見出し画像

#2 SNSでいただいたご質問・ご意見にお答えします! part1

こんにちは、公開質問状を送った有志の能條桃子と今井絵里菜です。
(公開質問状は9名で送っています。)

2020年12月29日、三菱商事がベトナムで計画するブンアン2石炭火力発電所建設事業に対して、国際協力銀行が約17億6700万ドル(約1800億円)の協調融資を決めたという報道が出ました。

これに対し、気候変動を加速させるCO2を排出する石炭火力発電を日本企業が輸出することに疑問を持った高校生・大学生・会社員・起業家の有志9名で、1月5日に、ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業の主体である三菱商事とこの事業に融資を決定した国際協力銀行、融資が報じられている三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行に公開質問状を送付しました。

※公開質問状の内容などについては前回のnoteをご覧ください!

この公開質問状は、「要望・批判」を伝えるものではなく、私たちにはまだ見えていないかもしれない企業の事情や都合を知るために「計画をやめる予定はないのか」「どうしてこの計画を実施しようとしているのか」を聞き、対話のきっかけとすることを目的としています。

私たちの動きに対し、ハフポストさんに取り上げていただいたこともあり、多くの方から様々な反響をいただきました。この件が社会的なニュースとして話題にならないまま過ぎ去ってしまっていたことに問題意識を持っていたので、こうやって議論になることも嬉しく思っています。

この反響の中で、公開質問状について「回答楽しみだね」「見守ります」と言ってくださる方がたくさんいる一方で、疑問・批判の意見も頂いています。ここまでちゃんと回答していなくてすみません。普段Twitterは情報発信・収集のために利用しているため、顔を知らない人から来た突然のリプにどう対応するか考えていました。

そして、おそらく触れている情報が異なることで対話にならない状態があるのではと思い、まずこのnoteで、複数いただいた疑問や批判に関し、私たちが見ている情報と解釈をお伝えしたいと考えました。

今後は個別のご質問・ご意見に関し、私たちの見解やデータに対する解釈をnoteで答えていくつもりですので、もし何か質問・意見があれば公式Twitter(@honto_desuka21)のDMまたはフォームでいただけると嬉しいです。(扱いきれないくらい多数いただいた場合は、全てにお答えするのが難しいかもしれませんが、その際はご了承ください。)

頂いた疑問や批判は、人それぞれの価値観や優先順位によって意見が異なる部分ももちろんあります。そのため、最終的に同じ意見になるのは難しいかもしれませんが、みんなが同じ意見になる必要もないので、それについては意見が異なるままで良いかと思っています。

ただ、見ている情報が違うからこそ、考え方の違いが生まれている面もありそうなので、私たちがどういう情報を元に、どういう解釈をし、このアクションを考えているかをお伝えしていきます。
この件に関し、理解を深める一助になれば嬉しいです!
(色々答えようと思ったら1万字超えてしまいました、ごめんなさい...!ゆっくりじっくり読んでもらえたら嬉しいです・・・・)

※ご意見・ご批判の内容を分かりやすくするために、いただいたリプライのうちいくつかを埋め込みで使わせていただきました。削除依頼がある場合は対応しますので、お手数ですが公式Twitter(@honto_desuka21)のDMまでご連絡ください。

Q1)なぜ石炭火力発電が問題なのか?

石炭火力発電の問題は主に2つあると思っています。

まず1つは大量のCO2排出による気候変動への影響です。
世界の平均気温は、産業革命前よりすでに1度上昇しており、このままのCO2排出のペースでは早くて2030 年から 遅くて2052 年に気温上昇が1.5℃に達すると考えられています。(「IPCC 1.5度温暖化」特別報告書
国際社会では、パリ協定で世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をするという長期目標が掲げられており、パリ協定の枠組みに参加している世界各国の政府もその必要性を認めたために、それぞれ自国内での温暖化対策に取り組むことが求められています。

実際、政府はパリ協定に調印することで、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行は責任銀行原則・赤道原則に調印することで、パリ協定に整合する努力をすることを約束しています。

人類が今まで「普通」と認識していた生活を次の世代以降全ての世代がある程度存続できるようにするには、1.5度目標の達成が必須と言われています。
私たちは、この1.5度目標に整合性のある企業活動や政府の方針を求めています。

1.5度目標達成の必要性についてはこちらとかこちらとか


では、気温上昇をライフラインともいえる1.5度に抑えるためにはどうすればいいのか?
IPCC(という世界中の気候変動に関する研究成果を評価する国際組織)は、世界全体で2030年までにCO2の排出量を45%削減、2050年までに実質ゼロとしなければならないという科学的知見を出しています。(「IPCC 1.5度温暖化」特別報告書

これを実現するためには、CO2を最も排出する発電方法の一つである石炭火力発電を、CO2を排出しない発電方法に早急に置き換えられることが必要となっています。先進国は2030年、世界全体でも2040年には石炭火力発電の運転はほぼゼロにしなくてはならないという研究があり、新規の建設はもとより、既存の稼働中の発電所も急速に減らしていかなければなりません。
Climate Analytics「パリ協定に基づく石炭火力フェーズアウト」
こうした知見から、多くの国が石炭火力をフェーズアウトする具体的な計画を立てて、世界全体で再生可能エネルギー発電に移行する風潮が高まっています。


ただ、日本の石炭火力発電は高効率だし、(日本政府や企業は「クリーンコール」と呼んでいます)CO2排出は問題ないのでは?という意見もたくさんいただきました。

しかし、ブンアン2は石炭火力発電の中でも、超々臨界圧発電(USC)という方法ですが、CO2の排出量について、従来の石炭火力と比較して大きな違いとは言えず、IGFCという2030年に実用化が目指されている技術ですら 石炭火力発電は最新型LNG火力発電の2倍CO2を排出します(環境省資料p25)

スクリーンショット 2021-01-10 22.20.28

これは、例え、中国・インド・アメリカの3国の石炭火力発電を日本の技術で置き換えたとしても、石炭火力排出量合計67億トンの18%に過ぎない約12億トンの削減にしかならないことを意味しています。(自然エネルギー財団 日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬)

1.5度目標を達成するために、世界全体で石炭火力を2040年にほぼゼロにしなくてはならないとされている中では、これは全く十分ではなく、新規の石炭火力建設は止めて、既存の石炭火力発電所を止めるような石炭火力発電自体からの移行が早急に必要となっています。


また、気候変動の影響を受けるのは、先進国よりもインフラや医療提供体制が脆弱な途上国の人々です。
ベトナムは、海岸線が長く、モンスーン、塩水侵入、侵食にさらされているため、気候変動の最大の脅威にさらされています。
石炭火力発電が気候変動を加速させるものという認識を持っていながら、「高効率」の名の下に輸出することは国際協力という面からも問題があると思いますし、まだ建設が始まっていないブンアン2の計画を見直すことができないのか問題提起したく、このアクションをしています。

問題は気候変動だけではありません。
もう一つの問題は現地住民への大気汚染による健康被害の懸念です。
石炭火力発電は、ガス火力 や他のインフラ事業に比べて大気汚染や粉じん問題が発生しやすいことがあげられます。大気汚染の基準は世界銀行の基準が参照されることが多いのですが、先進国の基準に比べて非常に緩いため、問題が深刻化しやすい傾向があります。(石炭火力発電輸出の社会的コスト p47)

これに対しても、「日本の技術なら問題がないのでは」という意見もいただいています。


しかし、石炭火力発電ブンアン2のSO2、NOx、PMといった大気汚染物質の予測排出値は、日本だけでなく中国や韓国、アメリカなどで建設される際の排出制限よりも大幅に上回っています。(NO COAL JAPAN ベトナム・ブンアン 2 石炭火力発電事業が環境災害、財政難に繋がる5つの理由

スクリーンショット 2021-01-10 22.41.19

ブンアン2の実施に際し、環境社会影響評価報告書(ESIA)が作成されていますが、上記の点以外にもさまざまな問題点があることがEnvironmental Law Alliance Worldwide (世界環境法律家連盟、ELAW)によって指摘されています。分析調査によると、以下の問題点が提示されています。(レポート本文

1. 環境への影響を最小化するために石炭火力以外の代替案が検討されていない
2. 不適切な大気汚染物質拡散モデルを用いたため、大気質への影響予測が無意味なものになっている
3. 国際的な排出基準よりも低い基準と比較している
4. 国際的なガイドラインに反する石炭灰の処理方法を提示している
5. 国際的なガイドラインを逸脱する温排水の排出を提示している
6. 海洋生物種への影響に関するアセスメントが適切に行われていない

健康被害について、せっかく先進国が輸出するのにも関わらず、ベトナムは発展途上国だから、健康についてはある程度現地の人に影響が出てもしょうがない、そんな風には考えていいはずがないと思っています。

ちなみに、日本も石炭火力による大気汚染被害は無縁ではありません。
日本の基準下でも人口10万人あたり年間9.74人が石炭火力発電所由来のPM2.5によって死亡しているという研究もあります。(The Lancet Countdown

英医学雑誌ランセット(Lancet)の地球温暖化の健康影響を調べる「ランセット・カウントダウン」プロジェクトでは、各国の石炭火力発電からのPM2.5排出による早期死亡者数を明らかにしています。それによると、日本では人口10万人あたり年間9.74人が石炭火力発電所由来のPM2.5によって死亡しています。(ベトナムもほぼ同じ数値です。)


Q2)石炭火力発電の輸出はベトナムにとって必要なのではないか?

「ベトナムが求めているのでは」という意見も多くいただきました。

ベトナムの村落電化率(普及率)は 北部97.1%、中部99.3%、南部99.3%(2017年)となっており、ほとんどの地域で電気は開通している状態となっています。
一方で、経済成長を遂げ、年平均10%で経済成長しているベトナムでは、依然として電力需要が増加しています。(2019年以降の増加率は10%を下回る見込みというデータが出ています)。(JETRO ベトナム電気調査

発展途上国の成長や人々の生活のために、足りていない発電所の建設はもちろん重要です。
そのために、日本が輸出する意味もあると思っています。

しかし、それが石炭火力発電所である必要はあるのでしょうか
確かに、これまで石炭は発電コストが安価であることから、電力分野の計画において主要なエネルギー源として位置付けられてきました。

スクリーンショット 2021-01-10 22.54.50

(図 IEA Total energy supply by source, 1990-2018より作成)

しかしながら、再生可能エネルギーのネックとなっていたコストにも変化が起きており、CO2を排出しない再生可能エネルギーへの移行に追い風が吹いています。

この計画が本格化した10年以上前は予想していなかったほど、再生可能エネルギーのコスト低下が起きており、Carbon Trackerの試算では、2022年つまり来年以降には、既存の石炭火力発電所を稼働させるよりも、新しい再生可能エネルギー(太陽光・陸上風力)を建設する方が安価となります。(Carbon Tracker(2019)Here comes the sun (and wind)


そして、ベトナム政府も、近年の再生可能エネルギーのコストの低下や気候変動や大気汚染への懸念により、将来的なエネルギー構成の方針を変え始めています

ベトナムのズン副首相は2020年8月、計画策定に先立ち、追加で新たな石炭火力発電所の開発計画を実施しないとの意向と示しました(※)。当面はガス火力発電所の開発を進めるが、今後は再生可能エネルギーへのシフトを図る方針を実際にベトナム政府が出しています。(The Saigon Times Vietnam to stop new coal-fired thermal power projects in 2020-2030
(※)ブンアン2に関しては、すでに計画が始まっているため、この対象にはなっていません。

2021年から2030年にかけてのNational Power Development Plan VIII(第8次国家電力開発計画)が策定されました。この計画では、再生可能エネルギーの発電の割合を30年に32%、45年には40.3%に増加させると書かれています。
ベトナム政府の方針を見ても、ベトナムが石炭火力発電で経済成長をしようと考えているのではないことがわかると思います。

実際、ベトナムはこの3年間で新規の太陽光発電設備を4.5GW導入し、2025年までの導入目標を既に達成しており、これはブンアン2の事業計画が具体的に進められた2007年には予測できなかったほどの拡大ぶりです。

そして、今回の発電計画は、石炭も輸入予定であり、ベトナムにある資源を使う計画ではありません。そのため、自然エネルギーの方が、調達コストも安くなります。

私たちはこのような背景を踏まえ、再エネコストの低下が起き来年にはベトナムにおいて再エネの方が安くなるという試算が出て、ベトナム政府も方針を変更している今、この10年前から計画をしていた石炭火力発電の輸出が本当にベトナムにとって必要なものなのか、途上国や将来世代への気候変動の影響も踏まえ、実施主体である三菱商事と融資する国際協力銀行・みずほ銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行に意見をいただきたいと思い、公開質問状という形を取りました。

Q3)再生可能エネルギーへの移行は現実的にできるのか?

私たちは電力の輸出事業をやめてほしい訳ではないのです。
むしろ政府が出した再生可能エネルギー分野での投融資・技術支援の方針を大歓迎しています。ブンアン2計画が中止されれば、日本の転換を世界にアピールできるものだと考えています。(読売新聞【独自】石炭火力へのODA廃止…政府方針、脱炭素化支援へ

では、再エネのコストが下がったとして、十分電力供給がされるのか?という問題があると思います。

東南アジア諸国では経済的に成り立つ再エネポテンシャルは相当程度あるとあるとされており、ベトナムでは太陽光の設備容量として2,847GW、風力の設備容量として311GWの試算が出ています。(Lee Nathan et al.(2019), EXPLORING RENEWABLE ENERGY OPPORTUNITIES IN SELECT SOUTHEAST ASIAN COUNTRIES,環境省 石炭火力発電輸出ファクト集2020にて引用)

ベトナム単体のデータは見つけられなかったのですが、IEAは「世界エネルギー見通し2019(WEO2019)」の中で、東南アジアの電力需要は2040年までに倍増する見込みだが、増加分の全てを自然エネルギーが満たし、天然ガス火力とともに電力の95%を供給する、パリ協定と整合する持続可能シナリオを提示しています。(IEA 世界エネルギー見通し2019(WEO2019),自然エネルギー財団アジアで進む脱石炭の動きにて引用)

スクリーンショット 2021-01-10 23.14.38

環境省 石炭火力発電輸出ファクト集2020

日本でもまだまだ石炭火力発電を利用しているくらいなので、全ての発電を一度に再生可能エネルギーなどに移行することが不可能なことも分かっています。
しかし、新規建設という観点で考えた時、これからのベトナムは企業と共に政府が再エネ導入を支援することで導入コストがさらに下がっていくことが予想されます。
ベトナム政府の方針を歓迎し、このポテンシャルを活かして再生可能エネルギーを選択できるよう支援することが日本の役割だと考えています。

Q4)石炭火力発電輸出を他の国(中国など)が行うより日本が行う方がマシなのでは?

中国、韓国は日本と並んで、海外の火力発電事業への最大の資金提供国であり、脱炭素の潮流の中で国際的な批判を浴びています。

中国政府は2017年よりグリーン一帯一路を推進し、石炭火力は減少傾向、太陽光・風力が増加中です。韓国は、国内石炭火力の「劇的な削減」、石炭火力輸出政策の見直しが進んでいます。
しかし、1.5度目標達成には日本・中国・韓国、どの国も十分ではありません。

日本が撤退したとしても、未だ石炭火力発電の輸出が行われているこれらの国が石炭火力発電を行うとしたら、日本が「高効率」な発電所の輸出をした方が良いのでは?という意見もいただきました。これが一番多かったかもしれません。

しかし、1)で示した通り、日本の「高効率」な技術がCO2排出を十分に抑制している訳ではありませんし、ブンアンの発電所周辺では中国国内の基準値よりも数倍高い大気汚染物質の予測排出値が出ていました。

それだけでなく、日本の60倍以上の建設実績を持つ中国の方が技術が劣っている訳ではないということも示されおり、日本、韓国、中国の技術レベルはほぼ同じになりつつあります。(自然エネルギー財団 日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬)

つまり、特段、日本が行うことと中国が行うことに差はなく、
ただ、石炭火力発電輸出を行うことそれ自体を問題だと捉えています。

そして、「たとえ日本が撤退しても、中国などの企業が受注するだけでは・・」という意見も見られましたが、そうであっても、輸出から率先して撤退し、他国にも同調するよう促すのが、日本のとるべき姿勢だと考えています。


Q5)なぜ先進国の私たちが、三菱商事やメガバンに質問を投げかけたのか

2015年に採択された、気候変動に関する枠組みとしてのパリ協定は、途上国を含む全ての主要排出国が対象となっています(ただし批准国は、全国連加盟国197カ国のうち185カ国)。

日本政府もパリ協定に基づいて国内の政策を策定しています。「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(2019年6月閣議決定)では、日本は国際的に脱炭素化を牽引する立場であり、相手国のニーズに応じたCO2排出削減に資するあらゆる選択肢を提示していくと明記されています。
インフラシステム輸出戦略では、「途上国の脱炭素化を支援する」とあるので、石炭火力発電の輸出はこれにも矛盾しています。

そして、石炭火力発電の輸出に対する公的支援については、相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題や脱炭素化に向けた方針をしっかり把握していない国に対しては支援しないことを原則とする、と改定後の「インフラシステム輸出戦略(2020年7月)」ではとりまとめられました。

新戦略は、ご案内のとおり、重点的に輸出を推進するインフラについて明記するものです。そういうもの中に、石炭火力発電については、「支援しないことを原則とする」 という「支援しない」という方針を書き込むという異例の決着をみました。新戦略の骨子の中に「支援をしない」ものを書いたのはここだけです。
小泉進次郎氏 ブログ記事 2020年7月10日)

日本は、世界で6番目にCO2を排出し、経済成長など恩恵を受けてきた国です。日本のCO2を減らし脱炭素化することはもちろん、世界のCO2削減にも貢献する必要があります。

しかし、ベトナム始め途上国の脱炭素化を遅らせるような石炭火力発電の輸出支援はこれに反するものです。
そして、外交上、日本は石炭火力発電を輸出している時点で、リードする存在ではなく、批判される存在となっています。


気候変動問題は、国境を越えて将来的に私たちの生活・社会環境に深刻な影響をもたらす課題であり、国際社会が一致団結して対策を講じなければなりません。

1.5度目標を達成するには、石炭からの脱却が必須です。
日本が他の国をリードする立場になるために、まず日本が石炭火力発電輸出から撤退し、再生可能エネルギー輸出を目指していく方向転換を行うことを一市民として求めています。

もちろん完璧な発電源など、この世に一つも存在しません。
しかし、気候変動という解決まで時間がなく悪化する一方の問題において、一度建設がされたら25年から40年ほどの間大量のCO2を排出し続ける石炭火力発電は見直されるべきものですし、今まだ建設が始まっていない1機でもこの世界から減らせるとしたら、意味があることだと思っています。

実際、国際社会は1.5度目標を実現するために、石炭火力発電事業から撤退する風潮が高まっています。ブンアン2の計画の融資団には当初、シンガポールのDBS銀行、オーバーシー・チャイニーズ銀行、そしてイギリスのスタンダードチャータード銀行の名前が挙がっていました。しかし、これらの銀行は脱石炭の方針により撤退を決めました。(国際環境NGO FoE Japan ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所ファクトシート(2021年1月更新)

日本が石炭火力発電に固執している間に世界では再エネ価格の低下が起き、日本が再生可能エネルギー技術輸出の展開をリードできていないのは、日本政府、企業などの責任だと思います。そして、これは私たち含め市民からも十分に声が上がってこなかった、届いてこなかった結果なのかもしれません。

また、10年以上前から計画されているこの案件について、「撤退」という選択を行うのは、難しいことだと思います。ただ、これだけ国際社会の状況が変わり、気候変動の影響がさらに顕在化している中で、立ち止まって「本当に守らなきゃいけないもの」を一緒に考えてほしいのです。

国際社会は、早いスピードで変化しています。
石炭火力発電所を作っても、座礁資産となってしまう可能性が高いからこそ、世界では多くの銀行が手を引いています。
また、気候変動が進み、より大きな気候災害がより頻繁に起こる状況に対処するよりは、再エネへの切り替えは効率的な対策だと捉えることもできます。

世界の変化に柔軟に対応するために、1.5度目標達成のために日本企業や政府が方針を転換するために、何が必要なのかをこのアクションをしながら考え、行動し続けていきたいと思っています。

ブンアン2基本情報
事業実施者:Vung Ang 2 Thermal Power Company(VAPCO)
=OneEnergy Ltd.100%出資の特別目的事業体(SPV)。OneEnergy Ltd.(本社:英領ケイマン)は、三菱商事の香港 100%子会社である Diamond Generating Asiaが 40%、CLP ホールディングス(本社:香港)が40%、日本の電力会社である中国電力が 20%を出資する合弁会社。2020 年 1 月現在、CLP の持ち株分について三菱商事からの提案により韓国電力公社(KEPCO)が取得。

公的金融機関による支援:国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(付保検討中)、韓国輸出入銀行(KEXIM)
民間金融機関による支援(推定):みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、ハナ銀行(韓国)

国際環境 NGO FoE Japan、ベトナム・ブンアン 2 石炭火力発電事業ファクトシート(2021年1月時点)

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
長くなってしまってすみません。
私たちは専門家でもないですし、全てを知っている訳ではありません。
だからこそ、収集した情報で動きながら、新しい情報を得て、また行動するという繰り返しをしています。

このnoteを書きながら、私たち質問者たちが何となく共有していた前提が意外とたくさんあり、こういう情報を得てきたからこその、今回のアクションに繋がっていると改めて気づきました。
ただ、最初に書きましたが、このnoteは同じように考えてほしいと強要している訳ではありません。まず、私たちの触れている情報と解釈を伝えたいと思い、書きました。
この件について理解を深める一助として捉えてもらえればありがたいです。

今後は個別のご質問・ご意見に関し、私たちの見解やデータに対する解釈をnoteで答えていくつもりですので、もし何か質問・質問があれば公式Twitter(@honto_desuka21)のDMまたはフォームでいただけると嬉しいです。(扱いきれないくらい多数いただいた場合は、全てにお答えするのが難しいかもしれませんが、その際はご了承ください。)

私たちのアクションとしては、14日に5社に送らせてもらった公開質問状の回答期限があるので、そこまでどんな回答が来るのか来ないのか、待っています。その上で、次にどう動くか、考えていく予定です。
今後も見守っていただければ幸いです!


いいなと思ったら応援しよう!