長い長い作文 5~最終話まとめ
「長い長い作文」とは?
クラウドファンディングのプロジェクトページ作成にあたり、今までを振り返って私・三浦が書いた作文。原稿用紙20枚分に及ぶ。
プロジェクトページに書き切れなかったhontenへの想いを伝えるため、クラウドファンディングサイトの活動報告ページに少しずつアップしている。
プロジェクトページ
長い長い作文をより多くの写真付きで楽しんでいただけます。https://kibidango.com/1267
第5話「次に渡す、という精神」
ああ、もしかしたら。と私は思う。
もしかしたら、大学生の頃に見たあの映画が影響しているのかもしれない。
『ペイ・フォワード』。
中学一年生の男の子が主人公で、ある日、社会の授業でこんな課題が出される。
『世界を変えるにはどうしたらいいと思う?』
男の子は考え、一つの答えにたどり着いた。
「誰かに助けてもらったら、助けてくれた相手に恩返しするんじゃなくて、また別の三人を助けるんだ。
その三人が、また別の三人を助ける。延々と繋がっていけば、世界は変えられる。」
これがペイ・フォワード(Pay it forward)だ。
私は忘れっぽくて、映画は好きでよく見るがすぐ忘れてしまう。
この作品は忘れなかった。忘れられなかった。
私の一部になっていたのだろう。
その後、③一人でやらない、④リーズナブル、⑤続けられる、を追加した。
『一人でやらない』も私の目標のようなものだった。
私は人に頼ることが苦手だった。
でも、一人でできることは限られている。
自分の周りの人たちを思い浮かべたとき、それぞれが才能や特技を持っていて、一緒に何かできたら可能性の幅が広がるし楽しそうだと思った。
できないことがあってもいいのだ。できる人に任せればいい。
餅は餅屋、である。
『リーズナブル』であることは、②優しいのために必要なことだった。
居場所であるためには、お金を気にせず落ち着いて滞在できることが大切だと思った。
私自身、色んなカフェやコワーキングスペースを利用してきた中で感じたことだ。
また、お金が無くてもお店はできるということを証明するために、材料や備品はなるべく安価な物を探した。
(hontenを思い付く前、自分の店を持つならこんなお店、と想像して書いたもの。『お金を気にせず、安心して滞在できる』ことは、いつも金銭的に余裕の無かった私にとって重要なことだった。)
自分自身の頭で考えていたのはここまでで、『⑤続けられる』はさやちゃんの意見から追加した。
当初、ポイントカードが満点の場合は入場料を500円から200円にする、と私は考えていた。
「安すぎませんか!?」
と彼女につっこまれた。
「利益が目的でないことは分かっているのですが、運営し続けられるように考えることも大事かなと思って・・・。」
最もな意見だった。
私は、お客さんの負担を減らすことばかりを考えていて、運営資金というのが頭から抜けていた。
彼女は私の抜けている部分をいつも補ってくれる。
いいコンビかもしれないぞ。
私は予感した。
こうして、honten五か条のようなものができあがった。
第6話「私が唯一持てるもの」
私は何も持っていなかったが、そんな私にも唯一持てるものがある。
それは勇気なんだと、ある映画が私に教えてくれた。
ならシネマテークで見た『マイ・ブックショップ』だ。
ならシネマテークは、なら国際映画祭という団体が開催する移動映画館活動だ。
過去にクラウドファンディングで運営資金を集めており、『映画館の無い町に映画を届けたい』という想いに賛同し、私は少額ながら支援していた。
慌ただしい日々の中で、そのことをすっかり忘れた頃だった。
返礼品が届いたのだ。
その中に上映会の案内が入っており、映画のタイトルを見た瞬間、『運命だ! 行かねばならない!』と私は直感した。
『マイ・ブックショップ』。(※以下、ネタバレ含みます。)
ある田舎町で、亡き夫との夢だった本屋を開業する女性が主人公だ。
始めは順調だったが、店の物件を巡り町の権力者に様々な意地悪をされる。
それでも彼女は「怖くないわ」と言う。
愚痴を吐くことも無ければ、やり返すこともない。
ところが、信用していた町の住人たちからも裏切りに遭い、唯一の理解者も不幸に見舞われてしまう。
ついに彼女は店を手放し、町を出て行く。
彼女の夢は絶たれたのか?
いいや、叶ったのだ。
なぜなら、彼女の元で働いていた本嫌いだった子どもが、大人になり本屋を開いたから。
彼女が勇気を以て為したことは、決して無駄ではなかった。
彼女の夢と勇気は、次の世代へ受け渡されていたのだ。
そして私にも。
初めてのイベント主催、初めての自分のお店、初めてのクラウドファンディング。
何もかもが初めてで、正直に打ち明けてしまえば、楽しさに負けないくらい不安も感じている。
最終話「次はあなたが」
そんな私に、『マイ・ブックショップ』は教えてくれた。
何も持っていなくても、勇気を持つことはできる。と。
それこそが一番大切な芯なのだ。と。
勇気を出して、まずは夢を打ち明けてみよう。
色んな人に協力をお願いしてみよう。
そうして私は、一緒に店主をしてくれる大切な友達を得た。
初対面にもかかわらず快く協力してくれる人たちがたくさん現れた。
何も持っていなかった手に、いつの間にかいっぱいの宝物を抱いていた。
夢を叶えるのに、お金やノウハウ、経験、才能、人脈や自信の有無は関係ないのだ。と思う。
自分を信じる勇気、人を信じる勇気、挑戦する勇気。
それさえあれば、できるんだ。
誰にだって、あなたにだって。
(完) 2020.1.9 三浦 祥