彼はやっぱり「恋の大泥棒」？

　わたしは毎年３月末に、とある業務を行っています。

　２月に前倒しで行うのはダメで、必ずこの３月下旬から始めて３月末日までに終える必要があります。

　色々な書類を書かないといけないので、地味だけれどなかなか面倒な業務。

　わたしは今回も、それに取り掛かろうとしました。

　すると、Yさんの上司の佐々木さん（仮名）が、

　「今年はそれ、Yさんがやるそうです😄」

　と教えてくれました。

　わたしがびっくりして、

　「えっ、どうしてですか？　いつも〇〇（わたしの職場）がやることなのに？　今回もわたしがやるつもりでしたが…。Yさんはお忙しいでしょう？」

　と聞くと、佐々木さんは、

　「Yさんが〝今年は自分がやります〟と言っていました😄✨」

　と言い、肝心の理由は教えてくださいませんでした。

　佐々木さんはただただ優しく微笑むのみ…。

　わたしは佐々木さんに「ありがとうございます。助かります」とお礼を言いましたが…。

　ふと、「ひょっとして昨年までのわたしの処理に不手際があって、もう任せられないという意味なのだろうか？💦」と不安になりました。

　しかし、後から調べてみたのですが、どうも以前のものにミスがあったわけでは無さそう。

　また、Yさんはいつも物凄く忙しい方なので、「たまたま手が空いていた」という可能性も低そう。

　Yさんがその業務をやってくださることによって、わたしは随分と気が楽になりましたし、退職までのラストスパートに向けて負担が軽くなりましたが…。

　なぜ今回Yさんがその業務をやってくださるのかが本当に謎です。

　Yさんはいつもわたしにすごく優しい言葉をかけてくれるし、ドアもサッと開け閉めしてくれるし、軽い荷物でも「自分が持ちます」と率先して持ってくれるようなジェントルマンなので、今回もそういう親切心からやってくださるのかもしれませんが…。

　わたしは「今回、〇〇（業務名）をしてくださると聞きました。ありがとうございます」とYさんにお礼を言うべきか、それとも敢えて言わないでおくべきか迷いました。

　偶然そうなっただけかもしれませんし。

　もしそうなら、わたしからお礼を言われてもYさんは戸惑うことでしょう。

　とはいえ、仮に偶然だとしても、わたしが助かるのは事実…。

　わたしはそうして判断を迷っているうちに、ついうっかりYさんの方を見てしまいました。

　そしてばっちり目が合って、Yさんはニコッ😊と笑ってくれました。

　わたしはドキーッ！😳　として、

　その場から逃走しました。

　…って、もう逃走しないって決めたのに！

　不自然な立ち去り方はもうやめようって決めたのに！

　つい足が…足がああぁ！

　…って、足は悪くありません。

　わたしの未熟さゆえの過ちです。

　…だってあの笑顔、反則なんだもの！

　ねえ、審判さん、反則ですよね？

　あのくしゃっとした笑顔、反則ですよね？

　Yさんが反則技「クール系の若い男性がふいに見せる無防備な笑顔」を繰り出したから、わたしはK.O.されて退場したんです〜！
　（ちょっと何言ってるか分からない）

　…わたしが自分の職場に帰って、同僚にその業務について、

　「今年はYさんがやってくださるそうです。多分うちが忙しいから気をつかってくださったんだと思います。ありがたいですよね😄　来年うちがする時は〜で〜を〜してください」

　と引き継ぎをしていると、

　同僚たちが、

　「ぎゃーやばい！😍」

　「仕事をカバーしてくれるなんておっとこまえ💕」

　「ちょっと！　おばちゃん血圧上がってきたんだけど！」

　「仕上げにかかってきたのかもね🩷」

　「粋だ」

　「どうしよ〜わたしがYさんに惚れそうなんだけど！」

　と興奮しながらわたしの腕をつかんできたり、肩をばしばし叩いてきたり、なぜか握手を求めてきたりしました。

　なんだかわたしの伝え方がまずかった気がしたので、

　「いえ、たぶんYさんにそんな意図はないと思います。いつも優しい方なので、心からの親切心で代わりにやってくださるだけだと思います。例年うちがやっている業務ですけど、別に〇〇（Yさんの職場）がやってはいけない業務ではないので」

　と訂正したのですが、すればするほど、

　「またまた〜💕」

　と、かえって同僚たちの萌える心❤️‍🔥に油を注ぐ結果に…。

　誰か、萌えを鎮火出来る消火器を持っていたら持って来てー！🧯

　…Yさんはまたしても大変なものを盗んでいきました。

　わたしの同僚たちの心です。

　どうしよう、恋のライバルが増えちゃった…！？😵