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【第十一夜】『スワン家のほうへ』夜話 – プルーストの処方箋

ミサから帰る途中、私たちはよくルグランダン氏に出会った——

ハナは話をはじめた。◆

「いろんな献立をずらっと並べたててるところ、やっぱり楽しくなっちゃうよね。ここの喩えもなんか好き!」

私たちの献立は、ちょうど十三世紀に各地の大聖堂の正面扉口に彫られた四つ葉レリーフのように、四季のリズムと人生のエピソードを反映するものとなっていた。

「なんだかほんとにおなかいっぱいになっちゃうよね。デセールまできっちりあるし。おなかがいっぱいって断ったら不作法者の烙印を押されただろうってなんか大袈裟で、可笑しいよね。
でもここは、料理とかの味覚とか嗅覚で記憶がよみがえってくるんじゃなくて、日曜のよくある出来事を軸にいろんな登場人物が現れては消えて、アドルフ叔父さんとある事件についてエピソードにつながるところなんだよね」

「いろんな人が出てくるわりには、小さいエピソードが続いてるよね」

「むしろ、コンブレーにある教会が中心で、そうした場所とか建物から記憶がよみがえってる感じだよね」

「なるほどね! この献立もコンブレーのある舞台のテロワールが反映されているのかもね」

「おー、それは思いつかなかったな。ひょっとしたらそうかもね……」

◆——そうしてハナはゆっくりとまぶたが閉じていくのを感じながら、眠りに落ちていく。

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