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著…内田広由紀(視覚デザイン研究所)『巨匠に学ぶ構図の基本』

 ●世界中の名画に似せて、けれど絵のモチーフの配置や背景や色調などを変えたものをa。
 ●オリジナルそのままのものをb。

 として、aとbの違いを見比べようという本です。

 名画と呼ばれる絵は世界中に数え切れないほどありますよね。

 では、なぜ人々はその絵を見て惹きつけられるのか?

 その謎のヒントとなる本だと思います。

 また、本を読むという行為は基本的に一人でするものですが、この本であれば「ねえ、aとbどっちが好き?」「bだけど、あなたはどう?」という風に周りの人たちと一緒に読むことも出来そう。

 例えば、P12~13で紹介されている、葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』について。
 「リアルな波の高さってあんまり高くないよね。高くってもこの程度だよね」と言わんばかりのa。
 「どうだーっ!!富士山より超特大の波をしかと心に焼き付けよ!!」と言わんばかりに波の高さを高ーくデフォルメしたb。
 見比べるとbの方が断然迫力があります。

 また、例えばP74~75で紹介されている、ムンクの『叫び』。
 人物のみにズームアップしているため、この人物が叫んでいるだけにも見えるa。
 人物を小さく描き、この人物の置かれた世界をぐにゃりと歪ませることで静かに狂気を醸し出し、「この人物は何か恐ろしいものに苛まれているのかも…」と想像を掻き立てるb。

 ほどんどの例について、aは平凡、bは非凡、という印象です。

 ただ、aは美しくない、というわけではありません。
 「むしろaの方が均整が取れていて好き」だという方もいるでしょう。
 aは穏やかで安定しているものばかりです。

 けれど、敢えて大胆にデフォルメする勇気を持って、けれど決してごちゃごちゃせず、何が主役なのかちゃんと伝わる構図となるよう工夫が凝らされたbにやはりわたしは魅力を感じます。
 bは見る度に新たな発見があります。

 また、

 「私たちは右側に重心があると落ち着いた気持ちになります。反対に左に重心を置いて視線を右に流すと不安な気持ちになります」

(著…内田広由紀(視覚デザイン研究所)『巨匠に学ぶ構図の基本』 P42から引用)

 「顔の前方を広く取るのが構図の基本型ですが、逆転してみると不思議さが表れます」 

(著…内田広由紀(視覚デザイン研究所)『巨匠に学ぶ構図の基本』 P111から引用)


 という文も勉強になりました。



 〈こういう方におすすめ〉
 趣味や仕事でデザインや絵画と接する方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間前後くらい。

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