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テーブルは見ている

父のベッドの前には一人で使うには不釣り合いな大きなテーブルが置かれている。

両親が離婚する前、ダイニングテーブルとして使っていたものだ。

今は、今となっては

朝食は何が良いとか、トイレの回数は…といったふせんを貼っておく場所であり、時にヘルパーさんとの文通の場でもあった。


ある日、”朝は来られないので朝食の配膳をお願いします”と書き置いたときのこと。

昼前に実家に着き、日課になっているふせんに目を通すと

”コーヒーと服薬のみ、朝食は娘さんが来てからで良いとおっしゃるので…”

と記されていた。


父にも”朝は来られない”と伝えてあったはず。

食欲があるうちは大丈夫、と言い聞かせて頑張ってきた。

ご飯も食べられないほどに弱ってしまったのか…と、恐る恐る体調を聞いた。


すぐにははっきりとした返答はなかった。

しかし、2度目の問いに

──夜中にビール飲んで
アイスまんじゅうを食べて…と言うのだ。


テーブルに置かれたビールの空き缶は、どこかバツが悪そうだ。


私が来るのを待っていてくれたのでも、食欲がないのでもない。


ただの食べ過ぎである。


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