【第四十五夜】『花咲く乙女たちのかげに』夜話 – プルーストの処方箋
「主人から聞いたのでございますけれど——
今夜もハナは話をはじめた。◆
「このあたりはノルポワ公爵の独壇場だけど、聞きたかった話題もあったりして面白く読めるね」
「スワンさんとオデットさんの結婚の方? それともベルゴット評の方?」
「まあそれはやっぱり結婚の方だけど、その経緯まではまだ語られてないもんね。もうちょっと詳しく知りたい感じ。
でも、まわりはいろいろ評判をたててるけど、スワンさんはちゃんとオデットさんのことを大切にしているようだからちょっと安心」
「コンブレーの司祭さんも話の長い男だったけど、ノルポワ公爵は外交官だけあって、気配りしながら話してる感じが出てるよね」
「ほんと、司祭さんの話はつまんない先生の授業みたいですっごい長く感じたもんね」
「あと、引っ込み思案なくせに、なんとかノルポワ公爵から聞きたい話を引き出そうとしてるところも、ちょっとかわいいよね」
「そう、たまたまなのかもだけど、最後はちゃんとジルベルトちゃんと会えるように話を持っていってるしね……」
◆——そうしてハナはゆっくりとまぶたが閉じていくのを感じながら、眠りに落ちていく。
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