【選んで無職日記22】緑のコリドー
2024/8/8
内科に向かう途中、立体駐車場に車を停めた私は出口を間違えてしまい、病院の入っているビルの裏手に出てしまった。
ビル自体は見えているので急いで歩くと、レンガ造りの遊歩道が出てきた。色は薄くなっているものの大量に脇道に紫陽花が咲いており、その量に圧倒された。
その道を歩きながら、あることを思い出した。
小学生だったか中学生だったか、とにかく私が小さい頃、母が突然私に「街に住んでいる人たちが使える、屋根とかある道の名前ってなんだっけ?」と聞いてきた。
正直具体的に何と聞かれたのかははっきり覚えていないが、そういったような内容だった。その時それに該当する単語を知らなかった私は、ええなんだろう、なんだろうと思って小さい頭の中を巡らしていた。
「おじいちゃんが、”緑のコリドー”って言ってて、”緑のコリドー"って。コリドーで合ってるのかな?」
と母が言うので、コリドー、聞いたことあるなと思いながら、その言葉の語感の面白さのほうに意識が移ってしまっていた。
その頃、私の母方の祖父は市の観光大使をやっていて、まちづくりに心血を注いでいた。メインの駅前に大きな通りがあり、そこに”街に住んでいる人たちが使える、屋根とかある道”を作ろうとしていたか何だかだったで、それに英単語をつけようとしていたのだろう。
今考えれば”アーケード”なんじゃないかと思うのだが、その時の”コリドー”の響きがなんだか不思議で、今でも忘れられない。
「アーケード」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
病院の裏道は新しく、綺麗に整備されて花もたくさん咲いており、表通りに造ったほうがいいんじゃないかというような美しさだった。歩きながらその話を思い出した時、祖父もこういう道を作りたかったのかなあとなんとなく思う。具体的に何を作りたかったのかは聞かずのままだったが、緑豊かで行きかう市民が心安らげるようなまちづくりを目指していたのかもしれない。
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