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ゴミ屋敷となった実家では新しい生態系が誕生していた。【ゴミ屋敷からのSOS】#3
ゴミ屋敷を脱出できた父は病院で数週間過ごすことになった。人生で初めての入院。そして、検査。
この時、父の体は検査をしたらしただけ病名が付くという状態だった。
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父が入院した翌日、わたしは実家に向かった。怒りを原動力に、ズンズン進む。こみ上げてくる怒りは、ゴミ屋敷になるまで放っておいた父へのものだ。父への当てつけとして、この惨状をどうにか記録に残してやろうと思って、カメラを回したりもした。
この数日後に余命宣告を受けるなんて、まだ知らなかったから。
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まずは虫が湧いたキッチンから片付ける。排水溝にはいつ捨てたものだろうか、しじみの貝が入っていた。そこに虫が湧いて、ちょっとした物音に反応してぶんぶん飛び回る。
床を埋め尽くしていた洋服も、片っ端から捨てる。
食器棚にはもうずいぶんと一人暮らしだったはずなのに、大量の食器が入っていた。離婚したときのままということだ。その当時の買い置きの食べもの、洗剤、全てが残っている。しかし、懐かしさに浸る時間はない。
捨て、捨て、捨てーーーー!!!
と叫びながら、捨てる。
でもちょっとだけ中身も見てみたりする。うっかり開けた乾物の缶からは、虫の死骸が大量に出てきた。
缶の中に誕生した生態系。缶の中で生まれた虫は、一度も外の光を見ることなく死んでいったようだ。
冷蔵庫に着手。なんだかよくわからない調味料が入っていた。もともと料理好きの父のこと。自家製なんちゃら…みたいなものだろう。食べられそうもない。
これも捨て、捨て、捨てーーーー!!!!
それから、よーく見たら冷蔵庫のドアポケットに飴玉が溶けて媚びりついていた。べっこう飴…?酒飲みの父が飴なんて食べるのか…と思ったら、それは見まごうことなくツヤツヤのGだった。
食料につられて迷い込んだGは、冷たい冷たい箱の中で息絶えたようだ。
──最後に美味しいものを食べさせてあげられなくて、ゴメン。謎の自家製調味料しか入っていないんだ。
心の中でそう呟いて、扉を閉める。
1日目は途方に暮れて終わった。少しだけ歩きやすくなった床に座って、父が残したカレーパンを食べた。
つづく。