最近よく聞くエンゲージメントとは?時代背景、リレーションズとの違い、なぜエンゲージメントが大切か
主にビジネスシーンにおいて、エンゲージメント(engagement)という言葉を耳にするようになりました。例えば、カスタマーエンゲージメントや従業員エンゲージメントなどです。
しかし、エンゲージメントの具体的な意味となると、なんとなく分かるような分からないようなモヤモヤがあるかもしれません。そもそも外来語ですし、カスタマーや従業員といった文脈でエンゲージメントという単語を使うことは、欧米でも比較的あたらしい概念です。
巷でよくある解釈として「婚約、約束、契約」が挙げられます。たしかに、婚約指輪のことをエンゲージメントリングと呼ぶことがあり、日本人にとっては婚約という意味合いでのエンゲージメントが最も馴染み深いかもしれません。
ただ、英語では一つの単語が多様な意味合いを持つケースがあり、例えばエンゲージメントには、交戦あるいは武力衝突という意味もあるのです。
広い視点から始めると、エンゲージメントには「接点」や「関係性」という要素があります。婚約や交戦からも見受けられるように、感情がこもっていたり、温度感が高い「接点」や「関係性」です。
「関係性」の観点から考察してみると、類語としてリレーションズ(relations)という言葉があります。実際、カスタマーリレーションズという表現もあり、ご存知の方もいらっしゃると思います。「カスタマー(顧客)との関係性」という意味合いとなり、関連する言葉として顧客関係管理システムのCRM (Customer Relationship Management)もあります。
カスタマーリレーションズの発展形が、カスタマーエンゲージメントといっても差し支えないでしょう。時代とともに関係性にたいする考え方が変化してきたのです。
大きな変化の一つがインターネットとSNSの普及です。感情をともなう情報を、瞬時に双方向でやりとりできるようになりました。データを活用してパーソナライズされた接点を築けるようになったことも要因です。
「感情や共感が伴う双方向の関係性」が、カスタマーや従業員といった文脈でのエンゲージメントの定義である、と言っていいでしょう。一方で従来のリレーションズは、原則として良好な関係性を築くことを目指すものの、そこまで感情や共感は伴わず、どこかドライな関係性です。
カスタマーエンゲージメントであれば、ブランドへの共感や結びつきが挙げられます。環境への配慮といったエシカルな消費など、単純にものを買っていた大量生産・大量消費の時代は終焉し、人生の価値観にあった買い物をするようになってきました。口コミも簡単に投稿できるので、企業側も売って終わりではない、顧客に寄り添った関係性作りが求められます。
従業員エンゲージメントであれば、勤め先の価値観への共感、従業員の働きがいやライフスタイルへの配慮などが挙げられます。コラボレーションツールの普及によってリモートであっても共同作業したり、1on1など双方向の接点を持つ機会も増えてきました。特に働き手の人口が減少する中、雇用する側も従業員に長く勤めてほしいという思惑もあります。従業員の裁量を増やし、仕事と生活の両立をサポートするなど、より踏み込んだ関係性の構築が職場でも求められています。
また、環境保全やサステナビリティという観点でも、価値感や目標を共有して共感していくエンゲージメントが大切になってきます。個々人、企業、行政などの様々なステークホルダー(利害関係者)が協調するからこそ達成できるからです。
エンゲージメントを通して共創することで、あたらしい商品を作ったり、社会課題を解決したり、地域創生へと繋げていくことができます。また、相手への配慮が伴うので、職場であれば心理的安全性や従業員のウェルビーイングを考えるなど、総じて良い効果が見込めます。
エンゲージメントとは、結びつきや絆を深めていくことを、現代の社会構造やテクノロジーといった文脈の中で実践していくこととも言えます。
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