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2024.3.17(下高井戸の日)

下高井戸に来ている。三月末で「下高井戸駅前市場」が閉まってしまうというので、今のうちに見ておこうと思ったのだ。けっこう待ちの長い京王線の踏切を越えてついてみると思ったより小さな建物であった。来るのが遅すぎたか、残念ながらほとんどすべての店がすでに閉店していた。けれど細部を見ていくとかなり歴史のある場所であることがうかがえた。

たとえばこのドア、戦中からあったんかと疑うくらい堅牢なつくりだ

あたりには俺と同じ目的で来たと思われる人がちらほら写真を撮っていた。気を抜くと彼らのフレームに入ってしまう。写真をやっている従兄弟の投稿を思い出す。

むずかしい言い回しだなと思うが、おれ自身写真を撮ることにずっと気恥ずかしさのようなものを抱えていて、無造作に(たとえばおれの父が自分の物件の状態を確認するためだけにそうするときのように)撮るというのがクセになっている。自分はここに来たという記録を残しておきたいだけで、作品になんかしようと思っていませんよ、と自分に言い訳をしてるような感じ。

まあ、そんなこんなでうろついているとトイレに行きたくなり、下高井戸のコロラドに来ている。もともと喫茶店をいくつか見てみようと思っていて、コロラドは(チェーンだし、いつも最寄りのところには行っているし)優先順位としては低かったのだが、やはり悪くない。今カフェ・コロラドはドトールの系列店として営業しているはずだけど、コロラドはコロラドでもっと前から営業していたと思われる。ここでは席でタバコを吸えない。喫煙スペースが設けられて完全分煙だ。そのせいか、ランチメニューがけっこうあるからか、子供連れも多くて、昔のファミレスみたいな雰囲気をかもしだしている。わりと広い店だが満員。次々とお客さんが来てはいっぱいですと言われて去っていくので、4人がけの席を一人で占領しているのがなんだか悪い気になり会計を済ませて出た。

一時間ほどうろついていたらまた腹が痛くなり、今度は「ぽえむ」という喫茶店に来た。便意に動かされている。

昼にはあるラーメン店に入った(そのせいで腹が痛いわけではない)。化学調味料不使用のうえ小麦やメンマにもこだわったというふれこみで、事実美味しかったけれど但し書きに「スープはもちろん、麺を茹でる湯にも、下処理にも○○水を使用しています」とあり、お、と思って調べてみるとやはりマルチ商法の関係らしい。あらら。腰が低くて人の良さそうな店主だった。だまされているのだろうか? まあ、要はミネラルウォーターというか…ミネラルウォーターではないのかな? ミネラルウォーターって、ミネラルが多く含まれているからミネラルウォーターなわけだろうし、そうでない、ああいう「売ってる水」って総称してなんというのだろう。ボトルドウォーター? まあ、水道水よりは「いい水」なんだろうから良いかな、と思うことにする。

前に住んでいたところにも例のアクアなんとかという水を売らされている昔ながらの床屋さんがあったな。

まあ、とにかく、今も喫茶店にいる。店名は先も書いたが小さなチェーン店だ。全席禁煙。西小山に同じ系列の店があって、それが良さそうに感じていたけど知らない間に閉店していたので、取り返すようなつもりで来た。思ったより普通にチェーン店っぽいかんじ。でも地元の女性たちが社交場に使っているのか、その賑わいというか雰囲気はいい。ブランデー風味のコーヒーにクリームをのせた変わったアイスコーヒーがあったので頼んでみる。ふつうにおいしい。

下高井戸を歩くのは初めてだけど、全体として、住んでいる人がきちんと回している街という印象をうけた。近い範囲に喫茶店が3軒もあり、それぞれが社交の場として機能している。昔儲かったであろうローカルな居酒屋や寿司屋がビルを建て、一階でたい焼き屋をやったりしている。なんかそういうところにこの街の歴史の現実感がある。

日大があるというのもあるし、京王線の乗り換え駅というのもあるんで、まあ厳密には地元民ばかりではないのだろうけど。…今住んでいる街が地に足のつかない喫茶店や服屋だらけになったらこのあたりに住むのもいいかもしれない。あるいは小田急沿いのどこか。

3時半にはこのあたりにある銭湯が開く。それまでこうやって時間を潰すつもり。出たら帰るかな。それかせっかくだから下高井戸シネマで映画を観ていくか…。うーん。

さっきのドアのところ。なんかの倉庫か?
こういうインスタをやっている人は100%この建物を撮るだろう
登ってみたい
自主米(とは?)
一山当てたらしい居酒屋のビル。あとからあとから装飾を増やしたらしいいびつさがおもしろかった。たいやきは人気らしく、持った人がそこらを歩いていた
いい八百屋
健康器ホーリークルクル。ググったが、全く同じ看板を撮って同じように疑問を持っている人の投稿しか出てこなかった。

踏切を渡る時に地元の京急線からの景色を思い出した。線路に面した店は表は石造りとか煉瓦造り風だったりするけど、裏側はむきだしのトタンだったりする。芝居のカキワリの裏側を見てるみたいだといつも思う。

銭湯に行ってきた。開店前からけっこうな人数が並んでいたし、入っていても次々入ってきて満員。ぬるめで入りやすいが熱い風呂も用意されていて、きれいで、人気も頷ける銭湯だった。そもそも昔からたくさん客のくる銭湯なのだろう。

色々行きすぎてもう記録の体をなしはじめた。電車に乗る前にふらふらと歩くとまたオールドスクールな蕎麦屋があってうれしくなる。あと、クラフトビールを店内で飲める酒屋があったのでちょっと寄ってみた。

個人的にはまあまあ。
見た以上に大きな店で、隣のビルだと思っていたところまで店舗だった。こういう店が残ってると「いい街だなあ」と思う。
公園を横目に世田谷線沿いを歩いてみる
遠慮してカウンターに坐ったらテーブル席を案内された。なんとなく喫煙席という扱いなんだろう。

隣の松原駅まで来ると、席で煙草が吸える喫茶店があった。というかそれを目的に歩いたら松原についた。そういう「煙草が吸える喫茶店」のマップを入れてるのだ。今日は喫茶店を三軒もまわっている。だから腹を壊しているんだと思う。コーヒーを一日4杯も飲んでるから。なんか既視感がある風景だと思ったら、今の家を見に行った時に不動産屋についでに案内されたマンションがあった。喫茶店は、そのとき「僕も住んでたんですが、めっちゃ美味い町中華ありますよ!」と紹介された店の隣だった。

電車付きの異常マンション

総じていい一日。仕事変えたりとかしたら下高井戸あたりに引っ越してもいいなと思った。世田谷といってもいろいろで、渋谷から近いほどに若い人が若い人向けにやってる「趣味のいい」店が増えてくる。池尻大橋などはまさにそういう感じになっている。再開発後の画一的な風景よりはましだが、そういうのも大概疲れるっていうか、自分には合わないので逃げたいのだ。

歩くうち豪徳寺に着いた。下高井戸あたりを見てからだとちょっと違って見える。あのあたりからの延長っぽい感じと、小田急線の駅前らしい感じのミックス。とはいえここから先はいつも通る道にしかならないので、電車に乗ってスキップ。帰ります。

この店がある時に来てみたかったな

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