャンルがあります。植物・食品などの自然物や、食器などの“モノ“を観察し、まるでそれらがそこにあるかのように、絵画として再現します。

西洋の巨匠同様、宮脇は自然物を中心に鋭い観察眼で見抜き、それをアップリケという手法によって再現します。それは、絵画では表せないような、対象物の本質を表しているように見えます。さらに、布や紐・糸を使うことで、絵画にはない質感を出しています。

写実という枠組みを超えて、彼女の作品からはそれぞれの対象物がもつ“生命“の強さが発信されています。そこにはユーモアも込められており、見るものを楽しませるのです。展示されている彼女の作品に「鴨」(1953年)がありますが、仕留められこれから食肉になろうとする鴨の体温まで感じられます。と同時に、愛らしさも滲み出ています。

野菜の断面図が多く展示されていますが、こういった自然の美しさについても、再認識させられます。さらに、「さしみを取ったあとのかれい」。確かに、魚の骨のフォルムもアートであり、そのアイデアは「クスッ」と笑わせてもくれます。

“生“という意味では、宮脇はどんな古い布にも生命が宿っていると感じていたのではないでしょうか。そうした“生命“が、“生“を表現する。そこに、私はとても強い力を感じました。

もちろん、そこには素晴らしい彼女のセンスがあります。「鰈の干もの」(1986年)という作品は、カレイの姿を使用済みのコーヒーフィルターで表現し、背景は古い柔道着です。

1979年の「鶴亀模様の鯛」は、鶴亀が描かれた藍型染の布で、鯛が表現されています。鯛の胴体に鶴が顔を出し、亀甲模様がのります。これが、見事に調和していて素晴らしい!

どれも写真では再現できない、アップリケならではの作品群。現物をご覧にならないと、これらの素晴らしさはなかなか理解できないと思います。

共通券のおかげで、新たな発見をしました。世の中、まだまだ知らないことだらけ。

宮脇綾子展、おすすめです!(3月16日まで)


なお、東京ステーションギャラリーでの共通券販売は、1月25日から始まったようで、まだ宣伝ポスターが貼られていました


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