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【選んで無職日記69】日記は前後しますが


2024/9/23

 今日は母の六十歳の誕生日だ。
 秋分の日なので毎回祝日だが、母の仕事は祝日が関係ないため夜ご飯でしか祝えない場合も多い。今回は父と母でChicagoのライブを見に行くというので一緒に便乗して東京に行き、そして誕生日当日何かしらの形で祝おうと思った。

 まずはホテル予約時にホテルに追加で依頼をして、花束を準備して頂くようにお願いした。還暦をイメージして真っ赤な薔薇を八本、飛行機に乗せても大丈夫なサイズにカットして下さい、誕生日当日の朝食会場で母に直接渡して下さいとお願いすると、快く応じてくれた。
 このサプライズを成功させるためには、まず朝食会場と時間を伝える必要がある。いくつかある会場の中で予約が必要な店もあるから、事前に席を取っておきたいのでどこがいいか決めて欲しい、と母に伝え和食の店に決まった。実際は予約の要らない店も中にはあったから、何か勘繰られる可能性もあるなと思ったけれども、そこは難なくクリア。あとは時間を伝えるために、ライブに行く両親を見送った後、ホテルに電話をして朝食会場の席を押さえてもらい、かつ花束をお願いしているので当日よろしくお願いしますとお伝えした。

 私はこういうサプライズ的なイベントがまあまあ好きだ。プレゼントも貰うよりあげる方が好きなタイプで、サプライズが大丈夫な人にはいくらやってもよいと思っている。誕生日なんか特にそうで、祝ってほしい人に対してなら何でもかんでもサプライズしちゃえばいい。昼食にイケてる外資系のホテルのコースも予約し、最後に"Happy Birthday"のプレートを出してもらうようお願いもし、いよいよ母の誕生日当日となった。

 朝八時に予約した朝食会場は和食オンリーなので和風の趣で、個室に区切られた部屋に案内してもらった。
 前日昼の十二時から夜の九時頃まで開催していたBlue Noteの音楽フェスに参加していた両親よりも、千駄ヶ谷から渋谷を練り歩いた私の方が体力的に疲労しており、しかもいつもこの時間にはまだ寝ているので、本物の寝ぼけまなこのままテーブルに着く。
 朝食会場についたら母にお花をあげてください、とお願いしていたので、ご飯が運ばれてくる前に花束が見られるなと思っていたら、お茶も水もプレートも全て提供されてしまった。お箸の包装紙には『祝』と書いてあった。
 もう少し念入りにホテル側とやり取りすればよかったなと後悔しつつ、朝食を運んでくれる方に目配せするもなかなか通じない。これは朝食を食べて店を出る時だな~と思いながら、豆腐やじゃこを口に入れた。
 昨晩遅くにおにぎりを食べたことも災いし、食欲があまりないまま店を出ることになったので席を立つ。最後に個室から出てきた私に、店のマネージャーらしき女性が「花束・・・」と小声で言ってきたので、お願いします、と伝えると、別の個室から小ぶりな花束を持ってきてくれた。
 そのまま母にお渡しいただけますか?と伝えると、私でいいんですか!?と返される。確かに。私が渡した方がいいに決まっているのに、眠さと疲労が相まってわけのわからない発言をしてしまった。多分席についてすぐ渡してほしい、という気持ちがまだ残っていたのだと思う。
 母はえっ!といって嬉しそうに花束を受け取ってくれた。本当はもっと沢山の赤いバラの花束を作りたかったのだが、空港まで持ち歩きやすいサイズでないと花も母も可哀想だ。
 最後、店前で家族三人で写真を撮ってもらったが、今見返しても寝起きで血糖値の上がっているモヨモヨの大人三人が写っている。

 その後十二時の昼食予約まで時間があるので、少し前に盛り上がっていた麻布台ヒルズを見に行った。こういうところに住み、生きる人がいるんだなと思う。
 東京は「緑を増やしております」という印象がある。バッキバキに高い建物をガンガン立てて、これでもかというデザイン建築を作り、その周りにほれ見ろというほど木や庭を造る。麻布台ヒルズも、メインが建物なのか草なのかよくわからない印象をうけるし、自然に生えているというよりは”生やされている”という雰囲気がある。建物と自然が一体となって景観ですよ!と押し付けられているような気分になって、見栄えは美しいがハリボテだなとも思う。

 その後銀座に移りウィンドウショッピングをして、時間になったので予約していたレストランに向かい、美味しい昼食を取った。初めていくホテルだったが人で込み合っており内装も美しく、人気なのだろうなと一目でわかるような賑わいようだったし、サーブも丁寧で配慮も素晴らしかった。
 美味しいご飯に舌鼓を打っている間、母が六十になるまでこうして健康に過ごせてありがたい、と話していた。私も本当にそう思ったし、これからも健康にこうしてたまに東京に行って買物したり、ライブに行ったりして楽しんで欲しいと思う。三十を超えて健康が気になる、というのは本当に本当の話なのだとつくづく思った。





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