見出し画像

美術館に行きづらいこと

 昨年コロナ過渡期の最中に、住まいを東京から地方に移しました。そのため今まではちょっと足を延ばせば日本の有名な美術館に行けたけど、今はそうではない。

 東京を離れる時の心残りの最たるものが、美術館に行けなくなることでした。友達と離れるのも寂しかったけど、本当に仲が良い子は距離があっても大丈夫だと思っている。その点美術館にある作品はそのタイミングを逃したら次にいつ出会えるかわからない。

 美術館には常設展と企画展という二種類の展示があって、常設展は基本常にその美術館に行けばその作品に出会えますが、企画展の場合海外の美術館は私蔵から借りて展示しているケースが非常に多いので「その日、その場」で出会わなければ、次にいつその作品にどこで会えるかわかりません。

 少しでも多く沢山の作品に出会いたいと思って展覧会に足を運んでいましたが、今はそれが難しい。もちろん距離的なこともあるけれど、美術館は人が多く集まる場所だから、このご時世に何も気にせず美術館に行くのも難しい。

 緊急事態宣言中に美術館自体の開館を取りやめているところも多く、そうなるとほとんど人の目を浴びないまま元居た場所に戻ってしまう作品も多かったはず。そして海外渡航もいつ前のように気軽に出来るかわからないので、自分から作品に会いに行ける機会も今後あるかわからない。

 そんな気持ちが作用してか、今は地元の美術館に歩いて行ける距離に家を借りているけど、やっぱり東京で出会える数とは違う。

 私が常設展で一番よく会いに行っていたのが、国立西洋美術館にあるカルロ・ドルチの「悲しみの聖母」

 初めてこの作品と出会った時から一目惚れで、上野で企画展があれば必ず会いに行く。聖母の濃いブルーが大好きです。キリスト教ではないけれど何故か敬虔な気持ちになってしまう。

 そういえば絵に対してよく「会いに行く」と言ってしまうのは私の癖ですね。見に行くというより、会いに行く。

 原田マハさんの「デトロイト美術館の奇跡」という小説の中で、美術館に友達(作品)に会いに行く、という文章があって、それを読んだ時に「これこれ!!!!!!!!私と同じ感情!!!!!!!!!」と思ったのを覚えています。

 何回も見たことがある絵なら、仲良しの友達に会いに行く感覚でまた会いに行こ~♡っていう気分。初めて会う絵なら、どんな人か知りたいという気持ちで作品と向き合う。今仲良くなれなくても、何年後かにまた話したら何故か意気投合した、というパターンもある。本当に人と同じ。

 最近この感情になれていないので、早く美術館に行きたいなあと思いながら美術検定の問題集を解く毎日。コロナ自体は多分無くなりはしないから、コロナがあっても皆が安全に暮らせて、安心して人が多い場所に行ける世の中になったらいいね。

いいなと思ったら応援しよう!