パニエ
昨日、初めて「パニエ」というものを食べた。
フランセ表参道店の限定商品らしく、
私は夕方のとある差し入れを買いにお店を訪れていた。
お洒落な店の雰囲気に圧倒されながら、
御目当ての品を決め、ただぼーっとしていると
すばやく店員のお姉さんの術中に捕まり、まんまとその
「パニエ」というものを1個、自分用に買った。
いかにもデカいアップルパイのような見た目なのに、
「これはパンですか?」と聞いた自分が情けない。
「パン的なパイですか?」と言えばよかったな。
お姉さんは「パイですね」と、
全く小波のようなやりとりだった。
パニエは2種類あって同じ値段だったので
せっかくだからとピスタチオ味にした。
今思えば、私の好きなわさび師匠のトレードカラーにそっくりな黄緑だった。
推し活ってこういうことを言うのかな?なんて。
会社に着き、仕事がひと段落してから
食堂のカフェスペースにてコーヒーと一緒に頂いた。
パニエの本当の姿を知るのはここからだった。
まず、めちゃめちゃ外のコーティング?が固くて光っていて、なんか
外付けハードディスクみたい。
私がスパイだったら、大切なデータはこうやって
パニエにして取引先に渡すかもしれない。
なんて妄想をしながら、食べるのだが、
とにかくパイなので、ほろほろと生地が剥がれてゆく。
隣にいた男性社員の視線を感じながら
まあいい、こぼしてないし、正面は誰も見えない席に座っているし、と思い
齧り続ける。
余りにも生地が落ちていくので、なんかちょっと損してないか??と思う。
ぎゅっと集めたら、パイの実3個分は包み紙の中にこぼしている。
そんな現象にも慣れてきて、午前中の仕事の一人反省会をしていたら
パイがずるずるっと包み紙の袋から出てきて、
あわやもう一歩で床にこぼし、辺り一面がパイくず地獄になるという
大ピンチを迎えた。
こういう、最も恐れていた信じられないことが起きた時、人は案外冷静で、
身体を動かさず、軌道を見極め、読めたところで動きを止める。
という、合気道みたいなことができるもので、パニエは危機一髪のところで
テーブルに留まってくれた。
代わりに、多少のパイクズが服と椅子に散らばったが、ウェットティッシュで十分に処理できる範囲だった。パイクズってなんか少し切ない響き。
幼い頃からのサバイブの経験というのは、こういう時に生きる。
うん、パイクズ。
そうやって、私はまた生地の3割くらいを失いながら「パニエ」を食べ終えた。
これからの人生、あまりパイを食べることは無いだろうけれど
次に「パニエ」を食べる時には
少しも生地と取りこぼさずに全てを受け止めながら食べてあげたい。
※写真はグーグルフォトで「パイ」って検索したら出てきた台湾の葱抓餅屋さんの写真でした。