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#3 公開質問状に対する回答を頂きました!(全文公開)

こんにちは。
気候変動を憂う10代・20代9名で、「#石炭火力発電を輸出するって本当ですか」と題し、ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業の輸出に関し、三菱商事、国際協力銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行に質問状を送りました。

↓経緯についてはこちらをご覧ください。

この度、全社から回答を頂きました。その回答に対する受け止めについてこのnoteで公開します。(回答全文は最後に掲載しております。)
まず、回答の公開が予定より遅くなってしまったことをお詫びします。そして、ここまで待ってくださりありがとうございます。

まず最初に、全社からご丁寧に返答を頂き、ありがたいと思っています。
私たちは気候変動を加速させる石炭火力発電を輸出することに対し、疑問を感じ、なぜこのような計画に融資が決定したのか企業の意図や背景を知りたいと思い、実施主体である三菱商事と融資を決定した(と報道された)国際協力銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行に公開質問状を送るというアクションを行いました。
真摯に私たちの疑問に向き合っていただいたことに感謝しています

以下に回答を簡単にまとめたポイントを提示します。
(全文を皆さんにご確認いただく前提で、私たちが抜粋しております。)

三菱商事回答の要旨・ポイント
①ブンアン2の取り組む意義は安定的な電力供給の課題解決を望むベトナム政府の期待に応えるため
②今後は新たな石炭火力発電事業には取り組まない方針、2050年迄には石炭火力発電から完全撤退する
③2030年迄に総資産あたりの温室効果ガス排出量を2016年度比25%削減する目標を掲げている
国際協力銀行回答の要旨・ポイント
①2016年日越首脳会議において決定した事業(ベトナム政府 2016年改訂 第7次電源開発計画)
②日本政府や相手国政府のエネルギー政策も踏まえて慎重に見極めている
③世界全体の脱炭素化に向け現実的かつ着実な道をたどるために、長期的な視点を持ちつつ、相手国の行動変容や気候変動問題へのコミットメントを促す
三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行
個別案件に関してはお答えいただけませんでした。銀行の全体的な方針についてはお答えいただいておりますので、全文をご確認いただければと思います。

回答を元にした新たな気づき・疑問点・論点

その上で、私たちが各社からの回答を拝見し、新たに認識した点や、回答を見た上でも、やはり疑問が残る点など、回答に対する私たちの感想を少しシェアさせてください。

①ベトナムの電力事情を踏まえた輸出事業の在り方とは

日本の「高効率な」石炭火力発電輸出が「CO2削減に貢献している」という言説は、経済産業省資源エネルギー庁の記事にもあり、そう考えている人も多いかもしれません。

しかし、日本の「高効率な」石炭火力発電だとしても、天然ガス発電など既存の他の燃料種と比較して石炭火力発電はCO2を大量に排出し、これが気候変動を加速させるという事実は変わりません。(環境省資料p25)

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気候変動対策を考える上で1.5度目標達成のために、IPCC1.5度特別報告書にある通り、2050年世界全体でカーボンニュートラルの達成が必要不可欠であり、また、ClimateAnalyticsのレポートにある通り、2040年までの発展途上国も含めた石炭火力発電ゼロ実現が必要であると考えています。

そして、私たちは質問状を送るまで、ブンアン2を計画、融資する企業らは、気候変動対策としてCO2を排出を削減する意図で「高効率」な石炭火力発電を輸出することを一つ目的としているのではないか、それは気候変動対策としては不十分なのではないかと考えていました。

しかし、三菱商事・国際協力銀行の回答では、このブンアン2石炭火力発電の輸出の計画に関し、気候変動対策として世界全体のCO2排出を削減するという意図よりも、ベトナムが求めている安定した電力供給への貢献が前面に主張されていました。
また、三菱商事の回答では、今後、新規石炭火力発電事業を行わず、2050年には石炭火力発電に関する全ての事業から撤退すると書かれているなど、気候変動対策を推し進める手段として石炭火力発電を捉えている訳ではないということが分かりました。

では、私たちは「石炭火力発電を輸出することが気候変動を加速させるという事実を認識しつつも、発展途上国の電力の安定供給は重要課題であり、この課題解決に貢献するためにこの事業の意義がある」という論理をどう受け止めればいいのでしょうか。

もちろんベトナムの電力供給不足に関し支援する必要がないとは言えません。むしろ積極的に支援する必要があると思います。
しかし、平均30年稼働する石炭火力発電を今から建設するということは、1.5度目標の目安である世界全体で2050年カーボンニュートラルの実現をまた一つ難しくするということです。

現在のベトナムの状況を考慮してという視点はとてもよく理解できましたが、気候変動対策の観点でまだ建設開始されていない本案件について、これがなぜ石炭火力発電でなければならないのか?安定した電力供給源として燃料種の変更の検討はなされたのか?という点について疑問が残りました。

②4年の変化にあわせて、本事業の計画見直しが行われることはないのか?

もう一点、回答から理解できたことは、ブンアン2の事業は、日越首脳会談で約束された国家案件であり、企業の判断だけでは後戻りができないのかもしれないということです。
国際協力銀行の回答によると、この事業の正当性の一つとして2016 年に改訂されたベトナムの「第7次電源開発計画」(2011 年策定)を根拠としたベトナム政府の要望があげられていました。

しかし、ベトナム政府は2020年に「第8次電源開発計画」を策定し、再生可能エネルギーの発電の割合を30年に32%、45年には40.3%に増加させると方針を変更しています。
ベトナムのズン副首相は2020年8月、計画策定に先立ち、追加で新たな石炭火力発電所の開発計画を実施しないとの意向と示し、当面はガス火力発電所の開発を進めるが、今後は再生可能エネルギーへのシフトを図る方針を出しています。(The Saigon Times Vietnam to stop new coal-fired thermal power projects in 2020-2030)

2016年時点と比較しても、その当時はまだ想定できていなかったのかもしれませんが、ベトナムでは再生可能エネルギーのコスト低下が起きており、Carbon Trackerの試算では、2022年つまり来年以降には、既存の石炭火力発電所を稼働させるよりも、新しい再生可能エネルギー(太陽光・陸上風力)を建設する方が安価となっています。(Carbon Tracker(2019)Here comes the sun (and wind))

国家案件ということで、この計画に関して中止の決定を下せるのは企業ではなく政府なのかもしれません
2020年10月に菅首相が2050年にカーボンニュートラル社会を実現すると発表しましたが、石炭火力発電の輸出支援はベトナムの脱炭素化を遅らせます
カーボンニュートラルを宣言する以前の安倍政権と方針が異なることもあると思います。ベトナム政府ともう一度この件について話し合あうことはできないのだろうかと考えました。

③目指すべきは、低炭素ではなく脱炭素社会の実現

IPCCの1.5度特別報告書では「2050年の排出量を正味ゼロにする」必要があることが明記されています。
しかし、国際協力銀行の回答では、「低炭素社会実現への取り組みを推進する」とのみあり、「2050年世界全体での脱炭素社会実現」にコミットすると約束したものではありません。

最初に紹介した通り、私たちの質問状への回答では、気候変動対策としての石炭火力発電輸出が意図されているという説明はありませんでしたが、本事業に対する国際協力銀行の融資は、グリーンファンドを利用したものであると報道が出ていました。

石炭火力発電の輸出を、たとえそれが高効率なものであったとしても、「低炭素支援」とするのはグリーンウォッシュではないかと考えます。
気候変動問題にコミットするという言葉通り、1.5度目標実現のために必要な支援をグリーンファンドでは行うべきだと考えますし、ましてや気候変動問題を加速させる石炭火力発電事業が「グリーンファンド」を利用して融資されることの妥当性が理解できていません。

最後に

回答をいただいて1週間以上が経過してしまいましたが、私たちは正直、どのように考えれば「長期的な視点で、ベトナムの人々のためにこの石炭火力発電事業輸出が妥当である」という結論を導けるのか、未だに分かっていません。

ベトナムの電力事情についても調べ、この現状を無視できる訳ではないということも理解しました。電力発電の輸出に関するベトナム政府からの要望も認識しました。

しかし、同時に、人類が今まで「普通」と認識していた生活を、次の世代以降全ての世代がある程度存続できるようにするには、1.5度目標の達成が必須であるという事実も無視することができません。この1.5度目標の達成のために2040年までに発展途上国を含む世界全体の石炭火力発電の停止が必要2050年までにカーボンニュートラルの実現が必要というレポートに反して、まだ建設されていない石炭火力発電所がまた1つ増えることをどう受け止めたらいいのか分かりません。また、同条件のもとで別の場所で新規建設計画が持ち上がることも想像できます。

石炭火力発電事業を行う企業の考え方を理解したいと質問状を送らせていただき、いただいた回答を何度も読み返しましたが、もし、1.5度目標を本気で実現しようと考えるならば、ベトナム政府が電力供給不足の解消とともに脱炭素の実現を可能としようとしている姿勢を日本政府・企業が今から支援することができるのではないかと、思っています。

私たちは、まだ建設が始まっていない本案件について、計画中止が決まる可能性への希望はまだ捨てていません。同時に、この案件についてその決定ができるのは、現状、企業ではなく政府なのかもしれないとも考えるようになりました。

今後の動きについては現在話し合っているところですが、見守っていただければ幸いです。また、この件について一緒に取り組みたい10代・20代の方がいれば、ご連絡ください。


以下回答全文を公開しますので、立ち止まって考えていただく一助にしていただければと思います。

回答全文

三菱商事1

三菱商事2

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みずほ1

みずほ2

みずほ3

みずほ4

三井住友1

三井住友2

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