劇場で再会した藤本タツキ「ルックバック」〜その素晴らしさに涙
調べてみたら2021年のことだった。藤本タツキのマンガ「ルックバック」を読んだのは。「チェンソーマン」などで知られる作者が発表したこの長めの短編は、各所で話題になった。私も、その素晴らしさ、短い作品の中に込められた深いものにいたく感動した。
その「ルックバック」がアニメ化された。新聞だかで目にし、これは観に行かねばと思っていたが、このところ色々立て込んでいて忘れていた。そんな時、「ラジオビバリー昼ズ」水曜日の担当・乾貴美子が、オズワルドの畠中から勧められた「ルックバック」をほめていたのを耳にし、「そうだそうだ」と思い出した。乾さん、畠中さん、ありがとう!
完璧な映像化作品である。私はアニメからは距離を置いていることもあり、むしろ「ルックバック」の動画版と呼びたい。
あのマンガの世界が、動きと音を伴って再現されている。
学級新聞に四コマ漫画を連載する女子・藤野。教師からの依頼で、引きこもり児童・京本の作品も一緒に掲載することになるのだが、藤野は京本の画力に驚く。そして、いつしか二人は共同作業を始める。その先には。。。。
長く奥深い物語を、短く凝縮されたマンガが、同じように約1時間という尺に収められている。藤本タツキの絵のタッチが忠実に表現されているだけではなく、短い時間の中で鑑賞者の気持ちが大きく揺すぶられる、その感動もみごとに反芻される。
私は泣いた、またもや。原作を読んでいたので、予感はしていたのだが、それは的中した。
藤野の声は、「不適切にもほどがある」の河合優美、京本は吉田美月喜、この二人も良い。音楽も素晴らしい。
監督は押山清高。前述の通り、私は詳しくないのだが、「ヱヴァンゲリオン新劇場版:破」(2009年)、「風立ちぬ」(2013年)といった、私が観た作品に参画したらしい。原作者藤本のコメントには、<アニメオタクなら知らない人がいないバケモノアニメーター>とある。
この「ルックバック」は、発表当時から京都アニメーション放火事件との関係が言われた。7月18日で、事件から5年が経過、メディアでの報道をいくつか目にした。
原作者・藤本タツキ、アニメーター、本作品を作成したスタッフ、さまざまな思いが「ルックバック」込められているだろう。
マンガ家はなぜ作品を描き続けるのか、アニメのクリエーターは、なぜ映像を紡ぐのか。
1時間という短い時が確保できれば観ることができる。是非「ルックバック」を劇場でご覧頂きたい
*なお、入場者特典として<Original Storyboard 原作者・藤本タツキの原作ネームを全ページ収録>が配布された(先着順、なくなり次第終了)。“ネーム“とは言っても、ラフな絵ではあるが、普通にマンガになっている。台詞は単行本版に修正されているが、主人公たちの名前が、三船・野々瀬となっている。単行本と見比べてみるのも面白い。
7月26日からは、<押山清高監督セレクション ルックバック原画シート ポストカード仕様(8種)>が配布される予定