D-Global採択と、このシーズに決めた理由
D-Globalに採択されました
今年の3月からANRIにおいてEIR(客員起業家)として活動してきまして、最初の3ヶ月はひたすら技術シーズ探索を行なってきました。
その中で、「シリコンナノ粒子による"0次元構造色"」という技術シーズに壮大なポテンシャルを感じ、この技術の事業化に向けた活動を5月後半あたりから本格的に行なってきました。
このたび、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)主導の「D-Global」という大学等発のディープテック創出を前提とした創業前の大型助成事業に申請し、採択されました。
直近2-3ヶ月はひたすらこのために準備をしてきたので、ホッとしています。
これでスタートラインに立てました。
D-Globalでの活動予定
D-Globalの目的は、「社会・経済に大きなインパクトを生み、国際展開を含め大きく事業成長するポテンシャルを有するディープテック・スタートアップの創出」です。最大3年間となっており、この期間の中で技術開発課題と事業開発課題をクリアし、起業→資金調達→飛躍的な成長を目指していくものです。
僕個人の方針としても、このD-Globalの目的と完全に合致しています。ディープテックスタートアップというチャレンジングな山登りのスタートを切らせてもらえることに感謝しなければなりません。
ただ、3年間ありきではなく、できる限り短縮して起業に繋げていくことを目標にしています。
このシーズに決めた理由
まずはこの「シリコンナノ粒子による"0次元構造色"」について簡単に説明します。
「色」は大きくわけて2種類です。
・色素色・・・普通の色です。人間の肌、自動車のカラー、食品、パッケージなど、あらゆるものがこれに当てはまります。「一般的な色」です。
・構造色・・・一部の生物がこれによって色を出しています。特に有名なのが世界一美しいといわれるモルフォ蝶です。タマムシやクジャクなども構造色によって美しい色を放っています。その他、シャボン玉やCDの裏面なんかも構造色です。
色素色の弱点は、色素は紫外線等によって劣化すること。看板や印刷物の色がどんどん剥げる(退色する)のはみなさんご存知の通りかと思います。
これに対して構造色は、色素ではなく微細な物理構造によって発色するため、原理的に退色せず、物理構造が壊れない限り半永久的に発色し続ける。実際、1億年前のアンモナイトの化石の表面が構造発色している例もあります。
ただ、構造色にも弱点があり、それが見る角度によって色が変わる”角度依存性”。遊色効果ともいわれるが、CDの裏面がギラギラしているのが最もわかりやすい。意匠性の面で特徴的ともいえますが、一般的な色として使うには不適。町中の看板や家がギラギラしていたら嫌ですよね。
この構造色のメリットをそのままにしつつ、弱点を克服したのが、"0次元"構造色。これは色素色、構造色にならぶ”第3の色”といってもいいものです。光の共鳴という原理を使う"共鳴色"です。
この技術は、神戸大学工学研究科の杉本准教授が開発したものです。元々量子ドットなどナノレベルの光学材料の研究をされている中で、シリコンによる構造発色の発明に至ったと聞いています。
この技術のすごいところは、単純にグレードアップした構造色であるというだけでなく、コストや環境負荷の面でも優れており、30兆円ある塗料市場を大きく置き換えることができる、つまり文字通り"世界を塗り替える"ことができるポテンシャルを持っています。
これが私がこのシーズに自分の人生を賭けようと思えた理由です。
(実際の技術シーズ選定にあたっては、15個のクライテリアを設定しました)
もちろん技術以外の部分もあります。僕の母校である神戸大学の技術であったことや杉本准教授とのコミュニケーションに全く不安感がなかったことなどです。
このような技術シーズに巡り合えたことはまさに僥倖といえるものです。
目指すこと
"塗料ベンチャー”と聞くと、「なんだ地味だな」と思われるかもしれません。
しかし、実は塗料の世界市場は約30兆円規模です。あのリチウムイオン電池が約10兆円、半導体が約100兆円です。
にもかかわらず、世界的にみて"塗料ベンチャー"というのはほぼ皆無です。非常にestablishされた技術・市場であり、参入ハードルも当然高いです。
しかしながら、
・市場規模が巨大
・日本の強い素材分野
・日本には塗料関連の裾野産業が存在している
・世界的にみてレアな存在
といったように、技術シーズの強さ・面白さ以外にもユニコーン・デカコーンにしていくために有利な要素が揃っていると感じています。
狙う市場
この材料はポテンシャルがありすぎて、私自身も全てのポテンシャルを把握しているわけではないです。その中でまずは3つのアプリケーションへの導入を目指します。それは、
①モビリティ塗料(航空機・自動車)
②化粧品
③特殊インク
です。それぞれ、この材料でしか解決できない課題が沢山あります。
さらに、どこまでの領域を自分たちで行い、どこからを他社との協業や外注で対応していくのか、そのためにはどういったことをやっていかないといけないのか、などこれから解決していかなければならない課題が山積しています。場合によっては、他の大学発技術シーズをさらに導入させてもらうといったことにもなろうかと思います。
というよりは、私自身は「3Mのような会社を作りたい」ので、当然そのような方向になっていくだろうと思います。
登るべき山は決めた これからは誰と登るか
幸いにもD-Globalに採択されたため、今後少なくとも1年は研究開発をメインに取り組んでいきます。それとともに事業開発と起業に向けた諸々の準備を行なっていくことになります。
そこで、この段階から研究開発や事業開発に取り組み、創業時の中心メンバーになってくれるような人を募集しています。
「社会・経済に大きなインパクトを生み、国際展開を含め大きく事業成長するポテンシャルを有する」という国からのお墨付きのあるプロジェクトで、"世界を塗り替える"ことを本気で目指していきたい方はぜひXやLinkedInからメッセージをください。
僕の好きな言葉 "What starts here changes the world" を体現していきます!