1銭も出ない内職とかやってます。
※少し文章を考えて訂正しました
子供の頃、お風呂掃除をすると、勉強机に500円の図書券が1枚置かれていた。
今考えると、そんな割のいいアルバイトはこの世にない。毎日やればよかった。
母親にしたら、500円玉をあげるのと図書券をあげるのでは、意味が違ったのだろう。しかし私にしてみれば、欲しいものがたいてい買える紙きれ、つまりお金とほとんど同義だった。
現在は図書券の発行が終わり、書店で買えるのは図書カードのみだ。アンケートの謝礼などで使うのか、出版社が図書カードをまとめ買いすることがある。「御店でたくさん買わせてもらいましたよ!」などと声を掛けられれば、もちろんその気持ちがうれしいのだが、ふと思う。
利益が5%ってことを、知っているのだろうか。
これは別に、知らないことを責めるとかそういうことではないのだ。
ふと思った理由はうまく言葉にできない。
物をお店で売るには、場所代も電気代も人件費もかかるから、5%しか利益がない商品を扱うことはあんまりないと思う。
その図書カードで本を買ってもらえた場合、確かに本の分の利益はいったん出る。だが、そこからは手数料として図書カードの会社に5%支払わなければならない。つまり図書カードを売った利益がきれいに消える。その消える瞬間を目の当たりにしたことはないが、そういうもんだと知ったとき、おぉ、と思った。お店屋さんというのは、どんなにきれいなことを言ったって、利益を生まなければ存在できない。だからそこは確実なものだと信じ込んでいた。でも、案外利益というのは儚い。その、おぉ、だ。
目と鼻の先に金券ショップがある書店でも、図書カードは必ず売れる。あちらではちょっとだけ安く買えるのにもかかわらず。
それは、贈り物用に包む無料サービスがあることが大きいだろう。図書カードの需要は、断然自分用より贈り物用である。
薄っぺらい物で何かをきれいに包むという能力が著しく低い私にとっては、とても苦手なお仕事のひとつだった。料理はわりと得意だが、包んだワンタンは火にかけると必ず皮と実に分かれる。人にはどうしてもできるようになれないことがあるのだ。
今から500円と1000円の図書カードを300枚ずつ買いに行くので包んでおいてね、という注文が入ると、売り場のスタッフが作業を中断し、休憩室でカップラーメンを啜っていたスタッフが駆り出され、月報作成中の店長まで加わって、一斉にワイワイ内職が始まる。約1名、足を引っ張るが、この中身は何千円の図書カードです、みたいなあんちょこ付箋を作って貼ったりすることはできる。
忙しい忙しいって、一体何やってんの?本屋なんてハタキかけるくらいでしょ?と書店員じゃない友人に言われたことがある。
1銭も出ない内職とかやってます。
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